若手俳優の登竜門『仮面ライダー』の注目株! 井桁弘恵の“微妙な違和感”

若手俳優の登竜門『仮面ライダー』の注目株! 井桁弘恵の“微妙な違和感”

BOX CORPORATION公式サイトより

 久しぶりに『仮面ライダー』にハマっている。

 日曜朝9時から放送されている『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)。物語の舞台は、人口知能搭載人型ロボ・ヒューマギアが普及した近未来だ。売れっ子お笑い芸人を目指していた飛電或人(ひでん・あると/高橋文哉)は、ある日、ヒューマギアの開発と派遣を担う、飛電インテリジェンスの社長に任命される。

 時を同じくして、各地ではヒューマギアが暴走して人間を襲う事件が発生する。或人は飛電伝インテリジェンスの新社長のみが使える飛電ゼロワンドライバーを使って仮面ライダーに変身し、ヒューマギアを暴走させるサイバーテロリスト・滅亡迅雷.netと戦うことになる。

 本作は、「人工知能(AI)の進化が人類の仕事を奪う」という、近年話題になっているシンギュラリティ(技術的特異点)をモチーフにしたSFドラマに仕上がっている。面白いのは、人工知能が搭載されたロボであるヒューマギアではなく、彼らをハッキングする滅亡迅雷.netを悪役としていること。

 普段は優しく、人類のために尽くすヒューマギアが暴走の果てにライダーに破壊されてしまう悲哀が、物語を盛り上げている。

『仮面ライダー』は日本を代表する国民的コンテンツで、1971〜87年にかけて放送された昭和ライダーと、2000年の『仮面ライダークウガ』以降に放送された平成ライダーがある。1年にわたって放送されるため、ストーリーも複雑で見応えがあり、若手俳優の登竜門にもなっている。

 2010年以降では、菅田将暉、桐山漣を世に送り出した『仮面ライダーW』、福士蒼汰、吉沢亮、清水富美加(千眼美子)を輩出した『仮面ライダーフォーゼ』、竹内涼真、内田理央、馬場ふみかの出世作となった『仮面ライダードライブ』など、後にブレイクする俳優が多数出演。その意味でも、NHK朝ドラと並ぶ、最も注目すべき“ドラマ枠”と言っても過言ではないだろう。しかし、アクションをベースにしたヒーローモノで、日曜の朝に起きて毎週観なければいけないという敷居の高さもあってか 、近年の『仮面ライダー』は1話も見ずに挫折していた。

 特に前クールの『仮面ライダージオウ』は、平成最後のライダーということもあり、過去のライダーが時空を超えて共演するというマーベル映画における『アベンジャーズ』のような作品で、最初からついていけなかった。

 しかし、この『仮面ライダーゼロワン』は独立した世界観で新規参入しやすく、純粋なドラマとして今のところ楽しめている。

 何より楽しいのは、若手俳優の活躍だ。主人公の飛電或人を演じる高橋文哉。或人と一緒に戦う仮面ライダーバルカンこと不破諌(ふわ・いさむ)を演じる岡田龍太郎。或人のサポートをする女性ヒューマギアのイズを演じる鶴嶋乃愛が今のところ好評だが、筆者が最も注目しているのが、刃唯阿(やいば・ゆあ)を演じる井桁弘恵(いげた・ひろえ)だ。

 井桁は映画『イソップの思うツボ』やゼクシィイのCMに出演している22歳の若手女優。本作で演じる刃唯阿は、人工知能特務機関『A.I.M.S』の技術顧問であると同時に、仮面ライダーバルキリーに変身する女戦士だ。

 まだ始まったばかりなので、彼女がどういうキャラクターなのかという細かい設定は不明だ が、ライダーに変身するぐらいだから、男勝りの科学者兼上官という感じだろう。

 唯阿は「〜だからな」「〜だ」「〜するんだろ」といった語尾でしゃべるクールなキャラクターだ。アニメや漫画ならともかく、実写作品でこういった口調の女性キャラクターを女優が演じると、どうしても存在感が浮き上がってしまい、前出の3人と比べても、微妙な違和感が常に漂っている。

 ヒューマギアのイズを演じる鶴嶋に違和感がないのは、感情の起伏がない記号的なキャラクターを演じているからだ。ほほえみながら丁寧な口調でしゃべれば、こういうキャラクターは実写でも成立するのだが、井桁演じる唯阿は複雑な内面を抱えた女性で、なおかつ口調が特殊なので演じるのがとても難しい。

 仮に米倉涼子や天海祐希のようなベテラン女優が演じていたら、強い女上司という印象がわかりやすく際立ったのだろうが、22歳の井桁は線の細い新垣結衣タイプの女優で、時々、少女のようなかわいい表情が漏れ出してしまい、クールにも徹しきれていない。

 ただ、この不安定さは、必ずしも欠点とは言えず、劇中では彼女の複雑さを強調する面白い効果を生んでいる。だから彼女を見ているとドキドキして、次は何をするのかと、目で追ってしまう。

 長丁場の『仮面ライダー』には役者の成長を見守る楽しさがあり、序盤はぎこちなかった俳優が、みるみる変わっていくこと自体が見どころのひとつだったりする。

 自分のキャパを超えた難しい役を与えられた井桁が、今後どのように刃唯阿を演じるのか? 1年間じっくりと見守りたい。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

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