TBS『ノーサイド・ゲーム』の盛り上がりとラグビーW杯の扱いから見える「テレビ局の論理」

TBS『ノーサイド・ゲーム』の盛り上がりとラグビーW杯の扱いから見える「テレビ局の論理」

TBS『ノーサイドゲーム』

「ラグビーW杯、盛り上がってほしいのに、なんだかこう突き抜けられないよねぇ。なんでかなぁ」

 先日、80年代のラグビー人気を象徴する存在ともいえる伝説のドラマ『スクール☆ウォーズ』のある出演者にインタビューした際、こんなやりとりがあった。確かに、オリンピック、サッカーW杯に続く世界三大スポーツ大会の開幕まであと1週間、にしては世間の熱気がまだまだ物足りない。これが嵐の前の静けさならいいのだけど。

 静かな立ち上がりを見せそうなW杯とは一転、最終回に向け、がぜん盛り上がりを見せているのがTBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』だ。さすがは『スクール☆ウォーズ』を生んだTBS、その血脈は受け継がれていたんだなぁとうれしくなる。

 実はこの、「なぜラグビーW杯がなかなか盛り上がらないのか?」と、「『ノーサイド・ゲーム』に、なぜ熱中してしまうのか?」という2つの話、突き詰めると表裏一体のテーマでもあることに気づく。鍵となるのは「放送局の論理と、それを打ち破る大義」だ。

 まず、「なぜラグビーW杯がなかなか盛り上がらないのか?」問題について。

 もちろんこれから一気にヒートアップするとは期待しているのだが、事前段階でのメディアの情報量に関していえば物足りないと感じるのは事実。そしてその理由は、オリンピックやサッカーと異なり、地上波中継局がNHKと日本テレビに限られている、という点が大きな理由だ。

 放送局が限定された結果、この2局以外ではスポーツ番組でもなかなかラグビーニュースが扱われない、という事態に。ある放送局では、トップダウンで「日テレの宣伝になるから、ラグビーネタは極力扱うな」というお達しも出ていると聞く。

 ならば日テレが頑張ってくれればいいわけだが、どうも日テレは「ラグビーは難しい」と考えすぎているように思う。だから、せっかく代表選手や元有名選手たちを独占的にキャスティングできるのに、バラエティ番組でお茶を濁して終わり、というものばかりが目立つのだ。もっと素直にラグビーの魅力を伝えてくれればいいのに。

 一方、この「ラグビーの魅力」を素直に描写できているのが『ノーサイド・ゲーム』なのだ。ドラマ成功の背景には、池井戸潤作品特有の勧善懲悪感、毎話最後は未来志向になる構成、サラリーマンの琴線をくすぐる企業内闘争などもあるだろうが、真摯にラグビーと向き合っているから、という点も大きい。ドラマ以上に、ラグビー描写が濃いのだ。

 ではなぜ、他局ではスポーツ番組ですらラグビーを扱うことに躊躇しているこのご時世に、TBSのこのドラマでは、ここまでど直球にラグビーを描くことができているのだろうか?

 ここで重要になるのが、番組のトップとTBSのトップに共通するラグビー愛であり、「日本ラグビーが盛り上がるのなら、局の論理なんて気にするな」という気概だ。

 まずは番組トップ。総監督的な立場にいる演出の福澤克雄は慶應大学ラグビー部出身。だからこそ、ラグビー描写に妥協がないし、キャスティングにもラグビー経験者ばかりを揃えるこだわりがある。

 チームのキャプテン岸和田徹を演じる高橋光臣は大阪の強豪校・啓光学園ラグビー部出身。ドラマ初挑戦とは思えない存在感を放つ浜畑譲役の廣瀬俊朗は元日本代表キャプテン。そのほかにも、主要キャストはほぼ全員がラグビー経験者であるため、スポーツドラマでありがちな“スポーツ描写でのがっかり感”が見当たらないのだ。

 8日放送回ではあまりにもさりげなく濱田岳がゲスト出演していたが、濱田もまた元ラグビー少年。「こんなにも熱いドラマにラガーマンとして少しでも役に立てるなら協力したい」と、自ら番組側に逆オファーしたという。

 これほどまでの「ラグビーど直球」、おそらくTBS局内でも「日テレの宣伝になる」と眉をひそめる人物はいるだろう。そんな声を押しのけ、ラグビーを前面に押し出した企画を突き通せたのは、局のトップであるTBS社長の佐々木卓もまた早稲田大学ラグビー部出身、ということも大きな要因のはずだ。

 佐々木社長は、ラグビーと経営をテーマにしたインタビューで、こんなコメントを残している。

《負けることよりも怖いのは、アンフェアだという烙印を押されることです。1回や2回の負けはやり直しが利いても、アンフェアだという烙印は一生付いて回る》(「週刊ダイヤモンド」8月31日号より)

 この言葉から、佐々木社長には、目の前の視聴率競争以上に、放送局としての大義、そしてラグビーを愛する者としての矜持があるように思えてならない。

 ここから先、実際にW杯の試合が始まれば、日テレ以外の局であっても、日本戦の試合結果や活躍した選手を取り上げてくれるはず。つまりは、日本代表の結果次第では、まだまだ盛り上がる可能性は大きい。もし、それでもW杯の扱いがおざなりなスポーツ番組があったとしたら、その番組の良心とスポーツ愛を疑ったほうがいいと思う。

『ノーサイド・ゲーム』の中では、主演の大泉洋がラグビー部の廃部を主張する上司に対して、こんなセリフで対抗するシーンがあった。

《日本のラグビーは必ず変わります。きっと強くなります。お願いします。ラグビーの未来を、必死に戦っている選手たちの将来を閉ざさないでください》

 なんだかこれ、日本のメディアに向けて言われたような気がしたのは、筆者だけだろうか。

(文=オグマナオト)

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