下ネタ大好きでも不潔なネタは嫌い…キングオブコント最下位でもオファー殺到の『空気階段』による“コントの作り方”

 今年、多くのテレビ番組に出演し、『キングオブコント』でも決勝へと駒を進めた空気階段。5月に行われた単独ライブ「baby」は絶賛され、10月に再演が決まる異例の事態になった。クズ芸人としての活躍が目覚ましい鈴木もぐらと、『キングオブコント2019』で「お笑いのある世界に産まれてきてよかったです」の敗者コメントで、ほどよい戦果を上げた水川かたまり。注目の2人のコント観に迫る。

――『キングオブコント2019』の決勝が終わって、1カ月ほど経ちました。今振り返ってみてどうですか。

水川 始まる前、1位から最下位まで全部シミュレーションしていてたんですよ。結局順位は最下位でふるわなかったんですけど、「そうか、このパターンか」という感じで……。「悔しかった」より、「楽しかった」が強かったですね。

――ベストの想定は優勝でした? チャンピオンより、爪痕残した2位が売れるようなパターンもあるじゃないですか。

水川 それはもちろん優勝です。1000万円もらえるんで。

鈴木 ゼロですからね、2位は!(笑)。 僕は『キングオブコント』はライブ感があったなという印象ですね。生放送、舞台の大きさ。コントライブの一番上に出られた感覚でした。

――決勝にかけるネタは早くから固まってました?

水川 毎年『キングオブコント』は、7月ぐらいに何をやるか決めてたんですよ。それが今年は直前までめちゃくちゃ迷いましたねえ。結局、ライブでかけていて、一見のお客さんでも安定してウケていた、タクシーのネタにしました。準決勝と決勝で同じネタをやるので、両方でちゃんとウケるネタがいいのかなと。あと今年はテレビでネタやる機会が多くて、基本的にもぐらがキャラクターを演じてボケるというコントだったんです。なのでそれ以外のパターンを見せたいなというのもありました。

YouTube「空気階段チャンネル」より

――そもそも去年、決勝に行くと評判でした。準決勝の感触はだいぶよかったんですか。

水川 よかったですね。決勝に行くものだと結果が出るまでは思ってました。ただ毎年、準決勝ウケて落ちたけど、その翌年に決勝行くパターンがわりとあるんですよね。やさしいズさんとか、パーパーさんとか。落ちてからはそのパターンを信じて、切り替えました。

鈴木 まあ、審査員の方が決めることですからね。僕は決勝の10組が限界を超えた数値っていうだけで、32組ぐらいがちょうどいいと思ってるんで。だからウケても行けない組が出てくるのは仕方ない気もします。

――空気階段さんはそれこそ1年ぐらい前から加速した印象があって、当時、ラジオで「劇場であまりスベらなくなった」と言ってましたよね。何が変わったんですか?

水川 ネタのテイストを変えたわけじゃないんですよ。お客さんがだんだん僕らのことを知ってくれて、浸透してきたのかなと。

鈴木 受け入れてもらうのに、7年かかったってことですかね。

水川 あと、もぐらの結婚もあるかもしれません。今までお客さんのイメージが、「借金あるクズ野郎。嫌い!」だったのが、「ちゃんと結婚して子供育てる人だったんだ!」で、見方が少しマイルドになったような。

鈴木 水川の言う通り、ずっと劇場に通っている方からしたら、得体の知れないヤツが結婚して、安心して笑いやすくなったんでしょうね。逆に初めて見る人が、「こいつ嫁子供いて、さらに借金あるのか?」になりましたけど(笑)。

水川 テレビのゴールデン帯の番組で、一般の視聴者に受け入れてもらうにはまだまだg時あ間かかる気がします。

―― 一方、『キングオブコント』のおかげで、かたまりさんの顔ファンが増えたという説もあるじゃないですか。

水川 イメージビデオのオファーが来ました。

――イメージビデオ?

水川 雑誌の付録のDVDみたいで。

鈴木 女の子が生クリーム舐めたりするようなやつじゃないですか? 僕は番外編で、水川が本編だと予想してます。

水川 不本意です……。今のところ検討中ですが、お金がよかったら引き受けます。

鈴木 地獄の沙汰も金次第ってことだよね。そういう人間なんです、水川は!

――空気階段を結成する前、養成所ではコントをやってました?

水川 はい、コントでした。僕はデデという、ボケとかあまり決まってないようなコンビで。大阪NSCと対抗戦をやったらギリ出してくれるぐらいのレベルでした。演者としての技量は足りなくても、台本の部分は同期の中ではよかったと思います。といっても、養成所レベルの話ですけど。

鈴木 僕は42歳ぐらいのおじさんと組んでコントやってました。マージナルマンというコンビで。

――それは奇抜な人と組めば目立つという考えで?

鈴木 いや、最初は年上だと知らなかったんですよ。看護師やりながらNSCに通っている方で。見た目は僕と同じぐらいに見えるんです。

水川 いや、おじさんのほうが若く見えたな。

鈴木 ネタは僕が書いてました。クラスでいうと上から2番目で、1番上のクラスには行けなかったですね。

――組んで初めて作ったコント覚えてます?

鈴木 初めて作ったのは……たぶん2時間サスペンスを1分で見せるみたいなコントやりましたね。そのときは20組ぐらいが出番1分でバーッと出るライブだったんで。

水川 スベったと思います。緊張して、あんまり覚えてないんですよ。

――デビュー当時、作家の山田ナビスコさんに「ヒゲを剃って漫才しろ」と言われたと聞いたんですけど。

鈴木 1年目ですかね。「なんでコントやってるのにヒゲ生えてんだ?」と言われました。

水川 「大喜利大喜利しすぎて、頭でっかちのヤツが書いたコントだ。それなら漫才やったほうがいい」と。悔しかったんでヒゲ剃らずにコントやってたら、そのうち認めてくれるようになって。

――振り返ると、頭でっかちなコントでした?

水川 そのころはキャラクターを入れることや、演じることに重きを置いてなかった気がしますね。面白い台本あれば面白くなるみたいな。

鈴木 そう考えると、確かにヒゲあってもなくても一緒のコントだったかもしれない。その時の俺らにはヒゲが早かったんです。

――もぐらさん、ヒゲあって太っていて個性が強いじゃないですか。組むとき、かたまりさんはコント作りにくくなると考えませんでした?

水川 それはなかったですね。ヒゲがあるとないで、説得力が違うんですよ。普通の太った人が言うことより、太ってヒゲ生えた人が言うことのほうが、本当のように聞こえてくるんで。

――つけヒゲではダメ?

水川 ダメなんです!

――コンビとして調子よくなってきた、と感じたのはいつぐらいですか?

水川 「多重人格」というネタが3年目にできて、新ネタライブにかけたらめちゃくちゃウケたんですよ。それまでもウケるネタはあったんですけど、芯食ってウケた感覚あって、「キャラクター入れるとこんなにウケるのか!」と感じましたね。そのネタもあって、その年は『キングオブコント』の準決勝まで行けましたし。

鈴木 あのネタに出てくる人がだらしなくて、自分に近かったんです。

――でももぐらさんって演技うまいですよね。特にボケ役じゃない時、強く感じます。

鈴木 最初はめちゃくちゃヘタだと思ってました。それはやっぱりキャラクターを考えるようになったからじゃないですか。昔は「静か」「激しい」の二択でしか考えてなかったんですよ。寡黙だけど激しい人みたいな、そういう人間を演じないとコントにならないと気づいたのも3年目ぐらいですかね。

水川 もぐらは器用ですけど、僕はできる役の幅が狭いんで……。いろんなパターンできるわけでもないから、ネタの足を引っ張らないようにしてるつもりですね。

――空気階段のネタって、どうやって作っているんですか。

水川 最近はパターンが変わってきてますね。僕がまるまる一本書いて渡すときもあれば、もぐらが書いてというのもありますし。2人で話し合うパターンが一番多いんじゃないですかね。

鈴木 こういう設定でこういうキャラでこうボケて、というのは2人で話して、道が見えたら僕はお役御免で、あとは水川がバーッと書いて形にしてくれてます。そうしないとまとまらないんで。

――あっ、そうなんですね。かたまりさんが一字一句書いてるものと勝手に考えてました。

鈴木 一字一句みたいな人間じゃないですよ! 「このへんは適当に」もありますし。

水川 台本に「?」って書いてるときもあります。おじさんのキャラ入ったネタで、大喜利的なボケだったら、僕が考えるよりもぐらのほうがウケたりするんで。そういうやつは任せてます。

鈴木 借金がある役の一言だったら、ほんとうに借金がある俺が考えたほうがリアルでいいんじゃないかということで。そこで出した案の取捨選択は水川です。ただ2人でやってることもあって、本当に筆が遅いですから。うらやましいです、早く作れるのは。

水川 かが屋とか早そうですよねえ。

――かが屋さんの名前出ましたけど、「このコント、すごいな」と感じるグループは誰ですか?

水川 かもめんたるさんとロバートさんですね。かもめんたるさんは聞いたことのない言い回しであったり、どこを面白がってるんだろう? という部分が。ロバートさんは問答無用で面白い。

鈴木 「これはとんでもないな!」という設定のコントをやってますもんね。それを3人の見た目のポップさで、ものすごい食べやすくしているという。

――空気階段さんって、劇場やテレビで見るコントと単独のコントがあまりかぶってない気がしまして。そこは分けてます?

水川 単独に関しては賞レースをいっさい意識してないんです。2時間見終わった後、面白かったなと感じてもらいたいのが優先で、ボケつめこんでたたみかけて爆笑……はいっさい考えないです。

――今年の春に単独でやっていた駄菓子屋のコントが、予想できない展開で驚異的に面白かったんです。ああいう長いのを縮めて賞レースに持っていこうというのはないんですか?

水川 あれは14分ぐらいあって、持っていく発想はないですねえ。芸人が審査するシステムの『キングオブコント』ならあったかもしれないですけど。

鈴木 観覧は一般のお客さんが多くて、その人たちを笑わせないと審査員も点を入れられないじゃないですか。だったらまずはウケないといけない。そうなるとああいう駄菓子屋みたいなネタは怖いというか。

――暗い世界観ですもんね。

鈴木 お客さんが「エー!?」「キャ〜!」という反応になったら、それこそ今年の「R-1」の岡野(陽一)さんのようになる懸念もあるので(笑)。

水川 岡野さん、巨匠時代に『キングオブコント』でもお客さん引かせてましたね(笑)。ただ、今年の『キングオブコント』で、2本目に用意してたのは去年の単独でやったやつだったんですよ。単独のネタを縮めて賞レースにかけれたのは、一個よかったと思います。

――でも単独は単独なんですね。

水川 はい。単独をやるために『キングオブコント』出てるんで。

――大会で結果を出して、単独をやれる環境を作るということですか?

水川 そうです。

鈴木 大人の方に納得してもらうのには、賞レースで結果を出すのがわかりやすいですから。
水川 その単独を賞レースのために捧げるのは、本末転倒な気がするので。単独はめちゃくちゃ労力はかけているつもりなんで、できるだけ多くの人に見てほしいですね。東京03さんみたいに、何度も公演して全国展開するのをすごいやりたいですし、それが生活の基盤にできるといいなと。

――単独にこだわるのは、何がきっかけだったんですか。

水川 芸人になって2年目ぐらいに、かもめんたるさんの単独『メマトイとユスリカ』のDVDを見て、「段違いですごすぎる!」「こんな面白いものができるなら単独やりたい!」と心動かされたんです。あと芸人になる前、東京ダイナマイトさんのDVD『漫才ふたり旅』を見たのも大きいですね。ネタはダイジェストなんですけど、2人が全国の劇場行って漫才やってメシ食って、スタッフと車で海行って裸で遊ぶような様子を映していて。「芸人ってこんな楽しいのか!」と思えて、それが芸人になりたくなった理由の一つですし。

――ちなみにインタビューしてて、他事務所の芸人さんの名前が多くあがる気がしたんですけど、よしもと内で交友関係あるのは誰ですか?

水川 僕はオズワルドの伊藤です。マブダチです。

鈴木 僕は麻雀ネットワークで、トレンディたかしさん、シソンヌじろうさんとは仲良くさせてもらってますね。鬼越トマホーク・坂井さん、ゆにばーす・川瀬さん、おかずクラブさん、デニスの(植野)行雄さんには、よくごはん連れて行ってもらいます。

――かたまりさん、よくラジオで異性関係だらしない人に対して「不潔だ!」と言うじゃないですか。一方で、コントに下ネタ多いのは矛盾しないんですか?

水川 あー、下ネタはめっちゃ好きなんです。でも自分のコントは不潔にはなってないと思います。何も考えてない、配慮がなされてない下ネタはイヤなんですけど。

――決めているコントのルールってあります?

水川 人がイヤな気持ちになることはやらないですね。

――言われれば、ハッピーエンドのコントが多いような。

水川 バッドエンドなんて見たくないんで。映画や小説で余韻のあるものだったらいいですけど、お笑いライブ見に来てる人には、最後、「面白い」で終わってほしいです。

鈴木 俺らじゃなくてもできるコントは、この2,3年やらなくなってる気がしますね。設定よさそうだけど、他の人がやっても面白そうだったら寝かしておいて、そこに何か足して俺らなりのものが見つかった時、もう一度掘り起こすみたいな感じですかねえ。

――最後にひとつ。こないだ空気階段さんが出ていたライブで、出演芸人が「コントとは?」を聞かれるくだりを見たんですよ。うるとらブギーズさんが「2人のダンス」、ザ・マミィさんが「出産」などと答える中、かたまりさんの答えが「てめえで考えろ」で。

水川 そうでしたね。

――あれ、かわされた気がしまして……。

鈴木 ワハハハ! すかしてましたか。

水川 いやー、あれは真面目に答えられないですよー。

鈴木 芸人いると大喜利になっちゃうんでねえ。僕はネルソンズ・和田さんの「人力舎」という回答が好きでした。

――改めて「コントとは?」を聞いていいですか?

水川 (しばらく考えて)「ストレス発散」ですかね。生きてるとイヤことあって、「ワーッ!」とか言うじゃないですか。なんでワーッなのかを考えて、うまいことコントにして、笑いやお金に変えられたらいい循環というか、楽だなというか。真面目な回答です。

鈴木 僕は「花」ですね。コントという字を書いて縦にしてもらえると、花が咲いてるように見えませんか?

水川 見えないよ。

鈴木 ほら、これが茎で、これが葉で……。

――ああ、見えなくはないです。

鈴木 ということなんですよ。「角度を変えれば花」。これ以上説明は要りません!

写真/二瓶彩

空気階段(くうきかいだん)
水川かたまり(1990年生まれ、岡山県出身)と鈴木もぐら(1987年生まれ、千葉県出身)のコンビ。2011年結成。『ラフターナイト』(TBSラジオ)第2回・第3回グランドチャンピオン。TBSラジオにて毎週金曜24:30から『空気階段の踊り場』パーソナリティをつとめている。YouTubeの公式チャンネル『空気階段チャンネル』にて、コントを配信中!

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