いよいよ最終回! 宮脇咲良の敗北と、AKB48が探し求めた“アツさ”の先『豆腐プロレス』

いよいよ最終回! 宮脇咲良の敗北と、AKB48が探し求めた“アツさ”の先『豆腐プロレス』

テレビ朝日系『豆腐プロレス』番組サイトより

 今回が最終回となる『豆腐プロレス』(テレビ朝日系)。前回から試合が続いているので軽くおさらいすると、劇中ではただいま、主人公のチェリー宮脇(HKT48宮脇咲良)と、WIPのスター選手・ハリウッドJURINA(SKE48松井珠理奈)による「OVER THE TOP」決勝戦が行われている。仲間からの寄せ書きの入ったマントをもらい決勝のリングに上がったチェリー宮脇だが、極度の緊張でなかなか実力を発揮できない。WIPの矢崎英一郎(渡辺いっけい)から「チェリー宮脇が目を覚ます前に倒せ」というアドバイスをもらっていたハリウッドJURINAは、そんな宮脇に試合開始から全力で攻撃。付け入るスキを与えない。チェリー宮脇はリング外で気を失ってしまう……というところで前回は終わっていた。

 リング外で気を失っていたチェリー宮脇は、夢を見る。前回見ていた夢と同じように、すでに練習用リングがなくなった錦糸町道場で、宮脇は寝そべっている。電話の音が鳴り響き、それに出ると、なんと電話口からは死んだはずの父・ウロボロス洋平(菅原大吉)の声が。ウロボロス洋平は「リングに戻れ!」と宮脇に声をかけ続ける。宮脇は次の瞬間夢から覚め、カウントギリギリ、ボロボロの体でなんとかリングに生還。

 しかし、ハリウッドJURINAは攻撃の手を緩めない。延髄斬り、フェイスクラッシャー……すでにボロボロの宮脇を、連続攻撃でさらに痛めつけていく。膝に相手の体を落とす「アイスブレイク」を宮脇に食らわせ、これで勝負あったかと思われたタイミングで、ハリウッドJURINAは、なぜか技を一瞬解いてしまう。

 そしてハリウッドJURINAは、チェリー宮脇に「まだこんなもんじゃないよね?」とだけ声をかけると、張り手の連続。そして続けて「はやく目覚ませよ!」と声をかける。これに呼応するように、宮脇は叫び声をあげると、覚醒したのか本調子を取り戻し、エルボーでハリウッドJURINAになんとか対抗していく。これに対し、ハリウッドJURINAは「最初からそれやってくれない?」と挑発的な発言。

 このあとは、技のオンパレード。ハリウッドJURINAは、フライングJURINAかと思われたトップロープに立つ場面でなぜか飛び降りる直前、両手を合わせて拝むポーズをとり、ライバルであったユンボ島田(島田晴香)の必殺技「拝みギロチンドロップ」を披露するという展開。しかし宮脇はこれでも屈しない。ジャンピングサクラ、ロングスピーチ横山との試合で初登場した技・サクラスペシャルなどから、なんとかカウントスリーに持っていこうとするが、どちらもギリギリの「カウント2.9」で返し続ける。46分45秒の熱戦を制したのは、なんと主人公のチェリー宮脇ではなく、ハリウッドJURINAであった。主人公が最終回で負けるという予想外の展開。

 ラストシーンでは、エンディングテーマとして「シュートサイン」(キングレコード)が流れたあと、道場の前でひったくりを捕らえ、卍固めをするチェリー宮脇の前に、AKB48大家志津香やAKB48中西智代梨をはじめとした、「豆腐プロレス The REAL 2017 WIP CLIMAX」に参戦予定のメンバーたちが登場。試合の後のおまけのシーンでは、リアルでのプロレスイベントや次回作を匂わせるような表現が数多く見られた。

 意外だったのは、やはり主人公のチェリー宮脇があっさり負けてしまったことだ。ただ、これまでこのドラマを観てきた方であれば、「まあ、それもアリかな」という気持ちもわかるのではないだろうか。

 このドラマ、ほとんど実質的な主人公は、チェリー宮脇よりもハリウッドJURINAであった。そのハリウッドJURINAのライバル、ユンボ島田もまた主人公以上に魅力的で、「女子プロレスを扱ったドラマ」というニッチな仕事でありながら、2017年9月をメドにAKB48を卒業し、芸能界を引退することを明言している島田晴香には、その引退を惜しむ声が多い。

 ハリウッドJURINAとユンボ島田の試合が行われた放送回は、この2クールの間でドラマの盛り上がりが最高潮になった瞬間だったのではないだろうか。ほかにもオクトパス須田(SKE48須田亜香里)、バード高柳(SKE48高柳明音)などは、それらを演じるメンバー自身とも重なるエピソードを演じ番組を盛り上げた。おそらくその身体能力を買われ出演が決定したであろうAKB48湯本亜美やNGT48加藤美南といったメンバーは、劇中での見せ場こそそこまでなかったものの、それが「もったいない」と思えてしまうほどであった。

 このように名前を挙げていくと、同ドラマのなかで輝いたメンバーというのは実はたくさんいて、そのなかで宮脇咲良が演じるチェリー宮脇というキャラクターは、主役ながら埋もれてしまっていた印象が否めない。もちろん、トーナメント戦で出番がない試合の回が多く主役ながら出番が少なかったというのもあるかもしれないが、ことこのドラマだけについて見れば、宮脇咲良は他のメンバーに「食われていた」といえるだろう。先に挙げたように、ユンボ島田とハリウッドJURINAの試合がこのドラマの面白さの頂点で、それに比べると最終回にしては盛り上がりに欠けたというのが正直な感想だ。主人公のチェリー宮脇は、「亡き父の思いを背負ってリングに挑む」という役柄だったが、それも物語の面白さにはあまり噛んでいなかったように思う。

 AKB48グループがプロレスに挑戦するという意外性で注目を集めたこのドラマだったが、全体的に深夜ドラマのようなチープさが目にあまり、ファンでなければ続けては観ていなかったと思う。しかし、逆にファンにとってはとても楽しいドラマだったはずだ。先に挙げた松井珠理奈、島田晴香、あるいは須田亜香里、高柳明音といった面々は、このドラマで活躍し、新境地を開拓したといえるだろう。特にいま挙げたメンバーのファンは、自分の推しの活躍に大いに満足したのではないだろうか。

 AKB48のドラマでは、それを演じるメンバーのキャラクターを役柄に反映させる手法が数多くとられてきた。そのことにはこれまで何度か触れてきたが、それを小ネタのレベルでとどめるのではなく、ひとつの試合を通して表現し切っていたのは、この「豆腐プロレス」が初めてだったのではないかと思う。先に挙げたメンバーは、この表現手法にうまくハマったメンバーだが、主人公の宮脇がそこまでこのドラマにハマりきっていなかった。宮脇はもともと運動神経がいいわけではないし、アイドルとしてのグループや仕事への愛や情熱は強いものの、プロレス的な“アツさ”とはあまり相性がよくない。最終回の盛り上がりがいまひとつだったのは、そういった役柄やストーリーと、演じるメンバーの相性の問題もあっただろう。

 しかし、この豆腐プロレスに「ハマった」島田晴香も、実はいままでも声の大きさやガキ大将のようなキャラクターを活かした役にはいくつか挑戦している(『マジすか学園3』で演じた「ウルセーヨ」など)が、どれもそこまでのハマり役だったわけではない。演じる俳優のキャラクターを活かせるかどうかということには、努力だけではどうにもできない運の要素もあるのかもしれない。ただ、ここまで「ハマり役」がたくさんいたAKB48グループのドラマを観たのは久しぶりだ。AKB48には、このようにテレビに出演するメンバーだけでなく、チーム8や研究生なども含め、魅力的なメンバーがたくさんいる。今後この「豆腐プロレス」の続編が作られるか不明だが、今後のAKB48のドラマでもたくさんの新しい「ハマり役」が出てくれることを期待したい。
(文=MC内郷丸)

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