『インハンド』人をつくるのは遺伝か環境か? 山下智久が悲劇の赤鬼伝説に挑む

『インハンド』人をつくるのは遺伝か環境か? 山下智久が悲劇の赤鬼伝説に挑む

TBS系ドラマ『インハンド』番組公式サイトより

 山下智久が寄生虫専門のドSな医学者を演じるドラマ『インハンド』(TBS系)の第8話が先月31日に放送され、平均視聴率7.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.4ポイントのダウンとなってしまいました。

(前回までのレビューはこちらから)

 紐倉哲(山下)はある日、大企業・キガシマホールディングスのポスターに写る女性の髪が赤く染まり、“呪いの血のポスター”と話題になっていることを知ります。おまけに、会長・園川務(柄本明)の息子で後継者候補の直継(夙川アトム)が飛び降り自殺したことと因果関係があるのではないか、とのウワサが流れているため興味津々。居ても立ってもいられず、助手の高家春馬(濱田岳)を引き連れ、そのポスターが展示されている本社へと足を運びます。

 警備員の目を盗んで“血”の成分を調べた紐倉は、それが腸内細菌の一種・セラチア菌であることを確認します。なぜそんなものがポスターに塗りたくられたのかと疑問を抱き、調査を開始しようとしたところ、経産省のアドバイザーを務める、学生時代の同級生・遠藤匡晃(要潤)が登場。ヒトゲノム解析プロジェクトの顧問を務める遠藤は、その出資者だった直継がもつ重要な情報を外部に漏らしたくないという事情と、学生時代からのライバル心から紐倉の妨害をするのでした。

 それでも遠藤の目を盗み調査を続けた紐倉は、直継の地毛が真っ赤であったことや、それが祖父にあたるキガシマホールディングスの創始者・大次郎から遺伝的に受け継いだものであることを突き止めます。

 粗暴だった大次郎に婚約者を奪われた代わりに、彼の娘をもらうことで婿養子になった務は、同じく“赤鬼の遺伝子”を継いだ直継に対して、大次郎のようにならぬよう気をつけろと幼少期の頃から諭し続けてきたのです。

 あらゆる依存症になりやすく、精神的な弱さをもつ“鬼の血”。実の母親は自殺し、自分もいずれは同じ道を辿ることになるのではないかと懸念を抱いた直継は、自身と大次郎の遺伝子が合致するか調べるよう遠藤に依頼。その結果、祖父とまったく同じタイプの遺伝子だと判明し、それを憂いて自殺したという事情があったのです。

 しかし、紐倉は悲劇に至ったのは遺伝子だけではなく、直継に対して幼少期から「鬼の血が流れている」と言い続けた務、つまり育った環境にもよると指摘し、“赤鬼”の遺伝子を持つ者は感受性が強く、アーティスティックな才能にあふれていることを話します。そしてその証拠として、直継の恋人が密かに出産し大事に育ててきた都築歩夢という、務にとって孫にあたる子が絵画コンクールで優勝するほど絵の才能に恵まれていて、穏やかな性格であることを伝えます。

 一方、“呪いの血のポスター”の真相はというと、務に対して同じ悲劇を繰り返さないようにと、遠藤による回りくどい警告だったことが判明したところで終了となりました。

 今回は「人をつくるのは遺伝か環境か?」がテーマだったのですが、紐倉いわくその問いはナンセンスで、その両方が人間を形成するとのこと。務としては直継に対して愛情があるからこそ、鬼の血の危険性について言い聞かせていたわけですが、その“良かれと思って”が結果的に自殺へと追い込んでしまったわけです。

 この「遺伝子or環境」論はさまざまな映画やドラマで扱われていますよね。たとえば2013年に公開された、是枝裕和監督&福山雅治主演映画『そして父になる』では、エリート家庭と中流家庭との間で起こった子どもの取り違えがテーマでしたが、こちらは環境が人格形成を左右するものだという態で描かれていました。

 どの説が正しいかはわかりませんが、紐倉の説には希望があるように思えます。今回のように親が子を洗脳するパターンでなくとも、多少の差はあれ誰しもが親からの影響を受けているもの。それがいわゆる毒親である場合、自分もいずれ同じような人間になってしまうのではないか、と不安を抱いている人は少なからずいることでしょう。

 けれど、その後の環境次第では人格だって変わる。人格が変われば人生も変わる。そんなメッセージも含まれていたのではないかと感じました。紐倉にしても、高家や牧野巴(菜々緒)との出会いによって偏屈さが徐々に解消されて人間味が増してきましたからね。高家と牧野もまた紐倉の強引な性格に感化され、お互いに「(紐倉に)似てきた」とツッコみ合うシーンは微笑ましい限りです。

 ところで、“呪いの血のポスター”については、務に対する遠藤の回りくどい抗議ということであっさり片付けられましたが、セラチア菌はプロジギオシンという赤い色素がコロニーを形成し、健康な人には害がない一方、免疫機能の低下した人は肺炎や敗血症を疾患してしまう可能性があるというのが特徴。そのため、精神的に健康体であれば赤鬼の遺伝子には害がない、というメッセージが込められていたのかもしれません。

 各回しっかりテーマが練り込まれ、ストーリー展開やキャラ設定も申し分ないのですが、視聴率的にはいまいちパッとせず、シリーズ化するには微妙なラインというのが何とも惜しい限り。クライマックスへ向けてこれまで以上に盛り上がることを期待したいと思います。

(文=大羽鴨乃)

関連記事(外部サイト)