地獄のような空気が漂う『水曜日のダウソタウソ』に見る、藤井健太郎「地獄の軍団」の真髄

地獄のような空気が漂う『水曜日のダウソタウソ』に見る、藤井健太郎「地獄の軍団」の真髄

『水曜日のダウンタウン』TBSテレビ

「若林は、歌ヘタくそやもんね」
「そうなんですよ、すごい透明感あるなと思って。隣に“奇跡の歌声”いますからね」

 そうオードリー若林正恭が振ると、すかさずハリセンボン近藤春菜がお決まりのフレーズを言う。

「いや、スーザン・ボイルじゃねーわ!」

 さらに、宮川大輔が「あれ、ギターは?」と追随。

「いや、サンボマスターでもねーわ!」

 そのやりとりに「あははは」と笑う浜田雅功。あえてキョトン顔をする松本人志。そして、松本が口を開く。

「浜田のそっくりさんが、浜田の嫁に電話するとかはどう? 『こいつ、女いるで』って」
「やめろ! そこは……そこはアカン言うてるやろ!」

 すごむ浜田に、松本が「よかった、この距離で」と、大げさにおびえる。その姿に、浜田が「ニャハハハ」と笑う。

 文字で見ると、よく見る鉄板のやりとりだ。

 だが、実際の映像では、猛烈に違和感がある。“間”がなんだかおかしく、流れが悪いから、地獄のような空気が漂っている。

 なぜなら、それを演じているのがすべて、モノマネ芸人だからだ。

 これは、9月21日放送の『水曜日のダウソタウソ』(TBS系)の一幕。『水曜日のダウンタウン』ではない。「ダウソタウソ」だ。ラテ欄には「今日は『水曜日のダウンタウン』は休止で……『水曜日のダウソタウソ』をお送りします」とある。番組名が変わっているので、録画機によっては毎週録画の設定も解除されてしまう。総合演出・藤井健太郎率いる「地獄の軍団」(番組で、出演者らにそう呼ばれている)は、視聴者を、いや録画機までも混乱に陥れる“いたずら”を仕掛けてきたのだ。

 司会はもちろん、ダウンタウンのそっくりさんのダウソタウソ。プレゼンターには、宮川大輔のそっくりさんの宮川大好。パネラーには、若林や近藤、キャイ〜ンウド鈴木、そして松田聖子のそっくりさんが並ぶ。オープニング曲なども、なんだかいつもとテンポや曲調がアレンジされている(ちなみに音楽担当はPUNPEE「パンピー」だが、今回のエンドロールではちゃんと「パソピー」とクレジットされていた。細かい!)。番組のロゴも、ちょっとだけ変わっている。

 番組全体に、絶妙なパチもん感が漂っている。喩えるなら、中国のディズニーランドそっくりなテーマパーク「石景山遊楽園」を見ているときの居心地の悪さだ」

 番組の流れは“本家”と同じ。プレゼンターがある“説”を提唱し、それをVTRで検証する。

 この日、宮川大好が提唱した説は「水曜日のダウンタウン モノマネ芸人に頼りすぎ説」である。

 そこから、検証VTRとして、「有名人の身内 気をつけないと悪いモノマネ芸人に オレオレ詐欺でだまされる説」「野球モノマネ芸人 リアルにバッティングうまい説」「歌うま外国人なら日本人アーティストのモノマネもうまい説」、そして謎の感動を呼ぶ名作「ものまねショーに本人がそっくりさんとして出ても、意外と気づかれない説」など、過去に『水曜日のダウンタウン』でモノマネ芸人が登場した説を振り返っていく。

 もう、お気づきだろう。
 
 これは、説立証に見せかけた『水曜日のダウンタウン』の総集編である。

 番組改編期などには、多くのバラエティ番組が総集編を放送する。出演者やスタッフを休ませる、という意味合いもあるのだろう。だから、普通の番組であれば、ただ過去のVTRを再編集して流すだけだ。気の利いた番組でも、それに出演者のコメントを挟んだり、後日談を挿入したりする程度だろう。

 総集編である以上、その番組の中で面白かったシーンがまとめられているので、一定の面白さは保証される。視聴者としても、見逃した面白いシーンを見られるというメリットがあるから、そういうもんだと思って別に文句は言わない。

 だが、『水曜日のダウンタウン』は、ただの総集編で終わらせようとはしないのだ。それは、今回に限らない。

 たとえば、同局の人気番組『ランク王国』とコラボレーションし、ダウンタウンがパジャマ姿で『ランク王国』の看板キャラ「ラルフ」と“共演”。お決まりのフレーズで、VTRフリなどを行ったりもした(ちなみに番組では、それ以前に「ランク王国のテーマどうでもよすぎる説」を提唱し、番組をイジっている)。

 また、別の回では「パー子の笑い声を足したらVTR3割増しで面白くなる説」を提唱。
「ロメロスペシャル相手の協力なくして成立しない説」や「大友康平普通にも歌える説」などの、過去の名作VTRに林家パー子のあの笑い声を足すという暴挙。途中から、その笑い声にもある仕掛けがあったことが明かされるという遊びも。確かに、3割増しに、というか別の意味でも面白いVTRに仕上がっていた。

 前述のように、総集編なんて手を抜こうと思えばいくらでも手を抜ける。だが、逆に工夫をしようと思えばいくらでも工夫できてしまうものだ。でも、そんな工夫、普通の番組はやらない。やらなくてもいいことだからだ。けれど、普通はやらないからこそ、それをやったら目立つ。ほかの番組との差別化ができる。

 思えば『水曜日のダウンタウン』は、いつもそういったこだわりが細部まで行き届いている番組だ。隙あらば、ふざけてやろう。それも、ほかの番組とは違う切り口で、と。

 それこそが、「地獄の軍団」と呼ばれる藤井健太郎チームの真髄だ。

 そうした番組の精神が総集編にも、いや総集編だからこそ如実に表れているのだ。
(文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/)

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