『有吉ぃぃeeeee!』が掘り起こした、キレる佐山聡の真実

『有吉ぃぃeeeee!』が掘り起こした、キレる佐山聡の真実

『真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男』(集英社インターナショナル)

 毎回、芸能人の家を借りてeスポーツに挑戦する番組『有吉ぃぃeeeee! そうだ! 今からお前んチでゲームしない?』(テレビ東京系)の8月8日放送回で、有吉弘行一行が訪れたのはプロレスラー・タイガーマスク宅だった。

 同番組、eスポーツを扱うというコンセプトにもかかわらず、合間に挟み込まれるプロレストークが好事家の間で話題になっている。中でも有吉のテンションが上がったのは、格闘家・所英男がゲスト出演した2月10日放送回だ。かねてより前田日明信者を公言する有吉は、前田のかつての弟子である所相手に“前田愛”を語り続けた(ちなみに現在、前田と所は微妙な関係にある)。

「もう、本当憧れだったわ……。リングスずっと追いかけてたわ、WOWOWで。前田さんのトークショー観に行ったもんな」(有吉)

 小学生時代にプロレスにはまった有吉の観戦歴は長い。中でも、特に彼が好きなのはUWFである。その証拠に、2013年2月6日にTwitterで有吉ははっきりと「僕はUWF信者です」とツイートしている。

叩かれて血を流すタイガーマスクと、「それがお前の力だ」と笑顔の佐山

 一方、有吉が司会を務めた4月6日放送『オールスター後夜祭』(TBS系)では、衝撃的なクイズが出題された。自らが立ち上げた格闘技「シューティング(現・修斗)」の合宿で、生徒を厳しく指導する佐山聡を収めた映像が地上波で放映されたのだ。以前よりYouTubeなど多くの動画サイトにアップされている、1991年の伝説の合宿である。

 初期のUWFを牽引したプロレスラーのツートップといえば、藤原喜明と佐山聡。つまり、有吉の大好きな映像が地上波で放送されたということ。大股で踏み込み、天高く振りかぶった竹刀を覚えの悪い生徒の脳天めがけ振り下ろす佐山の姿に、有吉は大爆笑した。

 このときの佐山は、何度観ても怖い。ミットにキックを叩き込む生徒に対する詰めは、プロレスファンなら誰もが知る名場面だ。

「お前、俺が“思いっきり蹴れ”って言ったら思いっきり蹴らないと。ナメてんの、俺を? これが思いっきりか、お前の? 思いっきりか、それがお前の! やってみい、オラ。殺すぞ、この野郎」

 生徒の両頬をビンタしながらハッパをかける佐山。司会という立場なのに「ハッハッハッハッハ!」と興奮を隠しきれない様子の有吉。いわゆる、これはすごいものを見たときに起こる種類の笑いだ。個人的にめでてはいるものの、タブーだと思っていたものが世に出た喜びもあったはず。

 佐山は初代タイガーマスクである。そして、『有吉ぃぃeeeee!』に出演した4代目タイガーマスクは、プロレス転向前はシューターだった。4代目は佐山からの指導をしっかり経験済みである。

「僕もYouTubeみたいなの、夜中の2時にやられたことあるんですよ。“サンドバッグ蹴ってみ”って言われてパーンパーンって蹴ったんですけど、“お前、俺の言ってることわかってるのか?”って始まって。“はい!”って言ってるんですけど、心臓はバクバクです。“お前、もっと速く蹴れよ”と言われて“パーン、パーン”って。自分の中では結構やってるんですよ。でも“おいおいおいおい、お前、俺のことナメてんのか? オラ、お前ちゃんと蹴れ、この野郎”って至近距離に来て言われるわけですよ。で、“パーン、パーン”って蹴ったら、よく小学校に横になったほうきあったじゃないですか? あれ持ってきて、バコーン! って叩かれて。頭ですから、ほうきは真っ二つです。それで“蹴れ、この野郎!”って言われて“バンッ! バンッ!”って蹴ったら“はい、いいよ〜。それがお前の持ってる力なんだ”って。僕が汗と涙と血を流しながら“ありがとうございました!”って言ったら“あ〜、面白〜い”って帰っていきましたね(笑)」(タイガーマスク)

 くだんの動画でも、生徒のキックの威力が増したのを確認した佐山は唐突に通常のテンションに戻り、激高の真意を明かしている。

「OK! これさあ、自分たちでやってほしいの。俺はその手助けするだけだから。アドレナリンを自分で上げてけ、自分で」

 91年合宿参加組の先輩にあたる初代シューターたちは、一様に「あのときの佐山先生は本気で怒っていない」と口をそろえ語っている。また、書籍『真説・佐山サトル』(集英社)にて、佐山自身もこの合宿について振り返っていた。

「そんな(他団体の選手と対戦できる)実力じゃなかったんですよ」

「うちはこれだけ厳しい練習をやってるんだと外に見せるためでした。そうすれば、他の団体から挑戦を仕掛けられることはないでしょう」

 わざと厳しいふりをすることで、他団体からの防波堤をつくる。これが佐山による“地獄の合宿”についての解説だ。

 佐山の一人息子で1990年生まれの聖斗さんは、くだんの映像を同級生から見せられ、驚いたそう。“地獄の合宿”が行われたのは、聖斗さんが生まれて1年後の話だ。

「あの映像の姿にびっくりしました。“本当にお父さんはあんなことをしたの”って訊いたら、“ああ、あれはやらせ”で終わりでしたね」(『真説・佐山サトル』より)

佐山聡は、底が丸見えの底なし沼

 プロレス界には「底が丸見えの底なし沼」という言葉がある。外からすべてが見えているようで、実は何も見えていないということを暗喩した一語だ。

 何も、後年に佐山が語った真意を全肯定しようというわけではない。例えば、スイッチが入ってキレやすい佐山には、あるウワサがあった。99年3月14日、プロレス団体「UFO」横浜アリーナ大会終了後の打ち上げパーティで、佐山がキレてアントニオ猪木に「殺すぞ」とフォークを突き立てたという真偽不明のエピソードだ。

「その真偽を佐山に問うと『(ウワサは)怖いですねぇ、猪木さんにそんなことできるわけないじゃないですか』と大げさに肩をすくめたのだ」(『真説・佐山サトル』より)

 しかし、一方で、異なる見解も存在する。当時、UFOスタッフだったXさん(仮名)は、書籍『証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実』(宝島社)のインタビューで、こう証言している。

「佐山さんが猪木さんに『オラァーッ!』ってフォークを持ちながらすごんだっていうのは、噂でもなんでもなく、本当のことです。そのまま佐山さんは、怒って帰っちゃいましたから。猪木さんと佐山さんの間になにがあったのか、本当のところは当人同士にしかわかりません」

“プロレス村”以外の誰かから質問された場合、プロレスマスコミには決して明かさないような本音を、選手はポロッと口にしがち。これは、プロレスあるあるのひとつだ。そういう意味で、意外とプロレスファンは『有吉ぃぃeeeee!』を見逃せない。有吉やタカアンドトシが無邪気に放った質問が、プロレスラーにクリティカルヒットする可能性は多分にある。

 いつか、4代目タイガーマスクからバトンを受けた佐山が、もしくはゲームマニアとして名高い前田がこの番組にゲスト出演しないかと、妄想が妙に高まってしまう。

(文=火の車)

関連記事(外部サイト)