スポーツ番組にもユルさを! さまぁ〜ず『さまスポ』に学ぶ、スポーツの多様性

スポーツ番組にもユルさを! さまぁ〜ず『さまスポ』に学ぶ、スポーツの多様性

『さまスポ』テレビ東京

 これからの時代、スポーツにも「ユルさ」が必要……そんなことを考えさせられる事象が、ここのところ多い。

 象徴的だったのは、スポーツ庁が示した「スポーツが嫌いな中学生を現在の半分に減らす」という目標設定に、各方面から反発の声が上がったこと。『久保みねヒャダ こじらせナイト』(フジテレビ系)で「体育への恨みつらみ川柳」なるコーナーを持つ久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダインがその急先鋒だ。

 そりゃあ反発するよ、と思う。そもそもスポーツ庁のいう「スポーツ」は体育の延長線上でしかなく、あまりに十把一絡げ。スポーツには<「する」スポーツ>もあれば<「見る」スポーツ>も<「語る」スポーツ>も、いろいろあるはずなのだから。その懐の深さこそがスポーツの魅力なのだ。

筆者個人としては熱闘や熱血も大好物なわけだが、別軸から攻める「ユルいスポーツ番組」が増えると、スポーツの楽しみ方はもっと柔軟に、多様性が出てくると思う。

 そこでオススメしたいのが、テレビ東京系で4月から始まった『さまスポ』(毎週土曜夕方6時〜)。さまぁ〜ず初のスポーツ番組だ。

 さまぁ〜ずの2人がさまざまなスポーツに体当たりで挑戦し、その魅力を学んでいく、というコンセプト。ただ、「体当たり」といっても、そこはやはりさまぁ〜ず。ある意味、「熱血」とか「精神論」といったものと対極に存在しそうな2人を起用したところに、この番組の意義がある。一歩間違うとグダグダになりそうな……それでいてなぜか心地いい、さまぁ〜ずの世界観がスポーツを題材にしても成り立っているのだ。

 お笑い芸人がスポーツ番組を持つ、というのはもはや見慣れた光景。ただ、その多くは芸人としてのトークスキルやまわしの技術を生かして、スタジオでアスリートの素を引き出す、という企画が多かった。言うなれば、バラエティのフォーマットの中でスポーツやアスリートを扱う、というものだ。

 一方の『さまスポ』は、あくまでも“スポーツ番組”を標榜。スタジオ収録ではなく、各競技の現場に出向き、アスリートの「技」や「身体」にスポットを当てていく。

 実はテレビ東京、今もっともスポーツに力を入れている民放局、といっても過言ではない。先月末から今月頭にかけては「世界卓球×全仏テニス」の二大世界大会を生放送。卓球では、テレビ東京が今年放送した全番組の中で最高視聴率となる13.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、5月29日から6月4日のゴールデンタイムの週間平均視聴率は8.6%を記録。1964年の開局以来、初の民放3位に輝いたことがニュースとなった。

 ある意味、スポーツに社運を懸けているテレビ東京だからこそ、『さまスポ』におけるアスリートのキャスティングに妥協がないのも好印象だ。ここまで登場したのは、卓球・リオ五輪銀メダリストの水谷隼。レスリング・リオ五輪金メダリストの登坂絵莉と土性沙羅。プロバスケットボールBリーグのアルバルク東京。野球界のレジェンド・山本昌。プロボクシング・ロンドン五輪銅メダリストの清水聡……この豪華一流アスリートたちの「技」が見られるのだから、それだけでも十分楽しめる。

 番組の製作総指揮を務めるのは、『モヤモヤさまぁ〜ず2』でもさまぁ〜ずとコンビを組む伊藤隆行。その伊藤が「ザテレビジョン」(KADOKAWA)のインタビューで、こんな言葉を述べていた。

《僕は、これからのテレビは『素直』がキーワードだと思っていて。素直に面白い、素直にすごい、というストレートな感性で番組を作っていかないと。今のテレビって、勝手にいろんな心配をしてヤスリで削っていっちゃうんですよ。万人に受けるように、どんどんおとなしい番組になっちゃう。だからそのための『勇気』も必要かもしれない。テレビに必要なのは『素直』と『勇気』ですね》

『さまスポ』も、まさに「素直」を軸にした番組。アスリートの技と身体を「素直」に訴求しているからこそ、さまぁ〜ずのリアクションも生きてくるわけだ。

 むしろ、今以上にアスリートや競技の持つ魅力だけで勝負してほしいほど。ボクシング回では、パンチがヒットするタイミングで“当たる音”を後から加えていたのは明らかだったが、そういった編集すら不要だと思う。その点は、もっともっと勇気を持った編集を目指してほしい。

 というわけで、いま、スポーツ庁の方々に見てほしいのが『さまスポ』だ。なんなら、鈴木大地スポーツ庁長官のゲスト回なんてどうだろう。あえて今、バサロ泳法を学ぶさまぁ〜ず、ちょっと面白いと思うのだが。
(文=オグマナオト)

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