ジャニー喜多川氏の訃報が朝日新聞の一面に……少年セクハラ裁判にも触れた”新聞の矜持”か

 7月9日の午後4時47分に、解離性脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で亡くなったジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川氏(享年87)。ここ数週間、ジャニー氏の容態をめぐって、芸能マスコミは最も神経をとがらせていた。

 先月18日に都内の病院に救急搬送されたことが伝わると、テレビ局、スポーツ紙の芸能記者たちは一斉に「Xデー」へのシフトを敷いた。7月1日にジャニーズ事務所が病状を「くも膜下出血」と公表する以前から、予断を許さない状態であることは知れ渡っていたからだ。あるワイドショーのデスクは言う。

「主要な社は、渋谷区の病院のすべての出入り口はもとより、7月以降は都内に3カ所ある火葬場まで人を配置して『動き』がないかをチェックしていました。いつでも出せるように追悼VTRはほぼ編集まで済ませていて、番組会議では、プロデューサーが『今日は動きはないか』と確認するのが日課となっていました」

 実際、9日の午後11時30分の「情報解禁」を待っていたかのように、同時間帯で報道番組を放映していたNHK、日テレ、TBSは「速報」と打ちながらも、十数分にも及ぶ作りこんだ追悼VTRを放映した。

 翌日の一般紙でも、ジャニー氏の訃報は「異例」の扱いだった。特に朝日新聞は一面の3段を使って訃報を報じるとともに、社会面でも詳報。9日の午後11時30分の情報解禁から、10日朝刊の締め切り時間を考えると、事前に念入りな“予定稿”を作っておいたことがうかがえる。記事を見た朝日新聞関係者はこう語る。

「通常、芸能記事は三社面での扱いで、大物俳優の訃報でも3段程度。芸能事務所の社長の訃報が、2社面のそれも半分以上を使って『評伝』まで掲載されたのは、見たことがない。評伝を書いた文化くらし報道部の女性記者は、『週刊朝日』や『AERA』でも長らくジャニーズ担当をしていた名物記者。遅筆で有名な彼女が、数時間であれだけの文章を書けるとは思えない。Xデーに向けて、入念に予定稿を準備していたのでしょう」

 一般的に、新聞社はテレビ局ほど芸能事務所への「忖度」は少なく、報道機関として中立的な立場を守ろうとする。SMAP解散の際も、新聞では芸能事務所とタレントの従属関係を批評した記事もあった。

 とはいえ、朝日新聞のように子会社で出版事業を抱え、週刊誌がジャニーズ事務所のタレントを表紙にすることで売り上げを伸ばすようなビジネルモデルになっている場合、他の芸能マスコミと同様に「ジャニーズ礼賛報道」となりがちだ。その点、10日朝刊の朝日新聞の記事はそれに「一石を投じた」と見ることもできる、と前出の朝日新聞関係者は言う。

「社会面で『男性アイドル育成 光と影』として、ジャニーさんと週刊文春が裁判になった”少年セクハラ騒動”にも触れていたのは、少し意外でした。裁判の結果にまで踏み込み『セクハラについての記事の重要部分は真実と認定された』と書いた。ここは社会部マターだと思いますが、朝日新聞は他の芸能マスコミとは違う、という矜持のようなものが垣間見えました」

 一方で、10日朝の日テレのワイドショーでは、キャスターや出演者が軒並み黒を基調とした服ばかり着ていたことから「喪服かよ。さすがにやりすぎだろ」などネット上では批判も起こった。ジャニー氏の訃報をどう報じるのか。その1つ1つにも、ジャニーズ事務所とマスコミとの関係性がうっすらと見え隠れする。

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