大河『直虎』を建国モノ&イケメンドラマとして成立させた、高橋一生の冷静沈着な芝居

大河『直虎』を建国モノ&イケメンドラマとして成立させた、高橋一生の冷静沈着な芝居

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来週からはゴールデンウィーク。 待ち遠しいですね。 #高橋一生 #旅する氷結

高橋一生さん(@issey_tabisuru)がシェアした投稿 – 2017 4月 25 12:50午前 PDT

 いよいよ、高橋一生の人気が確変状態に入った。

 2015年のドラマ『民王』(テレビ朝日系)で総理大臣の第一秘書役を演じ、16年には映画『シン・ゴジラ』で若手官僚役を演じ、ネクストブレーク間違いなしといわれてきた高橋だが、今年は坂元裕二・脚本のドラマ『カルテット』(TBS系)、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)と立て続けにヒット作に出演しており、ついにその人気が全国区のものになってきたと実感する。
『カルテット』で高橋は、松たか子、満島ひかり、松田龍平といった名だたる実力派俳優たちと共演しながら、演技力において一歩も引かない存在感を発揮した。ふとした偶然から知り合った4人のアマチュア音楽家が、弦楽四重奏楽団(カルテット)を組んで軽井沢の別荘で共同生活を送る姿を描いた同作で、高橋はバツイチ子持ちで30代後半のフリーター・家森諭高を演じた。

 ダメ人間でありながら、余裕しゃくしゃくでつかみどころのない“男版不思議ちゃん”とでも言うような家森は『カルテット』のマスコットボーイ的存在として、視聴者から愛された。今まで演じてきた、影のある理知的な青年役とは違う明るいキャラクターを演じたことで、高橋はアイドル的人気を獲得。ファン層を大きく拡大した。

 しかし、家森のキャラクターはあまりにも強烈すぎた。こういう役でブレークすると演じられる役の幅が狭まり、今後の俳優人生に悪い影響を与えるのではないかと少し心配があった。だが、それは杞憂だった。『カルテット』と同時期に放送がスタートした『おんな城主 直虎』が佳境に入ると、家森諭高のイメージからあっさり脱却。「頭が切れるナンバー2」のイメージを取り戻した。

◎『直虎』で見せる冷静沈着な男とのギャップ
 『おんな城主 直虎』で演じている小野但馬守政次は、何を考えているかわからない不気味な参謀という、高橋が得意とする役柄で、回を重ねるごとに存在感が増している。

 戦国時代を舞台にした同作は、主人公の井伊直虎(柴咲コウ)が、女城主になるまでの過程を幼少期から丁寧に描いてきた。井伊直虎、井伊直親(三浦春馬)、小野政次という幼なじみの男女の三角関係をベースにした少女漫画的な物語だったため、戦国武将同士の勇ましい合戦を求める、昔からの大河ドラマファンからの受けは良くなかったが、直虎が城主となってからは、物語の積み重ねが実を結びはじめ、“建国シミュレーションモノ”として、どんどん面白くなってきている。

 その屋台骨を支えているのは、不穏な存在感を見せている、高橋演じる政次だろう。父の井伊家筆頭家老・小野和泉守政直(吹越満)が、親友である直親の父を死に追いやり、直親が死ぬきっかけを作ったことから、政次は井伊家を乗っ取ろうとする悪役に見えた。しかし実は、今川家に従う振りをして井伊家(と直虎)を守ろうとしていたことが、明らかになってきた。

 そうなると、政次の行動がいちいち気になって仕方がない。本心を隠したつるんとした表情で嫌われ役を演じながら、直虎を守ろうとする政次の気持ちを想像すると、切なくなってくるのだ。

 柴咲が演じる直虎を筆頭に、登場人物の多くが、喜怒哀楽がはっきりとしたわかりやすいキャラクターばかりの中、政次は冷静沈着な男で、なかなか感情を表に出さない。せりふや表情に極端な変化がない政次を演じるに当たり、高橋は微妙な目の動きや首の傾げ方などと いった些細仕草の一つひとつで感情を表現している。ともすれば、ロボットのような無 機質な役になりそうだが、無表情でありながら感情の機微が見え隠れするという高度な芝 居を見せているため、目が離せない。 三角関係の一角を担っていた三浦が早々と退場した時、話が持つのかと心配だったが、 今の高橋を見ていると、この作品は各キャラクターの見せ場がうまく用意された「イケメ ンドラマ」であると、あらためて感心する。

 高橋は現在36 歳。10 歳の時に出演した映画『ほしをつぐもの』から数えると26 年のキ ャリアを持つ若きベテランだ。10 代でスタジオジブリのアニメ映画『耳をすませば』の天 沢聖司役を声優として演じて以降、宮藤官九郎の『池袋ウエストゲートパーク』(TBS 系) や坂元裕二の『Woman』(日本テレビ系)といったそうそうたる脚本家たちのドラマに出演し、名脇役として名をとどろかせていた。

 『おんな城主 直虎』以前にも大河ドラマには4 本出演しており、演技力に関してはすで に高い評価を確立していたが、今年に入ってからは女性誌「an・an」(マガジンハウス)でヌー ドグラビアを披露したりと、俳優以外の活動でも話題に上ることが増えている。 気になるのは今後、魅力的なナンバー2 という名脇役の立ち位置から、主演級の俳優へと 転身するのかどうかだが、しばらくは、二番手三番手のおいしいポジションで爪痕を残して いくのだろう。 すでに今年下半期のNHK連続テレビ小説の『わろてんか』に出演することも決定している。このまま順調にいけば、17年は高橋一生の年になることは間違いないはずだ。
(成馬零壱)

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