志尊淳、『トドメの接吻』『女子的生活』で証明した“実力派若手俳優”の力量

志尊淳、『トドメの接吻』『女子的生活』で証明した“実力派若手俳優”の力量

『女子的生活』(NHK)公式サイトより

 先週最終回を迎えた『トドメの接吻』(日本テレビ系)は、タイムリープ(時間逆行)を題材にした、ホストが主人公の恋愛ドラマという不思議な物語だった。

 女を食い物にする売れっ子ホストの堂島旺太郎(山崎賢人)が、謎の女・佐藤宰子(門脇麦)にキスをされると、心臓が停止して1週間前にタイムリープするという導入、その能力を使って大企業の令嬢を自分のものにしようと悪戦苦闘する旺太郎と、そんな旺太郎に献身的に尽くす宰子の姿は、予測不能のラブストーリーとして最後まで楽しめた。

 何かあると登場人物が死んで、その度にタイムリープをして事件を解決するという展開は、一見すると子ども騙しでデタラメだが、山崎、門脇、新田真剣佑、新木優子といった実力ある若手俳優が出演していたこともあってか、迫真のドラマとなっていた。中でも、最も目を引いたのは志尊淳である。

 志尊が演じたのはホストの小山内和馬。旺太郎を慕う弟分だが、旺太郎を尊敬しているがゆえに、旺太郎を殺して自分も死んでしまおうという、歪んだ愛情を持つヤバい奴だ。しかし、旺太郎が人をとことん利用する男なので、宰子同様、ダメな男に尽くす健気さが際立ち、どこか憎めない愛嬌のようなものがあった。

 和馬のキャラクターに愛嬌という奥行きを与えていたのは、間違いなく志尊の演技だろう。志尊は現在23歳。2011年にワタナベエンタ―テインメントの若手男性俳優集団・D-BOYSのメンバーとして、テニミュこと舞台『ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン』に出演し、向日岳人役として俳優デビューした。14年には『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)のトッキュウ1号役に選ばれる。

 志尊の先輩にあたるD-BOYSの瀬戸康史を筆頭に、特撮ドラマの『仮面ライダーシリーズ』(テレビ朝日系)が若手俳優の登竜門となっているのは有名だが、戦隊ヒーローモノも『侍戦隊シンケンジャー』(テレビ朝日系)に出演した松坂桃李を筆頭に、若手俳優の登竜門となっている。

 2.5次元舞台として有名な『テニミュ』とヒーローモノを経由し、若手俳優として巣立った志尊は、その後、キャリアを着々と確立。昨年は映画『帝一の國』や連続ドラマ『植木等とのぼせもん』(NHK)などに出演し、今年の1月クールには『トドメの接吻』と『女子的生活』(NHK)、そして現在放送中の深夜ドラマ『ドルメンX』(日本テレビ系)に出演している。

 中でも、『女子的生活』は主演ということを差し引いても、志尊のキャリアで重要作となったと言って間違いないだろう。

 金曜午後10時から放送されていた本作は、トランスジェンダーを題材にしていて、志尊が演じたのは、体は男性だが心は女性。そして恋愛対象も女性という小川みき(幹生)。みきはアパレルメーカーで働き、合コンに参加して女性を口説いては刹那的な関係を結ぶという日々を送っていた。そんなある日、同級生だった後藤忠臣(町田啓太)がアパートに転がり込んできたことで、みきの日常が少しずつ変化していく。

 志尊が演じるみきは、ひと昔前ならオネエキャラとしてコミカルに描かれていた存在だ。しかし、そういった目線は本作にはなく、偏見に晒されるみきの強さと困惑を描いている。本作が面白いのは、みきの悩みがトランスジェンダー独自のものではなく、人間関係の悩みや歳をとったら自分はどうなるのか? という現代人が抱える普遍的な不安だということだ。

 近年、性的マイノリティに対する配慮がフィクションに求められるようになってきているが、こういった作品を作る時に難しいのは、対象への距離感だ。差別的に笑いの対象とするのは論外だが、だからといって過剰に神格化して聖人のように描くことも問題である。

 みきは悪い意味で、女性としての自分を過剰に内面化しているところがある。オシャレにうるさく、他人を値踏みしているようなところもあり、正直言って嫌な奴だ。だがそれが、人間臭さにつながっており、特別な存在としてみきを描いていないことがよくわかる。

 ちょっとした演技のさじ加減で見え方が変わってしまう難しい役のため、志尊も相当頭を悩ませたことだろう。しかし、彼は見事に演じきった。『トドメの接吻』の和馬もそうだが、過剰な設定が盛り込まれたキャラクターを、愛嬌のある自然な存在として演じられる力量が彼にはある。

 すでに、連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)の出演も決まっている。今年が終わる頃には実力派若手俳優として誰もが認める存在になっていることは、間違いないはずだ。
(成馬零一)

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