“世界一ピュアな男”野爆ロッシーの、規格外の優しさ

“世界一ピュアな男”野爆ロッシーの、規格外の優しさ

野生爆弾

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(5月12〜18日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします

野性爆弾・ロッシー「ほかにもおるんですか? ロッシーが」

 昔の芸人は、怖かったりコンビ仲の悪いケースが多かった。けれど、最近は優しく、仲の良いコンビが増えている。そんな話を、しばしば聞く。

 松本人志は以前、仲の良い芸人が増えた理由を、次のように推察していた。ダーウィンの進化論ではないけれど、お笑いも環境の変化に適合した特性を持つものが生き残りやすい。お笑いにとっての環境、つまり、今の視聴者やお客さんが求めているのが、仲の良い芸人なのだろう、と。優しい芸人が増えている理由も、同様に説明できるかもしれない。

 そんな優しい芸人に関する説が、15日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で検証されていた。題して、「ロッシー 何でも受け入れちゃいすぎておっかない説」。ロッシーとは、野性爆弾・くっきーの相方であり、世界一ピュアで優しい男とも評される芸人である。そんなロッシーの周りで、普通の人なら怒ったり疑問を抱いたりするであろう出来事をいろいろ起こしてみると、どういう反応を示すか。そんなドッキリ的な企画だ。

 数日間密着した結果は、次のようなものだった。街で知らない人からケータイを貸してくれと頼まれると、当然のように貸す(パスコードの存在を知らないし、画面ロックもかけていない)。道で少女から「マッチを買ってください」と声をかけられれば、1箱1,000円でも買う(去り際に「頑張って」と一言添える)。行き先を「赤坂」と告げて乗ったタクシーが、反対方向の品川に向かっても、正規の料金を支払う(降り際に「ありがとうございます」とお礼を言う)。胃の中でスイカの種が発芽しているレントゲン写真を医師に見せられ、信じる(処方された謎の薬も飲む)。初対面のADから借金返済のために300万円を貸してほしいと頼まれると、すぐに300万円は用意できないという理由で断るものの、「いつでも相談に乗る」「一緒に頑張っていかなアカンよね」と優しく声をかける。

 といったように、番組側が仕掛けた非日常的な現象の数々を、すんなりと受け入れ、規格外の優しさを見せつけるロッシー。さらに、ここ最近何か変わったことはなかったかとスタッフから確認された彼は、「思ってる以上に、ちょっと寒いとか?」と返答。マッチ売りの少女から高額なマッチを買った件や、ADにお金を貸してくれと土下座された件などは、ロッシーにとって「変わったこと」ではないのだ。

 もしかしたら、子どもが絡んだり、他人のプライバシーに触れるような話題は、安易に口外しないという、これまたロッシーの優しさである可能性もある。それでも、胃からスイカが発芽していた件は、話してもいい「変わったこと」だろう。しかし、胃の中のスイカの発芽より、会話に困ったときに交わすような話題(「思ってる以上に、ちょっと寒い」)のほうが、ロッシー的にはインパクトで勝るのだ。

 極めつきは、『水曜日のダウンタウン』の企画をやっていたと知らされた、ネタバラシのシーン。ロッシーは驚いた様子で、こう言った。

「ウソでしょ。いや、ほかにもおるんですか? ロッシーが」

 一瞬、理解が追いつかない発言だ。VTRを見たスタジオの面々も困惑していたが、松本らの間ではこんな解釈がされていた。自分の周囲では変な出来事は特に起きていない。だから、番組から何かを仕掛けられた、この自分ではない別の自分がどこかにいる。ロッシーは、そう思っているのではないか――。

 番組は今回、ひとまず「おっかない」を落としどころにしていた。けれど、見た者に大きなクエスチョンマークを残して終わった展開は、「おっかない」というワードすら、据わりが悪い。

 優しい芸人の増加は、環境としての視聴者やお客さんへの適応の結果かもしれない。しかし、優しい芸人の進化の極北に立つロッシーは、その環境すら翻弄する。

 優しい芸人、仲の良い芸人といえば、このコンビもそうだ。好感度ナンバーワンと評されるサンドウィッチマンが、16日放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)に出演していた。この日のくくりは、「サンドウィッチマン大好き芸人」。中川家やナイツ、狩野英孝など、2人を敬愛する芸人仲間が、好きなポイントなどを語っていた。

 話題は、テレビであまりやらない伊達によるモノマネにも及んだ。で、『下町ロケット』(TBS系)の阿部寛のモノマネの後に、安倍首相のモノマネが披露されたのだけれど、これがあまり見かけない方向に展開していった。

「えー、ワタクシが、内閣総理大臣の、安倍晋三で、あります。先ほどですね、アメリカの、トランプ大統領と、電話で会談をしました。内容は、確実に一致しました」

 話し方の特徴をうまくつかんだ総理のモノマネを伊達が見せると、そこに中川家・礼二が参入。総理会見の即興コントのようなやりとりが始まった。

礼二「あの、総理。新元号が発表になりましたけど、そのへんについていかがでしょうか?」

伊達「新元号が、えー、発表されました。えー、しかし、ですね、先ほど、アメリカのトランプ大統領と、電話で、会談をしました。私たちの考えは、一致しました」

 総理会見のコントはさらに続く。

礼二「総理、景気回復についてはどのようにお考えでしょうか?」

伊達「確かに景気、大事ですね。ただ、ですね、先ほど、アメリカのトランプ大統領と、電話で、会談……。考え方が、一致しました」

 この後、富澤が『キン肉マン』のロビンマスクのモノマネをしたのだけれど、「総理、感想を」と振られた伊達は、こう応じた。

「えー、先ほどの、ロビンマスク、非常によろしかったんですが、私は先ほど、トランプ大統領と、電話で、会談をしました。私たちの考え方は、一致しました」

 どんな内容でも、すぐにトランプ大統領に電話をかけてしまう総理。このモノマネに、スタジオは大いにウケていた。初めから風刺を意図したというよりも、流れの中で「先ほど、トランプ大統領と……」が定型のフレーズになり、繰り返され、それが面白かった、というのが実際のところかもしれない。が、結果的に日米関係についての風刺になっているのも確かだ。政治的な風刺は緊張感が走る場合もあると思うが、伊達のモノマネに爆笑する富澤、その2人の仲の良さや優しさが、笑いやすい雰囲気を生んだのかもしれない。

 にしても、さすが高い好感度を誇る芸人、サンドウィッチマン。日本のお笑い芸人は政治への風刺が欠如していると批判してきた茂木健一郎からの好感も得られるかもしれない。お笑いに政治批評を過剰に読み取るのは野暮かもしれないが、そんな深読みも含め、広範囲からの人気を獲得しながら、サンドウィッチマンは進化していく。

 最後に、別に優しさとか仲の良さとか関係ないのだけれど、特殊な方向に進化している芸人の話を短めに。17日放送の『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)。この番組では、最後のオチとしてコウメ太夫が出てくる回が多いのだけれど、今回もコウメが登場していた。正直、「またか……」とも思ったのだけれど、この日のコウメはバージョン違いかと思うほど、これまで以上に吹っ切れたネタを披露していた。

 手の甲に書かれたメモをチラチラ見ながら、「チャンチャカチャンチャ……」といつものイントロの後にコウメが歌い上げたネタは、次のようなものだ。

「おじやを食べているかと思ったら〜、おばさんでした〜」

「元カノがこっちへ来るかと思ったら〜、野生のプテラノドンでした〜」

 邪推を差し挟む前に笑ってしまうわけだが、冷静に考えてみると、おばさんを誤って食べてしまったときの第一声は、チクショーではない。野生ではないプテラノドンとは、とも思う。だが、そんな常識を当てはめても仕方がない。これもまた、普通の笑いでは飽き足らない視聴者(環境)が生んだ進化のひとつの姿、さまざまに分化していった芸人の多様性のひとつである。

 最後のネタは、次のようなものだった。

「だまされたかと思って食べてみたら〜、だまされてました〜」

 だからなんだ、という話だし、ネタを間違えたんじゃないかとも思ってしまうわけだが、いや、ここにはもしかすると、コウメによる意図的な風刺が込められているのかもしれない。これほど注意喚起がなされているにもかかわらず、振り込め詐欺の被害はなくならない。フェイクニュースも巧妙になり、何が正しい情報なのか判断がつきにくくなった。そんな時代にあっては、自分はだまされない、だまそうとする相手を自分は見破っている、そう思っている人でも結局はだまされてしまうのだ。むしろそういう人ほど、だまされやすいのだ。そんなコウメからの社会的な警句が、ここには含まれているのではないか――。

 かように、風刺の深読みは野暮である。

(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)

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