もうゴリ押しなんて言わせない!? 『女囚セブン』で剛力彩芽が獲得した、新たな“ハマり役”

もうゴリ押しなんて言わせない!? 『女囚セブン』で剛力彩芽が獲得した、新たな“ハマり役”

剛力彩芽

『女囚セブン』(テレビ朝日系)に出演する剛力彩芽が神々しい。

 本作は、金曜23時15分から放送されている、女性刑務所を舞台にしたコメディタッチのドラマ。
 
 京都で働く芸鼓の神渡琴音(剛力彩芽)は、先輩の雪乃(寺川里奈)を殺害した罪で逮捕される。しかし、それは冤罪だった。自らの汚名を晴らし、真犯人を突き止めるために自ら進んで女子刑務所に入る琴音。

 雪乃は法務大臣の内藤裕次郎(高嶋政伸)の秘書・本郷(寿大聡)と付き合っており、彼らの悪事の数々を“黒革の手帳”に記録していた。

 内藤は“黒革の手帳”を奪うため、看守たちに操られた女囚を使って琴音を追い詰めようとするが、琴音は女囚たちを仲間につけて、内藤を追い詰めていく。

 脚本は西荻弓絵。『ケイゾク』や『SPEC』(ともにTBS系)といった堤幸彦演出のカルトミステリードラマで知られているが、近年のヒット作といえば、『女囚セブン』と同じ金曜ナイトドラマ枠で制作された政治コメディドラマ『民王』だろう。

『民王』は、笑いの中に政治ネタを盛り込んでいく手腕が実に巧みだったが、本作もコミカルな描写の中にゲス不倫、老人介護、待機児童、政治家の汚職などといった時事ネタが盛り込まれており、真実を隠ぺいしようとする権力に立ち向かう社会派ドラマとなっている。

 そんなコメディだか、シリアスだかわからない人を食った世界観と、剛力のたたずまいは、実に相性がいい。

 剛力が演じる琴音は寡黙で無表情のため、何を考えているかわからないミステリアスな芸妓だ。しかし、女囚が仕掛けてくる食事にゴキブリを入れるといったイジメを、鋭い勘と鍛え抜かれた体術で難なくかわしていく。

 毎回の見せ場は、安達祐実や山口紗弥加といった実力派女優が演じる女囚たちとの議論対決だ。琴音は京ことばでゆったりとしゃべりながら相手の心の傷をえぐり出していき、精神的に追い込んだ後、「罪は犯すやつが悪いんやない。犯させる奴が悪いんどす」と言って、女囚たちを救済していく。

 普通ならあり得ない、荒唐無稽なヒロインである。

 しかし、剛力が演じると、妙な実在感が生まれる。

 雑誌「Seventeen」(集英社)の専属モデルとして人気だった剛力彩芽は、 月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)に出演以降、剛力という珍しい名字とショートカットの端正な顔立ちが注目され、女優として活躍するようになった。しかし、出演作が途切れることなく続いているため、ネットでは「ゴリ押しだ」というアンチの声が目立つ。

 剛力の所属するオスカープロモーションは、所属女優を途切れることなく新作ドラマにブッキングする。同じ事務所の武井咲にも同じ戦略がとられているが、人気商売であるため早いうちに顔を売ると同時に、場数をこなすことで成長させたいという意図はよくわかる。

 なんでも演じてきた雑食性が、結果的に今の武井と剛力の女優としてのタフさを作り出しているのは紛れもない事実だが、彼女らの出演作は玉石混交で、本人に合っていないものも多い。 

 特に原作モノの場合は(原作の)イメージと違うという反発も多く、もう少し丁寧に選べばいいのにと、昔から思っていた。

 先輩の米倉涼子を筆頭に、オスカーの女優はスタイルのいい美女が多い。

 彼女たちのような美女タイプはモデルやグラビア、あるいは短時間のCMなら相性がいいのだが、日常生活に根差した長尺のテレビドラマにおいては起用がとても難しい。

 そのまま登場させると、顔が小さく、等身の高い美人である彼女たちは違和感が強すぎるのだ。

 そのため違和感のない役というと、現実にはありえないようなゴージャスなメロドラマのヒロインになるか、荒唐無稽なスーパーヒロインを演じるしかない。

 先輩の米倉も最初は女優としてうまくいかなかったが、『ドクターX〜外科医・大門未知子』(テレビ朝日系)のようなスーパーヒロインを演じることで活路を見いだした。

 では、剛力はどうか?
 
 なかなかハマり役がなかった剛力だが、少し風向きが変わってきたのは、前作『レンタルの恋』(TBS系)だ。

 剛力は、相手が望む理想の彼女を演じるレンタル彼女・高杉レミを演じた。

 毎回、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の初号機やカブトムシのコスプレをするシーンがあるコメディ色の強い作品だったが、本作でもミステリアスで神秘的な美女を演じていた。

『レンタルの恋』以降、剛力=ゴリ押しというイメージは消えつつあり、評価も高まっている。
 
 面白いのは、コミカルな役柄を演じることで、剛力の持つ圧倒的な造形の美しさもまた際立つことだ。

 武井も同じようにコミカルとシリアスを横断することで評価されているが、今の剛力も同じ道を歩みだしている。その成果が『女囚セブン』の琴音だろう。

 コミカルな芝居で安心させてから、圧倒的な美しさを見せつける。

 緩いコメディのように見えて、実は社会派ドラマの『女囚セブン』と同様、剛力もまた、コミカルとシリアスを横断することで、新たなハマり役を獲得したのだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

関連記事(外部サイト)