“愛情”と“献身”のはざまで――ドラマ『パーフェクトワールド』第4話

“愛情”と“献身”のはざまで――ドラマ『パーフェクトワールド』第4話

フジテレビ系『パーフェクトワールド』ドラマ公式サイトより

(これまでのレビューはこちらから)

 ドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)で、樹(松坂桃李)を献身的に介護するヘルパー・長沢を演じている中村ゆり。私が彼女を最初に知ったのは、今から20年ほど前、アイドルデュオ「YURIMARI」のメンバー(YURI)として出てきた時だった。爆風スランプのサンプラザ中野(当時)、パッパラー河合が手がけた曲を歌い、“かわいくて元気な女の子”という印象だった。

 残念ながら、彼女たちは大きくブレイクすることはなく、デビューから2年ほどで解散となる。それから8年後、映画『パッチギ! LOVE&PEACE』(2007)のヒロイン役に選ばれた中村ゆりが、アイドル時代のYURIと同一人物だとは、しばらく気づかなかった。それほどまでに、以前とは打って変わった、女優然とした佇まいになっていたのだ。

 それからは、映画やドラマで、どちらかというと影のある女性を演じることが多く、今回の作品でも、その「何かを抱えているような演技」は、いかんなく発揮されている。

 

相手を思いやる気持ちがすれ違う

 樹(松坂桃李)と付き合い始めたつぐみ(山本美月)は、少しでも介護の役に立てばと、資格を取ることを考える。仕事をこなし、樹の家に通い、資格の勉強もする。愛する人のために全て全力で取り組むが、そんな中で、少しずつ体に無理が生じてしまう。

 一方、ヘルパーの長沢は、つぐみの存在を気遣いながらも、樹の介護を続ける。長沢の存在の大きさを知れば知るほど、つぐみは、樹に尽くそうとする。2人の間には、ライバル心、嫉妬心のようなものが感じられる。

 幼馴染みの是枝(瀬戸康史)もまた、つぐみとの関係に悩んでいた。彼女に思いを伝えたことにより、気まずさもあったが、今までのように、一緒に食事をしたり、車で送り迎えをしたりして、“幼馴染み”としての関係を続ける。

 ここで気になるのは、是枝にとってつぐみは、「愛する人」であるが、つぐみにとって是枝はどんな存在なのか、ということだ。

 自分の家族からも信頼され、いつも身近にいてくれる男友達。そう見ているのだろうか。ただ、ドラマに出てきたように、樹のパソコンが壊れた時、電話一本で駆けつけたり、疲れて助手席で眠ってしまったつぐみを見守ったりという姿は、“献身的”とも言えるだろう。

 今回は、樹の同僚で、事務所社長(木村祐一)の甥、晴人(松村北斗/ジャニーズJr.・SixTONES)の存在もクローズアップされていた。

 仕事の途中、階段を踏み外して、義足をつけた脚を痛めてしまった晴人は、松葉杖での生活を余儀なくされる。そんな時、つぐみの妹・しおり(岡崎紗絵)を、レンタル彼女として再び指名する。

 前回、彼女に義足であることを知られ、「障害者は無理」と言われた晴人だったが、しおりを指名して言うのだ。

「障害者に対してはっきりと言ってくれた方が付き合いやすい」

 この気持ちは、共感する人も多いのではないだろうか。例えば、肌の色が違うとか、髪の色が奇抜だとか、自身が意図するしないにかかわらず、「相手はこれを気にしているな」と分かることがあるだろう。そんな時、見て見ぬふりをするのではなく、無理に偽善的なことをいうのでもなく、正直な気持ちを話してくれた方が、腹を割って話せるというものだろう。

 その頃、樹は、感覚をなくした脚に痛みを感じるという、「幻肢痛」に悩まされていた。

 ある夜、痛みを感じて眠れなくなった樹は、夜中に長沢を呼び、薬をもらう。しかし、つぐみに対しては、幻肢痛のことは隠していた。もちろん、彼女に余計な心配をさせないためだ。そのことを知ったつぐみは、ショックを受け、「痛みもつらさも全部話してほしい」と問い詰める。

 恋愛でも、結婚でも、相手のことを全て知りたいと願う気持ちはわかる。ただ、それは、“それぞれが背負いきれる範囲内で”ということを認識しなければならない。過去に受けた心の傷や、隠したい秘密があれば、相手に知らせないことも優しさだと思うのだ。

 樹のマンションの前で、偶然つぐみに会った長沢は、「樹には私が必要。自分の人生を犠牲にしてでも彼を支えたい」と告げる。信念を持った、毅然とした姿の演技は、中村の真骨頂だ。不幸や苦労も合わせ飲んだ、覚悟を持った女性の姿が、女優としての本人と重なる。

 長沢とつぐみが対峙するシーンは、見ていてヒリヒリする。“どちらがより樹のためになれるか”“どちらが彼の近くにいる存在か”それを2人が競い合っているように見えるからだ。

 例えば、普通の男性が相手であれば、体の関係を持った方がより近い存在、といえるだろう。しかし、樹に関しては、それは望めない。「愛される」か「必要とされる」か、これは、ドラマを見ている者にも課された問題のように思える。

 それにしても、長沢は、3人の未来をどう見ているのだろう。つぐみと樹が付き合ったとして、それとは別に、一生樹を支えていこうと考えているのだろうか。ここでも、“愛情”と“献身”がせめぎあっている。もしかしたらそれもありなのかもしれない。家族や恋人のあり方などは、多種多様な形が認められている時代だ。

 要は、世の中ものの見方なのだ。  

「障害者」というくくりで一様に見ようとするのが間違いだ。健常者に真面目な人もいい加減な人もいるように、障害者にもさまざまな人がいる。そこを見誤ると、悲劇になってしまう。今回のドラマでは、その“障害者の多様性”が描かれているのだろう。

 ドラマのラスト、駅で樹と電車を待っていた時、つぐみは疲れからめまいを起こし、倒れる。差し伸べた樹の手は届かず、ホームから転落してしまう。映画版でも描かれた、この作品の象徴的なシーンだ。

 ある意味、つぐみの“限界”が見えてしまったともいえる。自分にとって必要な人、そして愛する人、それぞれの関係性をどう保っていくか。次回以降も波乱が続きそうだ。

(文=プレヤード)

関連記事(外部サイト)