『Iターン』第9話、ムロツヨシと黒木瞳が体現する社畜と自営業の悲哀

『Iターン』第9話、ムロツヨシと黒木瞳が体現する社畜と自営業の悲哀

テレビ東京『Iターン』

 9月6日に放送された『Iターン』(テレビ東京系)の第9話。今回、狛江光雄(ムロツヨシ)が体現したのは社畜のつらさ、麗香(黒木瞳)が表現したのはひとりで生きる者(自営業者)のつらさだったように思う。

第9話あらすじ 田中圭と黒木瞳の罠にはまるムロツヨシ

 岩切猛(古田新太)の強引な手段で、青葉銀行の広告をすべて受注することになった狛江。しかし、脅迫という非合法な手段で獲得した仕事なだけに、狛江は喜べずにいた。

 その後、狛江が岩切組に向かうと、岩切(古田新太)らは中国人との取引に向かう模様。狛江は罪悪感に苛まれながら竜崎組の竜崎剣司(田中圭)に電話し、今夜取引が行われると報告した。

 岩切組事務所で、内職の折り鶴を作りながら狛江が当番をしていると、スナック来夢来都のママ・麗香から「店で酔った客が暴れているからすぐ来てほしい」と連絡が入った。狛江と桜井勇一(毎熊克哉)は店に直行。到着すると、店内にはフリーランスを名乗る見覚えのない男がひとり立っていた。さらに振り返ると、竜崎組の神野晃(般若)が拳銃をこちらに向けている。呼び出しは竜崎組と麗華が結託した罠だったのだ。

 隙を見て桜井は神野に飛びつき、狛江を除く3人が揉み合いに。そんな中、拳銃が暴発し、フリーランスの男が腹部からおびただしい血を流して悶え出した。桜井は神野を足止めしながら、狛江に岩切へ連絡するよう指示。岩切が店に駆けつけると、そこに桜井はおらず、竜崎が岩切を待ち構えていた。竜崎は「桜井を返してほしければ、警察に中国人との取引について自供しろ」と迫る。岩切は店の外に待機していた刑事の城島豊(河原雅彦)に自首をした。

 翌日、宣告社の阿修羅支店で、上司の高峰博之(相島一之)と狛江らによるテレビ会議が行われる。そこで高峰は、阿修羅支店の社員らには残業代もボーナスも支払われないことを通告。狛江の部下・柳直樹(渡辺大知)と吉村美月(鈴木愛理)は絶望した。

 一方、竜崎組の事務所には外国人極道の姿が。この男は竜崎に「これでこの街は俺たち2人のものだ、兄弟」と言葉を掛けた。その頃、岩切は鉄格子の中で隅から隅まで新聞に目を通していた。

 今回描かれたのは働く者の悲哀だ。青葉銀行の広告受注が取れ、売上を大幅に伸ばした阿修羅支店の面々に対し、相島はボーナスを出さないと通告した。その理由は、本社の業績が芳しくないから。

 渡辺はこれに反抗する。

「本社の業績が悪いのは、部長たち、お偉いさんたちのせいでしょ!? その責任を末端の俺らに押し付けて、トカゲの尻尾切りですか!」

「サラリーマンって、どんなに理不尽でも我慢しなきゃいけないんですね」

 そもそもの話、阿修羅市のような場所に支店を出した本社の読みが甘すぎる。あんなに無気力だった渡辺もやる気を出して成長したというのに……。

ムロ「どうすることもできないんです……。これが社畜です、すみません」

 岩切組を1つの会社と捉えれば、極道なのに和気あいあいと内職に励む組員らは愛社精神にあふれている。久しぶりに鶴がうまく折れたと喜ぶ毎熊は特にだ。そんな毎熊が竜崎組に捕らえられた。古田は毎熊を救うため、警察に自首した。

古田「桜井はワシの子や。このまま見殺しにできるかい」

 岩切組には、上司と部下の間に理想的な縦関係がある。入る会社によって上司に憎しみを覚える場合もあれば、身を粉にして自らを捧げるケースもあるのだ。

 毎熊と般若が揉み合う中、発砲事件が起きた。そういえば、8話では青葉銀行支店長・瀬戸川達郎(手塚とおる)を脅すため、一芝居打った偽の発砲事件が起こっている。あれは、岩切組が全員一丸になってやり切ったミッションだ。

 働く者には、会社員もいるし個人事業主もいる。8話で田中は般若にこんな指示を出していた。

「死んでもいい兵隊をひとり用意しろ」

 今回、来夢来都にはひとりの見知らぬ男が待っていた。

毎熊「あんた、どこの身内?」

男「俺はどこの身内でもねえよ。フリーランスだよ」

 揉み合いの中で撃たれたのはこの男である。田中は始めから誰かひとりが撃たれると計算していた。その役割として、フリーランスの男が雇われたということ。

 黒木はクラブ「来夢来都」を営む自営業者である。彼女は岩切組を裏切った。四面楚歌のムロが黒木に裏切られたショックは大きい。でも、黒木は黒木で田中の要求を飲まないと店が立ち退きに遭うつらい立場にいた。

田中「あんたが岩切裏切るなんてな」

黒木「なんとでも言わんね。男だけが守るもの持ってると思ったら、大間違いよ」

 ムロはムロで、竜崎組のスパイとして古田に不義理をしている。働く者の悲哀は誰にだってある。ムロも黒木も自分を守るために人を裏切った。社畜もフリーランスも、どちらもつらい。

 今回、チワワの昌三さんの出番が多かった気がする。大きな目をウルウルさせる昌三さんはかわいい。自分の立場に絶望するムロと昌三さんは目の潤み方が同じなのに、両者から受ける印象はあまりにも違った。

(文=寺西ジャジューカ)

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