『あなそれ』で、“体育会系リア充”の嫌な男を完璧に演じた劇団EXILE・鈴木伸之

『あなそれ』で、“体育会系リア充”の嫌な男を完璧に演じた劇団EXILE・鈴木伸之

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あなたのことはそれほど #撮影 #2話まで #あと3日??

鈴木伸之さん(@nobuyuki_suzuki_official)がシェアした投稿 – 2017 4月 22 2:34午前 PDT

 賛否を巻き起こした『あなたのことはそれほど』(TBS系)が先日、最終回を迎えた。本作はいくえみ綾の女性向け漫画を原作(祥伝社)とする、W不倫を題材としたドラマだ。

 渡辺涼太(東出昌大)と結婚した美都(波瑠)は、中学の時に好きだった有島光軌(鈴木伸之)と再会し、夫がいる立場でありながら肉体関係を結んでしまう。ここまではよくある展開だが、見ていてあぜんとしたのは、美都が有島と一線を超えることに対してなんの躊躇もなかったことだ。

 近年なら『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)が顕著だが、普通の不倫ドラマは、結婚している主人公には家庭に居場所がなく夫が浮気をしているなどといった、不倫をしても仕方がない理由を与える。居場所のない男と女が、家庭と愛する人の間で葛藤するからこそ、不倫ドラマは視聴者の共感を呼ぶのだが、美都にあるのは昔好きだった男と結ばれたいという気持ちだけだ。

 不倫相手となる有島も、美都とホテルに行った時はすでに結婚しており、妻の麗華(仲里依紗)のおなかには赤ん坊が宿っていて出産間近だった。美都と温泉へと不倫旅行した日、有島は妻に子どもが生まれたと告げる。そこで美都は、自分も結婚していることを伝えて「無茶なこと言わないから安心して」と言い、それを聞いた有島は「何だ。よかった。本当、変な奴」と言って、頭を軽く撫でた後、妻の元へと向かう。

?その後、2人の関係は続いていくのだが、深く考えずに不倫をしている2人に対してまったく感情移入をすることができず、昆虫の生態でも見ているかのような不気味さが序盤にはあった。

 その後、不倫に気づいた夫の涼太がおかしくなっていき、美都とは別れないと言う一方で、有島夫婦に会いに行くといった奇行を繰り返すようになる。麗華も無言の圧力で有島を追い詰めていき、最終的に不倫をした美都と有島が制裁を受けるという、いびつだが道徳的な説教に落ち着いた。

 その意味で、本作の見せ場は涼太が美都を追い詰める姿だったといえる。だが、話題になった東出のわかりやすく気持ち悪い演技には心惹かれるものがなく、ドラマの中にしかいない記号的なキャラクターだとしか思えなかった。

 それに対して、美都と有島の方が見ていてゾワゾワするのは、そこに薄気味悪いリアリティがあったからだ。

 特に、説得力があったのが、鈴木伸之が演じた有島光軌である。有島はスクールカースト上位のモテる高校生がそのまま大人になったような好青年だ。仕事もちゃんとしているし、奥さんも子どももいて、客観的にみれば非の打ちどころがないカッコいい男である。

 そんな有島が美都とあっさり不倫をしてしまうのが本作の恐いところだ。その流れがすごく自然なので、今までも、寄ってくる女と浮気してたんだろうなぁと想像させる。有島にとって美都は単なる浮気相手でしかなく、一番は麗華であり生まれたばかりの子どもである。この優先順位は絶対に崩れず、しかし下半身だけは欲望に忠実で、とりあえず美都とも、ヤレたからヤッただけなのだろう。

 そのあたりのバランス感覚が、モテる男のメンタリティという感じで、“リア充”の恐いところを見せられたなぁと思った。

 有島を演じる鈴木伸之は現在24歳。劇団EXILEに所属する俳優だ。テレビドラマにおいて鮮烈な印象を残したのは、池井戸潤原作のドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)で演じた社会人野球チームのピッチャー・如月一磨だろう。傲慢な性格の如月は、相手を見下したような表情で薄笑いを浮かべながらボールを投げ、その時の憎たらしい顔は今でも覚えている。

 その次に出演した『水球ヤンキース』(フジテレビ系)では、主人公のライバル校の水球部の選手・郷田剛を演じていて、コイツも嫌な奴だった。映画『霧島、部活やめるってよ』ではバレー部の副キャプテンを演じていたが、どの役にも共通するのは、運動部の先輩が後輩を顎で使う時の“いじめっ子感”で、「こういう奴いたわ」と学生時代の記憶が刺激される。こういう体育会系“リア充”のマイナス面を演じさせたら鈴木伸之は完璧である。

 映画やドラマといった多ジャンルで展開する『HiGH&LOW』シリーズの成功もあってか、劇団EXILEの町田啓太や、三代目J Soul Brothersの岩田剛典といったEXILEの若手がテレビドラマに進出し、大きな役を演じることも多くなっている。

鈴木もその1人だが、彼がほかのEXILE俳優と違うのは、憎たらしい悪役が演じられることだろう。今回演じた有島はその極致であると同時に、芝居にわざとらしさがなく、自然に振る舞っているだけで嫌な感じがにじみ出ていたことに、役者としての成長を感じさせる。

 最終的には、わかりやすく気持ち悪い涼太を演じた東出昌大が話題を全部持っていったような終わり方となってしまい、後半になると有島の面白さが失速して終わってしまったのが残念だが、本作で片鱗を見せた「体育会系リア充」の空気感を生かし、鈴木伸之には今後もイヤな奴を演じ続けてほしい。
(成馬零一)

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