第3のメンバー(?)ふくちゃんも大人気! 東京03も激推しする次世代コント「ゾフィー」の野望

第3のメンバー(?)ふくちゃんも大人気! 東京03も激推しする次世代コント「ゾフィー」の野望

上田航平(左)とサイトウナオキ(右)

「ネタの状況設定が本当に面白い。宝物みたいな設定」。コントのトップランナー・東京03飯塚悟史がそう、絶賛したコンビ・ゾフィー。『キングオブコント2019』では5位に終わったが、腹話術人形ふくちゃんで強いインパクトを残した。今や「若手コント界のフィクサー」と噂される2人は何を狙う?

――腹話術人形のふくちゃんが人気ですね。

上田 ありがとうございます。今、愛着が半端ないです。家に置いてあって、相方より会ってますから。

サイトウ そりゃそうだろうよ。

――今年の単独を見に行ったら、ふくちゃんのコント、群を抜いてウケていたような。

上田 あれはえぐいウケ方でしたね。

サイトウ 自分で言うもんじゃないよ。あのネタできたの、単独より少し前なんです。

上田 そうだ。単独が5月で、2月ぐらいに設定を思いついたんです。でもちゃんと練習したほうが面白いと思ってすぐには出さず、まずはいい人形を探しました。でも腹話術人形のパンフレットを見たら、20万円ぐらいで値段高いし、結構笑いを取りに行ってる顔だったんですよ。あの会見の設定にはフラットな顔がいいということで、相方に探してくれと頼んだら……。

サイトウ メルカリにたまたま出てきたんです。見た瞬間、「これだ!」と。

上田 「この子は売れる」。

サイトウ 売ってくれた方によると、受注生産の一点もので出し物で2回ぐらい使っただけらしくて、「可愛がってください」という話でした。コントの小道具としては高価でリスク高かったです。でも、練習中からずっと面白かったもんね。

上田 いっこく堂さんのyou tube見て、独学で研究したんですよ。結局、口動かすのだけはうまくならなかった。

サイトウ あまりうまくなられてもね。独り立ちされたら困るんで(笑)。

――ライブでは、かなりの頻度でかけてませんでした?

上田 めちゃくちゃやりました。そもそも単独ではネタ時間が13分あったんです。賞レースは5分で一気には削れないから1分ずつ削って、12分、11分……。そうしたら8分から7分にした時、ウケが減ったんです。それからは7分50秒、7分40秒……と10秒ずつ刻んで、なんとか5分にしました。

――今、元の13分にできます?

上田 むしろ20分できます。最初はしゃべらないフクちゃんが途中からしゃべりだして、その後の展開もあるコントだったんで。

――第2弾も考えてるんですか。

上田 難しいのは、これから第2弾、第3弾と作っていくと、スター性がすごいんでいよいよ正式加入させないといけない(笑)。そのうちブルゾンちえみwithBみたいな……。

サイトウ ふくちゃんwithゾフィー(笑)。

上田 やりたいのはシチュエーションを面白くするコントなんで、第2弾はまた機会があれば、という感じですね。

――『キングオブコント2019』は5位に終わりました。どう受け止めてます?

上田 賞レースは流れもあるんで、それに乗り切れなったなと。でも見てた人が「あれでファイナルいかないのはおかしい」と言ってくれるのが追い風になっていて、ポジティブな効果が大きいような。

サイトウ めちゃめちゃウケたんで、よかったです。『令和元年度NHK新人お笑い大賞』も準優勝でしたけど、「なんで!?」という声ももらって、結果的に悪くはなかったなと思ってます。

――決勝に初進出した2年前は炎上しましたよね。

上田 あのショックはでかかったです……。ライブシーンではウケてて、決勝いったら、ウケないわ炎上するわで。俺らテレビでやれないネタが多いんですよ。マルチとか自殺とかバイク事故とか。

サイトウ 緊張と緩和がそっちに行きがちなんですよね。

『ゾフィー Official YouTube Channel』より

上田 そんな俺らにしてはポップでキャッチーなネタができたと喜んでた矢先、あの反応だったんで。「もう作れないじゃん! テレビ出れないじゃん!」でした。でも気にせずやってきて、今年のフクちゃんで反応よかったから、なんとかなりました。

――ポップな方向に軌道修正しなかったんですか?

上田 ポップに作ろうとすると、お客さん第一優先で自分の面白さを一回下げる感覚が強くて……。自分たちが「面白い!」というネタを、お客さんにも楽しんでもらおうという順序が正しいと思ったんですよね。だからポップな方向は捨てて、元に戻しました。

――『キングオブコント』の記録見ると、その前年まで3年連続で準決勝止まりだったんですね。結成が2014年……。ということは、その年に準決勝行ってるんですか?

上田 大したもんです(笑)。

サイトウ 自分で言わないんだよ。言ってもらうもんなんだよ。

――ちなみにゾフィーの前にくんでいたコンビでは、どこまでいったんですか?

サイトウ 俺はだいたい2回戦で終わってました。

上田 僕も、行って3回戦でした。

――なんで急に結果出たんでしょう?

サイトウ 相方は手ごたえないと思うんですけど、俺はありました。前のコンビでは2人ともネタが書けなくてエチュードで作ってたんですよ。それがゾフィーを組んだら、キレイな台本をいただいて、天才だと思いました。鳥肌立ったんです。

上田 僕の前のコンビは複雑に考えすぎて、お客さんに伝わらなかったんです。それが組み直したことで一回リセットして、シンプルなネタ――ちゃんとフリがあってヘンなこと言って、というネタを作ろうと。それで最初に作ったネタで準決勝行けたんです。

――どんなネタなんですか?

上田 2軍落ちそうな野球選手のところに子供が来て、「僕が手術受けたらホームラン打ってね」というやつです。よくある設定をただ逆にしただけなんですけど、分かりやすくて、面白かった。

サイトウ 最初に読んだ台本もそれでした。いまだに営業でやってます。ただ、たまに分からない台本があって、どういうことか聞いちゃうんですけど。

上田 お客さんはわかってるんですよ。でも何回かネタやって「なんでウケてるか分からない」って突然言い出す。それで説明すると……。

サイトウ 「なるほどね!」(笑)

上田 サイトウさんってツッコミじゃなくて、一般人の役割なんですよ。Mr.ビーンの横にいる人たちと同じ。全体の構造を理解する必要はない。

サイトウ うんうん……(頷いた後に)誰がエキストラだよ!

――上田さんがものすごい量のネタを書いているという噂を聞きまして。

上田 はい。1日に300とか。

サイトウ そんなワケないんだよ。

上田 アイディアはそれぐらい出してます。つまらないのも含めてですけど。とにかく量を出すやり方なんで。

――設定を一行で書くような?

上田 そうです。たとえば、「しゃべらないお医者さん」とか。面白いかどうかのジャッジはしないでバンバン書きます。それを1週間続けると、週末に1500できてるわけじゃないですか。そこから僕が『キングオブゾフィー』と呼ぶ作業で、エントリーした1500の中から面白そうなのにマルして、週間チャンピオンを決めます。残ったやつでさらに月間チャンピオンを決めて。

――『キングオブコント』というより『マイナビラフターナイト』のシステムですね。

上田 で、残るのは月に2〜3本ですかね。

――書く時間は決まってます?

上田 朝起きて1時間以内に喫茶店に行きます。そこでバンバンとエントリーして、午前中にはおしまい。村上春樹さんが午前中に小説を書くシステムを踏襲しました。もう習慣になって、やらないと気持ち悪くなるんです。きっと晩年も病室でやってるでしょうね(笑)。

サイトウ 僕はそこには関わってなくて。

上田 だから『キングオブコント』の視聴者と一緒で、残った数組しか見られないんです。激闘の準決勝を知らない。

――上田さんは昔から脚本を書くのが好きだったんですか? 演劇をやってたそうですが。

上田 好きでした。でも演劇をやってた時は、お客さんを満足させる意識は皆無でしたね。お芝居って何やってもいいじゃないですか。ウケなくても「別にコメディじゃないし」と言い訳できる環境に思いきり乗っかってました。

――脚本的には笑いをとる方向性だったんですか?

上田 いや、メッセージを伝えたかったんです。社会的不満に苛まれて人間が変わっていく様を、パワハラを題材にやってました。やって来ては部屋をめちゃくちゃにする上司がいて、それにおびえる会社員が俺なんです。そこで信頼できる先輩に相談したら、結局説教してきて、やはりパワハラが生まれる。そしてその先輩を僕が殺してしまって、死体を海に捨ててから覚醒するんですよ。顔を白塗りにして、なぜかチャイナドレスを着て、上司の家に殴り込みに行く……。だけど上司に返り討ちにあう芝居をやってました。

――ずいぶんと陰惨な……。チャイナドレスは笑いほしさで?

上田 違います! なんらかのメッセージあったはずなんですけど、思い出せません。ただ、それだからかこないだ映画の『ジョーカー』見てたら「俺だ!」と。

――確かに復讐心や白塗りの要素がかぶってますね。ちなみに劇団名は?

上田 「カルチャーズ」……(笑)。文化。日本を変えようとしてました。

――劇団をやってたのが、どうしてお笑いの道に?

上田 劇団が破綻して、借金も多少残って、こうやって朽ちていくんだと嘆いてた時、大学の先輩にお笑いをやらないかと誘われたんです。「もうどうでもいいや」と投げやりな気持ちで書いたコントが、『ラママ新人コント大会』で「面白いよ!」と言われて。そんな風に評価されたのが初めてで、さらにライブ出たらウケてで、それからハマりました。

――もともとお笑いは好きだったんですか?

上田 小学校の時、父親が別にお笑い好きでもないのに、「これはすごい。人生に必要だから見ておけ」って『ごっつええ感じ』を見せられたんです。ちょうど小学校1年生から6年生の間、日曜8時になると毎週がっつり見てました。

サイトウ 僕は『ボキャブラ天国』を見てて、あれは高校2年だったかな、レギュラー陣が故郷の青森にライブに来たんですよ。そこで見たジョーダンズさんがめちゃくちゃカッコよくて。スターだった三又さんが出てくるまで、相方の山崎さんがするつなぎのお喋りがすごい面白かったんです。それでお笑いをやりたいと思うようになって、その後、上京して……。

――お笑いをやるために。

サイトウ いや、それは女のケツを追いかけて来たんです。その子と結婚して「お笑いはできないな」とあきらめてたら、24歳で離婚することになりまして。そこで離婚もしたし、やりたいことをやろうと。

上田 「離婚もしたし」? そんな理由あるのか。

サイトウ そこからしばらく、芸人やるための資金と慰謝料と養育費を稼ぐため、バイトを3つかけ持ちしてたんですね。それで養成所に行こうとした時、バイトで知り合ったヤツがたまたま松竹の養成所を卒業して、組まない? と誘われてフリーで始めました。それが前の前のコンビですね。デビューしたのが27歳でした。

上田 前のコンビの時、それぞれ浅草の小さな劇場に出てたんで、交流があったんです。

――お互いどう評価してました?

上田 サイトウさんはぶん回してた印象です。かたっぱしからツッコんで。

サイトウ モテたかったんです。“できるツッコミ”がしたかったんですよね。

上田 できるツッコミかと思って、コンビ組んだら違ったんで……騙されました(笑)。

サイトウ 僕は、(上田さんは)ネタ書いてるし、うらやましいと思ってました。台本いっぱい持ってくるから、「やらないならほしいな」と。

上田 そういうイヤらしい目で見てたんだな……。

――上田さんが若手コント界のフィクサーになっていると聞いたんです。どんな活動をしてるんですか?

上田 「コント村」というユニットを作っています。ザ・マミィの林田くん、かが屋の加賀くん、ハナコの秋山くん。この4人でコントについて語るライブやってて、みんなで何かできないかという話になって。賞レースで優勝して、テレビに出て、ライブに人が来るという段階を踏むのがコントで成功する王道だと思うんですけど、今の時代、それ以外もあるんじゃないかと。それで4組で集まって、ゆくゆくは番組を……というのを進めてます。コント好きな人は創作意欲強いし、特に第7世代ってそれが顕著なんで。「村」は声かけて拡大していく予定です。

――上田さんが村長?

上田 村長です。かが屋やハナコがわーわー言うと、あおりを食らうかもしれないんで。僕が一番年上だし、元・鬼尖り人間だったんで、矢面に立ってぶつかっていこうと思ってます。というのも、みんなこれだけ作りたい気持ちがあるのに、あまり場がないというか……。もっとお金をもらってもいいんじゃないかと思うんですよね。コント作って収益生まれて生活できたら、ハッピーじゃないですか。

――まだ見返りが少ない?

上田 コントだけでメシを食えている人が少ない。漫才で賞レースの準決勝ぐらいに行けている人は、営業もあって食えていたりするんですよ。でもコントの準決勝レベルで食えている人は皆無で。格差があるんですよ。

 あと漫才の人って「優勝するぞー!」みたいなニンがあって、物語が生まれやすい。でもコントの人は思いがあっても、あまり口に出さない気がします。昔だったらそれ言うのはダサかったかもしれないですけど、それだとコントが沈んでいっちゃう。もうちょっと声あげてもいいのかなあと。ちょうど最近、『ゴッドタン』(テレビ東京系)でもお笑いについて語る企画があったみたいに、お客さんもお笑いの裏側がどうなってるか、知りたいじゃないですか。

――興味ありますねえ。

上田 NHKで『漫勉』って放送してましたよね。あれって何の知識もなくても、「この順番で描くんだ!」「このペン使うんだ?」という発見があって面白い。同じようにコントをどう作っているかを見せても、面白くなる気がするんですよね。説明してもウケは変わらないだろうし、面白さが深く伝わって、コント好きの需要が増えればいい、という考えですね。

――コント村に参加してほしい人はいます?

上田 いっぱいいます! 空気階段の(水川)かたまりくん、しずるの池田さん……。心の底からコントが好きな人を増やしていきたいです。

――サイトウさん、ギャグの「チェだぜ!」を猛プッシュしてますね。僕もたまにLINEで使っているんですけど。

サイトウ ありがとうございます!

上田 すいません。その話はNGなんで……。

サイトウ NGではないから!

――この話題を掘っていいですか?

サイトウ 掘る?

上田 いつ思いついたとか、どんな思いがあるとかだよ。

サイトウ いやー、そういうのはそんなに……。

上田 大体、こいつがちゃんと使えてないんですよ! 「チェだぜ!」を言えるように、いろんな人がふってくれるんですよ。『ネタパレ』(フジテレビ)の楽屋挨拶でマッスー(NEWSの増田貴久)が「上田くん、よろしくねー」って挨拶の後、サイトウを無視したんです。絶好の「チェだぜ!」タイミングじゃないですか? それを「ちょっと、マッスー!」って。

サイトウ そうなんですよね……。

上田 あと、新幹線に乗り遅れた時に言った一言は「ガックリだ」でした。なぜか新しいやつが出てきた。

サイトウ まだタイミングがよく分かってないんです。でもあきらめてません! 1年以内に流行らせて、東京五輪で誰かに「メダル取れなくて、チェだぜ!」とか言わせたい。

上田 僕が1年以内に根絶やしにします。

――ところでサイトウさんは居酒屋勤務も有名ですが、かけ持ちで忙しくないですか?

サイトウ 法人にしてるんで、今はオーナーへとシフトチェンジしました。従業員に任せて、現場には立ってないんですよ。今はたまに季節ごとのメニューを提案するような状態で。

上田 何回か食中毒出したんだよね?

サイトウ 出してねーよ! 本当にやめろ。鮮魚扱ってるんだ。

上田 お願いです。これだけは書いておいてください。

サイトウ 食中毒出したら、それを告知しなくちゃいけないの。調べれば必ず出てくる。だから大体そういう店って、名前を変えるんだけど。

上田 それで名前変えたんだ?

サイトウ 変えてないから!

上田 店で後輩に働いてもらって、育てていこうという気はない?

サイトウ 育てるんじゃなくて、芸人を辞めた人を使いたいんだよね。芸人やりながら居酒屋を本気になられても……というのはあるんじゃん。

上田 おまえがまさにそれだよ!! 誰が言ってるんだ!

サイトウ いやいや、俺は出世することで現場の仕事を減らす、という絵を描いてきたじゃん。

上田 だから、そういう風に後進を育てればいいってことでしょ。

サイトウ ああ、それはそうだね。

――店のオーナーやってる芸人さんはいますけど、ツイッターで告知したり公言する人は珍しいですよね。

上田 あれがステマみたいになっている。

サイトウ ステマって何?

上田 …………。知らなくて大丈夫!

(取材・文=鈴木工/撮影=石田寛)

 

●ゾフィー(ぞふぃー)
2014年結成。上田航平とサイトウナオキによるお笑いコンビ。グレープカンパニーに所属する。結成当初はフリーで活動して、17年に「キングオブコント」の決勝へ進出。その後、グレープカンパニーの所属となる。「キングオブコント2019」でも再び決勝へ進出したほか、「NHK新人お笑い大賞2019」では準優勝を飾るなど、一挙に知名度が上がった。

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