『べしゃり暮らし』第6話で思い出した、関西の有望株若手コンビ「ベイブルース」

『べしゃり暮らし』第6話で思い出した、関西の有望株若手コンビ「ベイブルース」

テレビ朝日『べしゃり暮らし』

 8月31日に放送された『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)の第6話。衝撃的な藤川則夫(尾上寛之)の死去、残された相方・金本浩史(駿河太郎)1人だけのラジオ生放送という展開で思い出すのは、周囲から成功を期待された関西のある若手コンビだ。

第6話あらすじ 「死んでどないすんねん、ボケ。俺ら、ここからやろ!」

 念願だったNMC(ニッポン漫才クラシック)決勝進出の切符を手にしたデジタルきんぎょ。金本浩史(駿河太郎)は前の晩、相方・藤川則夫(尾上寛之)から「絶対おまえを笑わしたる」というメッセージを携帯に受け取っていた。

 藤川から関西弁をやめるよう指摘された上妻圭右(間宮祥太朗)は、藤川と同じ考えを持つ辻本潤(渡辺大知)と激しく衝突する。そんな2人に、突然、藤川の訃報が入った。

 全員が悲しみに暮れる中、金本だけは藤川の遺体を見て「しょうもない。何がおもろいねん」と吐き捨て、レギュラーを務めるラジオ番組に向かった。その態度に憤りを覚えた圭右は「藤川さんはあんたの相方でいられて誇りに思うって言ってたんすよ!」と、藤川の思いを金本にぶつけた。

 金本は圭右をラジオ局まで連れていき、藤川の席に圭右を座らせて生放送に臨んだ。すでに藤川の死はニュースになっており、リスナーも事実を知っていたが、金本は「我々デジタルきんぎょ、NMC決勝進出いたしました!」と発表。しかし、涙をこらえる金本は言葉が続かない。すると、黙って座っていた圭右が金本をフォローしようと勝手にしゃべり出し、なんとか場をもたせる。その後、ハガキのコーナーで友だちとケンカしたというリスナーからの投稿を読んだ金本は、涙を流して藤川のことを語り出した。

「言うべきことは言えるときにちゃんと言わなあかん」

「死んでどないすんねん、ボケ! 俺を絶対笑かすて送ってくれたんとちゃうんか? NMC決勝残ったんやぞ。笑わせろや、藤川! 俺ら、ここからやろ。死んだらあかんやろ。嫁子ども残してどないすんねん!?」

 かつて、金本はピンの仕事で2カ月アメリカへ行き、帰国後の漫才で藤川の急成長に驚いたことがある。

「努力する才能ってこういうことかって。誇りに思うてたんは俺のほうや」。

 そして、金本はNMC準決勝の出番直前に藤川に伝えたかったことを明かした。

「お前、たぶん、今一番おもろいぞ」

 NMC決勝当日、金本は圭右の実家の蕎麦店を訪れた。圭右の父・潔(寺島進)は金本にざるそばを振る舞い、金本は蕎麦を食べながら静かに泣いた。翌日、圭右はエセ関西弁をやめることを辻本に宣言し、お笑い養成所へ入学することを2人は約束した。

 先の展開が展開だけに、駿河のラジオが始まる直前は原作を読んでいても緊張した。

 あくまで“普段どおり”の放送を駿河は自分に課す。今、デジきんのようなコンビがいたら即刻事務所からストップが掛かると思うが、『べしゃり暮らし』連載が始まったのは2005年。ラジオでしゃべった発言が翌日(ヘタしたらリアルタイム)のネットニュースに取り上げられる現代と違い、あの頃の芸人ラジオにはまだ密室感があった。演者とファンの共犯関係がまだ成立していた頃の話である。

 相方を残して逝った芸人はたくさんいる。カンニング竹山を残して逝った中島忠幸、鼻エンジンの村田渚。特に、今回の『べしゃり暮らし』が描くシチュエーションが思い出させるのは、大阪NSC7期(雨上がり決死隊など)の出世頭コンビ「ベイブルース」の河本栄得である。

 河本が死去したその日、ベイブルースにはラジオの生本番が控えていた。相方の高山知浩は河本の死を受け止めながら「あいつは大丈夫やから」と事実を隠し通し、その翌日に河本の死去は発表された。高山はその後のラジオ番組で「隠しててごめんなさい。嘘をついてました」とファンに謝罪をしている。

 今回のデジきんはベイブルースとは若干異なり、尾上の死はすでにマスコミに発表済みだ。なのに、駿河は笑いながらトークを始め、しかも雪の日に凍死した尾上をイジるように「俺らがネタやってるときはさっぽろ雪まつりの映像を流す」「雪のアンコールワットを見せつける」と不謹慎なギャグを飛ばし続けた。しかし、次第に感情が破裂し「死んでどないすんねん、ボケ!」と悲しみと哀愁をさらけ出した。芸人として正しい態度かは議論の余地があるが、これも選択肢の1つだ。

 はっきり言ってこのドラマ、デジきんの物語みたいになっている。全8話だとすでに発表されているので、残すはあと2話。最終回間近だというのに、主役は間宮&渡辺というより駿河&尾上という印象。しかも、『べしゃり暮らし』はこの6話が間違いなくピークだ。

 次回予告を見る限り、7話以降の展開に嫌な予感がしている。『べしゃり暮らし』初回は異常な駆け足だった。膨大な量のエピソードを消化しようとし、結果、ただのエピソード版みたいな仕上がりに。すべてが雑すぎて視聴者からは不評を買った。

 今夜放送第7話にも多くのエピソードが詰め込まれる模様。また、ダイジェスト版のような仕上がりになりはしないだろうか? という不安があるのだ。何しろ、間宮も渡辺もようやく養成所に入ったばかりである。

 エピソードの詰め込み過ぎによる弊害は、あからさまに悪影響を及ぼしている。間宮がエセ関西弁をやめるくだりと尾上の死のリンクの仕方があまりにポップで、感動を薄めてしまっているのだ。駿河が寺島の蕎麦を食べに行く流れも、原作未読派には取って付けたような印象を与えただろう。

 今夜から始まる最終章を境に、急激な尻すぼみになる恐れがある。いい意味で予想を裏切ってほしい。筆者の予感がただの杞憂で終わることを祈るばかりだ。

(文=寺西ジャジューカ)

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