【K-POPベスト10-2019】キーワードは「ガールクラッシュ」トップはやっぱりBLACKPINKか?

【K-POPベスト10-2019】キーワードは「ガールクラッシュ」トップはやっぱりBLACKPINKか?

BLACKPINK

 2019年は日韓関係に緊張が走った年ではあったが、カルチャー面はさにあらず……!? 年末のNHK紅白歌合戦にもTWICEが出演するなど、日本でも相変わらず人気コンテンツとなっている。本稿では、K-POPに造詣が深くタッグを組んでの関連イベントも開催している作家のカルロス矢吹とK-POP番長こと音楽ライターのまつもとたくおが、昨年のK-POPベスト10を選出しました!

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矢吹:毎年末我々2人で、インターネットチャンネル「DOMMUNE」にてその年のK-POPを振り返る企画をやってきました。ところが今年は、スタジオの移転もあってDOMMUNEではやれず。ただ、せっかく毎年やってきたことなので、2019年もどんな形でもいいからどこかでやりたいな〜と思っていたところ、『日刊サイゾー』から“ウチでどうですか?”と声をかけていただき、こうして馳せ参じた次第です。

まつもと:ありがたいですね。

矢吹:本当に。というわけで、今年もまつもとさんには2019年のK-POPベスト10曲を選出していただきました。一般的には、BTSやBLACKPINKの世界的大ブレイクに始まり絶好調だったK-POPですが、徴用工問題を発端とした日韓両政府の衝突に、相次ぐ韓流スターの自殺等、良くも悪くも“K”の話題には事欠かない1年ではありましたね。

まつもと:自分で言うのもなんですけど、20年近くK-POPライターをやってきて、今年は一番忙しかったですね。日韓問題というのは根深くありましたけど、仕事的には全然影響が無かったです。K-POPは世界的に盛り上がっていて、それは日本も同様で。勢いは衰える気配がありませんね。

矢吹:では、まつもとさん選出のTOP10を見ていきたいんですが。その前に、簡単に今年の総括をお願いします。

まつもと:3つほど大きな流れがありまして、まずは海外進出の充実。矢吹さんとこれまで話してきた通り、韓国は国土が狭いから大きな成功を手に入れるには外に出ないといけない、特にアメリカに向けてやってきた。その流れが昔からずっとあった上で数年前からBTSが出て、2019年はBLACKPINKが出てきた。これが一つ目。

 一方で、完璧な商品を作ることをずっと目指してきたものの、生身の人間ゆえにその息苦しさに耐えられなかったのか、芸能スキャンダルが多く出た年でもありました。BIGBANGの元メンバー・V.Iの売春斡旋疑惑や、K-POPスターの相次ぐ自殺。いつでもどこでも華やかに見せるということに疲れ、反動でスキャンダラスなものが出てくる。そういう負の部分も目立った年だったと思います。

 3つ目は、音楽面では良い曲が多かっただけでなく、ここ数年ずっと韓国内のインディシーンを賑わせていたシティポップ、これがメジャーにまで降りてきた。今年はそれが明確になった年でした。

 総括として言える大きな流れはこの3つでしょうか。

日本のシティポップがK-POPに与えた影響

矢吹:なるほど。我々が毎年話してたことが、わかりやすい形で表に出てきた年でしたね。では、TOP10を見ていきましょうか。

10位 Bronze/One More Time

矢吹:まさにJAPANESE CITY POPオマージュですね。

まつもと:韓国HIP HOP/R&Bクルー〈8BALL TOWN〉のプロデューサー、Bronzeの初アルバムに収録されている曲です。アートワークは永井博。大瀧詠一さんのアルバムジャケットなんかを手掛けているイラストレーターで、日本のシティポップを再現するにあたって“ジャケットもそうしたい”ということで、オファーしたようです。シティポップブームも行くところまで行ったということを表す一曲ですね。

矢吹:まつもとさんは何故韓国でシティポップがここまで流行したと考えていますか?

まつもと:韓国でシティポップを流行らせた中心人物は、多くの方が既に指摘されている通りNight Tempoだと思います。彼の活動を見てると、小さい頃に自分が聴いていた音楽へのリスペクトが強いですよね。昔の日本のアニメとかのエンディング、ああいうので流れていた楽曲の多くが16ビートの刻みやテンションコード、セブンスコードを多用した爽やか系のアレンジで、そこにリズミカルで美しいメロディが乗っかっていく。こうしたサウンドが原体験になり、大人になった今、それを再現したい、コレクトしたいと思う層が増えてきたんだと推測しています。

矢吹:やはり1998年の日本文化解禁が大きかったんでしょうか?

まつもと:確かにそれはありますね。特に韓国の場合は、アニメの数秒間を切り取ってループするMVが増えていますし、シングルジャケットにもクリィミーマミ系のテイストのアニメ画を使っているアーティストが山ほどあるんです。日本のマンガやアニメから出発してシティポップにたどり着いた人が多かったんだと思います。

矢吹:なるほど。とまあこんな感じで、10曲見ていきたいと思います。続いて9位。

9位 私のタイプ/ミユ(竹内美宥)&ユン・ジョンシン

まつもと:これなんかも、今年を象徴する楽曲の一つだと思うんです。竹内美宥はAKB48の元メンバー。2018年6月15日から8月31日まで放送された日韓オーディション番組『PRODUCE 48』に練習生として参加。最終選考まで残ったんですけど、最終順位17位。そこから奮起して、実力派アーティストのユン・ジョンシンが所属する韓国の事務所と契約を交わし、満を持してリリースしたのが「私のタイプ」です。

矢吹:これもJAPANESE CITY POPオマージュですよね、本当にメジャーシーンにこのブームが降りてきたんだな、ということがよくわかる1曲です。

まつもと:ユン・ジョンシンがプロデュースしているんですけれども、彼らが所属しているMYSTICエンターテインメントという事務所は非常に楽曲志向が強いところで、そこが彼女のために選んだのがシティポップだった。そして同じ映像を何度もリピートするMVも、さきほどのアニメの話と同じ発想で作られている。オーディション番組によって日本の才能が韓国に流れている一方で、シティポップがそこにリンクしているのは非常に面白いなと思いながら見ています。ただ、ご存知の通り『PRODUCE 48』という番組は投票数を不正に操作していたことが明るみになりました。なので、彼女が本当にちゃんと投票で落ちたのかどうかは正直よくわからないんですよね。

矢吹:この騒動で、韓国のオーディション番組ブームは下降すると思いますか?

まつもと:該当する番組や、そこから出てきたグループが叩かれているんですけど、だからといってオーディション番組自体は消えないと思うんですよね。それで沢山のスターが生まれて、シーンが活性化しているのは事実ですし。韓国って一時は騒いでも、ある程度経ったらさっと冷めてしまう。オーディション番組もまた出てくると思います。

矢吹:では、日本人が韓国のオーディション番組を受けに行くという流れも途切れなさそうですか?

まつもと:そうですね、魅力的なオーディション番組がある以上、受けに行く傾向は消えないでしょうね。

8位 Kisum(キソム)/酒よ

矢吹:2014年デビューのラッパー、キソム。彼女は生き残りましたねー。

まつもと:本格派じゃないし少し安っぽいけど、突き抜けた曲をやりますよね。この曲はただの酔っ払いの歌で、“一晩飲んで記憶なくて、こんな時間だけどまた飲んじゃう”というただそれだけ(笑)。メッセージ性とかは無いんですけど、とにかく陽気で非常に韓国っぽいですよね。

矢吹:日本だとChelmicoなんかが同じスタンスですかね。

まつもと:ああ、似ていますね、確かに。実は韓国のヒップホップでこういうポジションの人があまりいないんです。アイドル的なオーラと芸能界のノリがあるタイプというか。大半の評論家は年間ベストに彼女の曲を選ばないと思います。音楽的に尖っているわけでもないし。けれどもヒップホップが如何に歌謡界に根付いて大衆化しているかという証明の一つであることは間違いない。もの凄くレアな存在だと思います。

7位 アクトゥン/少し待って

まつもと:これは個人的に今年よく聴いた曲でして、気取らない、自然体の演奏が気に入ってます。ベテランに近い人達なんですけど、アコースティックギター、ベース、ドラムというシンプルな構成に加えて甘い歌声。ダンスポップやヒップホップが主流になった韓国でも、こうしたオーソドックスなサウンドがいまだに求められているんですよね。彼らの曲を聴くと、どんな時代になっても変わらない韓国人好みの情感があるということを痛感するんです。

矢吹:ヒップホップが隆盛を極めても、ジェイムス・テイラーみたいな音楽をやる人が出てくるアメリカなんかも一緒ですよね。

まつもと:同感です。ただ、流行と無縁だし、派手さも無いので、この手の音がスルーされがちなんですけど、ちゃんと拾ってあげたいなと思って選出しました。

6位 ITZY/違う違う

矢吹:さっきと一転して派手な楽曲が来ましたね。TWICEの妹分としてデビューしたガールズグループです。

まつもと:2019年のK-POPシーンをリードした“ガールクラッシュ(女性が憧れる女性)”の代表格ですよね。“私は私、他と比べないで”というメッセージを同性の女の子に向けて延々と歌っている。このデビュー曲に続いて出したシングルも言っていることは全く同じです。日本デビューはまだなんですが、この間日本の10代向けの女性誌で特集が組まれていたので、間も無く進出するんじゃないでしょうか。最近のK-POPは外国の作曲家に依頼することが多いんですけど、この曲は国内の中堅どころの作曲家チームが制作しています。こうやって後続グループがどんどん出ているので、日本でのK-POP人気というのは今後も衰えないと思いますね。

5位 キム・スヨン/空にしようと思います

まつもと:7位で選出したアクトゥンと一緒で、これもアコースティック系です。インディーズの大手事務所に移籍後の第一弾で、キュートなルックスとは裏腹の渋いサウンドメイクと深みのある落ち着いたボーカルが魅力です。韓国のジョニ・ミッチェルと言ってもいいかもしれません。昭和のフォークにありがちなジャカジャカとアコギでコードを鳴らすタイプが僕は苦手で、カッティングやピッキングに工夫のあるミュージシャンが好きなんです。アコギでもエレキと同じようなアプローチで弾くタイプといったらいいんでしょうか、彼女なんかはまさにそうですよね。

矢吹:ジョニ・ミッチェルって、実は欧米ではギタリストとしても非常に評価が高いアーティストですからね。

まつもと:ジョニ・ミッチェルはジャズの和音とかを取り入れて、既定路線に留まらずにクリエイトしようという心意気が凄くあった人で、だから一時代を築いたし。そういうパワーっていうのは、こういう静かな音でも感じ取れるんですよね。

4位 Red Velvet/Zimzalabim

矢吹:今年に限らず、ここ数年のアイコンでもありますね。

まつもと:SMエンターテインメントという、韓国で一番大きな事務所の女性グループです。売れてるのに、現状に甘んじないでどんどん攻めた楽曲を出すんですよね。これは彼女達の楽曲の中では比較的売れなかった方なんですけど、海外の作曲家チームを韓国に呼んで合宿して作らせて、良かった部分をつなぎ合わせる。それがSMエンターテインメントの最近のやり方です。そのせいで色んなジャンルの音、ダブラまでこの曲には入っていて、結果どの国の音楽なのかわからないような音になっています。

矢吹:この楽曲を、トップ張ってるアイドルグループが出せる、というのが凄いですね。

まつもと:彼女たちは制作に金と時間をかける上に、サウンドカラーを次々と変えてくるんですよ。歌詞やダンスに強いメッセージがある方ではないんですけど、“ガールクラッシュ”の要素は高い。だから日本で男の子が思ったよりも騒いでいないのは、“なるほどな”という感じですね。男に媚びていない。

矢吹:そこは最近のK-POPの一番の変化ですよね。

3位 So! YoON!/A/DC=(エースラッシュディーシーイコール)

まつもと:セソニョンというトリオのバンドがあって、そこのリーダーでギタリストの女の子の初ソロアルバムからの1曲です。セソニョンはブルージーなロックをやっていましたが、このアルバムはギタリストとしての役割を離れて実験音楽のような、バンドで出来ない音を鳴らしています。一曲一曲全然違うカラーで、全編を通して“何か新しいことをやろう”という意気込みを感じさせるのがいいですね。

矢吹:毎年まつもとさんのランキングを見ていますけど、韓国は割とこういう実験音楽をやっている人も多いんですよね。本国ではどの程度話題になったのでしょか?

まつもと:それがまったく反応ゼロ(笑)。彼女はこのアルバムを出してすぐにバンド活動を始めてしまったので、ソロ作は本当に「出しただけ」になってしまいました。フレンチポップやエレクトロニカなどの要素を取り入れた新しいタイプのミクスチャーロックだっただけに残念です。とにかく20歳そこそこでこの完成度の高さは驚きますね。

2位 Crush/NAPPA

まつもと:韓国R&Bの最高峰です。約6年間在籍していた所属事務所を離れ、そのわずか1カ月後にPSYが立ち上げたP NATIONという事務所に移籍。それから発表された一曲です。

矢吹:PSYって今は事務所の代表もやっているんですね。移籍の理由は何か発表されていますか?

まつもと:多分、自由に音楽制作をやらせてくれるからだと思います。マーヴィン・ゲイが「セクシュアル・ヒーリング」でリズムマシンやシンセを使ってソウルの新しい潮流を作ったように、Crushも同様のアプローチで韓国R&Bの新しい流れを作りましたね。力の抜けた歌い方やMVも、トラックとよく合っている。こういう玄人好みの楽曲が、ちゃんとヒットチャートのトップ10に入っていて、彼自身もメジャーの立ち位置にいるんですよね。R&Bがどういう風に韓国に溶け込んでいるか、そこが表れていて面白いと思います。

1位 BLACKPINK/Kill This Love

矢吹:1位はやはりこの人達ですか。今年は日本だけでなく世界中で大活躍でしたね。文句なしでしょう。

まつもと:トラックだけでなく歌い方も海外、特にアメリカ受けするだろうなという仕上がりですよね。曲を作ってるのはTEDDYという韓国人なんですけど、20年以上ずっと海外で認められるダンスミュージックを追求してきた人です。これだけ世界で売れて、嬉しいだろうなあ、と。

矢吹:今年のテーマのひとつ、“ガールクラッシュ”の象徴的な存在でしたね。

まつもと:最初の総括で話した“海外進出の充実”。その象徴もBLACKPINKだと思います。今ワールドツアーをやっていて、先日も東京ドームでコンサートを開催したんですが、明らかにファン層が変わってきています。“K-POPアーティスト”ではなく、“外タレ”を見にきたティーンエイジャーが騒いでる。今までのK-POPブームとは無縁の新たな層が出てきた、そのきっかけを作ったのがBLACKPINKだと言えるでしょう。

矢吹:こんな感じでまつもとさん選出の2019年K-POPトップ10を見ていきましたけど、最後に希望込みで大丈夫ですので、2020年の予測を聞かせていただけますか。

まつもと:9位で紹介した竹内美宥の様に、それなりに実績のある日本人アーティストが、新たな展開を求めて韓国へ行く、この傾向が加速していって欲しいですね。そして韓国のプロデューサーと組んで、知られざる一面を見せる。言葉は陳腐ですけど、それこそが“日韓の理想的なタッグ”なんじゃないかな、と。オーディション番組の投票不正操作問題で活動が止まってしまいましたけど、IZ*ONEもそうでしたからね。

矢吹:例えば、シティポップから影響を受けた楽曲がBLACKPINKの新曲になる可能性だってあるわけですからね。

まつもと:そういう日韓の音楽的交流って、今はなんとなく進んでいる感じですけど、2020年にはもう少し整理されて、上手い具合のバランスになると良いなと思いますね。

矢吹:本当にそうですね。ではそうなることを期待して、2020年もK-POPシーンを注視して行きましょう。まつもとさん、ありがとうございました!

まつもと:こちらこそ、ありがとうございました!

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カルロス矢吹
作家、1985年宮崎県生まれ。音楽など世界各地のポップカルチャーを中心に執筆を続け、K-POP番長まつもとたくおと一緒に定期的にK-POPイベントを開催している。著書に「北朝鮮ポップスの世界」(花伝社、英起との共著)「アフター1964東京オリンピック」(サイゾー)など多数。

まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。『ミュージック・マガジン』や『ジャズ批評』など専門誌を中心に寄稿。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著もいくつか。LOVE FM『Kore“an”Night』にレギュラーで出演中。

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