吉本興業の騒動で地方のタレントPR大使に深刻な実害 リスク発覚で起用を控える動きも

吉本興業の騒動で地方のタレントPR大使に深刻な実害 リスク発覚で起用を控える動きも

吉本興業東京本社

 振り込め詐欺グループのパーティーに出席したお笑い芸人たちの「闇営業」問題が、全国各地で思わぬ波紋を広げている。 

 問題発覚当初から所属事務所が芸人の謹慎処分を次々と行い、吉本サイドは「反社」との関係根絶を宣言する姿勢を鮮明にした。これに各地の自治体が敏感に反応したのだ。

「自治体では、起用したタレントのPR大使を解任する手続きに追われ、イベントの出演調整に手間取っていますが、それはもう大変です。多額の税金をPR費用に投じたのに、かえって街のイメージは悪くなり、大損害だと憤っています。タレント起用の功罪は紙一重。評判が悪くなって市長を事実上クビになったケースもある。最近、吉本興業の社長パワハラ問題に話がすり替わっていますが、とんでもない。コンプラ違反で自治体は大損害を被っているのに『内輪の話にすり替えるな!』と、自治体からしてみれば言いたいでしょうね」(自治体問題に詳しいジャーナリスト)

 今回の「闇営業」の影響を受け、トラブルに見舞われた自治体をここでザッと見てみよう。

 三重県四日市市は、お笑いコンビ「ザブングル」の加藤歩が務めていた「四日市市観光大使」を当面見合わせることにした。加藤は、相方の松尾陽介とともに「闇営業」のパーティーに参加したと報じられ、所属するワタナベエンターテインメントが2人を謹慎処分とすると発表した直後の対応だった。

 吉本興業に所属するピン芸人・ムーディ勝山を地元出身の縁からPRメンバーに任命していた滋賀県草津市は、PR活動そのものを取りやめ、近くムーディーを解任する方針を固めている。

 そして神奈川県。お笑い芸人・くまだまさしが出演していた県インターネット放送局「かなチャンTV」で配信していたアニメ番組「かなかなかぞく」の配信を停止する措置に出た。くまだは、声優としてこの番組のパパ役を務めていた。家族団らんの番組に「反社」はそぐわなかったわけだ。

 このほかにも、

「大阪府和泉市はPR大使を委嘱していたお笑いコンビ『2700』の常道裕史を解任」

「東京都小平市は観光大使に起用した地元出身の『ザ・パンチ』パンチ浜崎と相方を市はホームページから削除」

「沖縄県宜野座村はふるさと大使に起用した『ストロベビー』のディエゴの扱いを検討中」

 といった具合に次々と解任手続きが進んでいる。前出のジャーナリストが言う。

「ほかにも、吉本興業の劇場がある千葉市は、お笑い芸人たちの出演を見込んで夏の花火大会そのものを吉本興業に委託していますが、集客を見込める夏のイベントが中止に追い込まれないかと恐れた千葉市は、吉本側とかなり深刻な話し合いを行っているそうです。吉本興業のお膝元である大阪市も、吉本側と包括的な連携協定を結んでおり、松井一郎市長も『かばい切れんわ』と吉本の体たらくにピリピリしているようです」

 実は、全国各地の自治体ではPR大使にタレントを起用する一種のブームが数年前から起きていたという。いつスキャンダルにまみれるか分からないタレント起用のリスクは、かねてから叫ばれていたのだ。

 残念な典型例といわれているのが、熊本市だ。アイドルグループ、KAT-TUNの元メンバー・田口淳之介に、熊本地震の復興に一躍買ってもらおうと「ふるさと大使」に任命していた。ところが、今年5月の大麻事件発覚後、速やかに田口を解任。同時に、大々的なPRイベントと期待されていた都内の「食のイベント」を開催目前にして急きょ取りやめる憂き目に遭っている。

 熊本市の大西一史市長は、田口の事件で”天国と地獄”の経験談を告白している。まず昨年9月のTwitterで、田口のことをこう絶賛していたのだ。

<田口淳之介さんと対談。とても爽やかで優しく心のある好青年。そりゃ会場は大変なものでして。彼がにっこりする度に「キャー?」彼がおにぎりを一口頬張ると「キャー?」と。私がおにぎり食べても「しーん?」。最後に撮影会。よく見ると僕を外して彼だけを写す人。世の中はシビア。残念です?」>

 ところが、5月23日の朝、大西市長は痛恨のツイートを発信した。

<皆さんおはようございます。今朝の目覚めの一曲はありません。昨日「熊本ふれんず応援大使」に任命していた方が逮捕されるというショッキングな報道がありました。今日は午前中に定例記者会見がありますので詳細についてはそこでお話しさせて頂きます。今日も一日全力で頑張ります。(`_´)ゞ> 

 大西市長のツイートは毎朝、「今朝の目覚めの一曲」で始まる。そのツイートを取りやめるとは、よほどこの事件がこたえたに違いない。

 田口のケースと同じように、タレント起用のリスクを広く知らしめたもうひとつの実例がある。心ないファンによる暴行事件からグループ内のトラブルに発展したアイドルグループ、NGT48だ。新潟市関係者が証言する。

「AKB48グループの中でも、最も地域に密着したグループといわれ、実際、地元自治体から猛烈な誘致活動が行われました。そのひとりが、前の新潟市長です。文化・芸術事業に力を入れた市長で、アイドルを誘致する事業にも『PR活動をしてもらえる』と積極的でした。しかし、この市長、”金食い虫”の文化芸術事業にカネをつぎ込みすぎて、自治体の貯金300億円をカラにしてしまった。その結果、責任を追及され、先の新潟市長選に出馬できず、引退に追い込まれています。事実上のクビですから、今回のNGTトラブルを受けて新潟ではPR大使の起用見合わせなどが相次いでいて、事業を刷新する方向で動いています」

 自治体によるタレントの起用は、うまく当たれば格好の広告塔になってくれるものの、今回の「闇営業」問題であらためてそのリスクを鮮明にしたといえる。

 タレントの不祥事といえば、テレビコマーシャルの損害賠償問題がすぐにニュースになりがちだが、これほど全国各地の自治体でタレントのPR大使化が進むと、スキャンダルが出るたびに、その町への悪影響が問われかねない。

「その根っこを探ってみると、自治体の税金を狙った芸能事務所のあこぎなタレント売り込み戦略にはまってしまった悲劇と言えるのかもしれません。まさにこれは、新たな社会問題と言ってもおかしくない現象なんです」(前出・自治体ジャーナリスト)

 芸能人のネームバリューに頼り切った、地方自治体の落ち度……とまでは言わないが、今後の自治体PR事業はさまざまなリスクを考えるべきなのだろう。

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