『I”s』『ゆうべはお楽しみでしたね』岡山天音、情けない若者を演じる独自の存在感

『I”s』『ゆうべはお楽しみでしたね』岡山天音、情けない若者を演じる独自の存在感

『I”s』公式サイトより

 今クールの連続ドラマを見ていると、岡山天音が出演する作品が3本もある。1本はすでに終了している『ゆうべはお楽しみでしたね』(MBS系)。オンラインRPG「ドラゴンクエストX」を楽しんでいた男女が、同棲することになるラブコメディだ。

 岡山が演じたのはアニメショップで働く、さつきたくみ。ゲーム内では「パウダー」というかわいいキャラクターを使っている。そんなたくみにルームシェアを持ちかけたのは、ゲーム内ではマッチョで男らしいキャラのゴロー。実は、ゴローを操作しているのはネイルサロンで働くおかもとみやこ(本田翼)というおしゃれな女性だ。学生時代に好きな人から振られたトラウマを抱えるたくみは女性が苦手だったが、サバサバしたみやこと暮らすことで、少しずつ変化していく。ドラマは淡々と2人の日常を描いているが、結果的にたくみの成長物語となっているのが見どころだろう。

 たくみのような繊細な内面を抱えた情けない青年を演じさせると、岡山は抜群にうまい。昨年12月末にBSスカパー!でスタートして、3月8日より後半話が放送され『I”s』で演じている主人公の少年・瀬戸一貴もそういう存在だ。本作は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1997から2000年に連載されていた桂正和の同名漫画をドラマ化したもの。『電影少女』(同)などで知られる桂の漫画は、思春期の男の子がドキドキする少女を色っぽく描くことに定評がある作家で、ドラマ版でも白石聖が演じるヒロイン・葦月伊織を筆頭に、かわいい女の子が次々と登場し、ウブな一貴は翻弄される。

 岡山が演じる一貴は、“逆走くん”と劇中では言われており、自分の気持ちを素直に出せず好きな女の子にキツくあたってしまう。でも、根っこは優しい少年で、そういう思春期の男の子が持つ、ちぐはぐな感情を、岡山は丁寧に演じている。また、一貴の中には繊細な優しさと、キレると何をやらかすかわからない暴力性が同居しているが、特徴的なタレ目と離れ目が、そのときは不気味に見え、迫力と転じることがある。今は優しい青年役が多いが、変質者や殺人犯の役を演じたら、さぞかしハマることだろう。

 この2作では、やや自意識をこじらせためんどくさい内面を抱えた男を演じているが、『デザイナー 渋井直人の休日』(テレビ東京系)で演じる杉浦ヒロシは人当たりのいい好青年だ。

 本作は、光石研が演じるデザイナー・渋井直人を主人公としたドラマで、ヒロシは渋井のアシスタント。今時の若者らしく、失礼なことをズケズケと言うこともあるが、渋井のことを尊敬しており、渋井も大事な仲間だと思っている。つまりおっさんから見た、愛すべき若者とでも言うような存在で、第6話では渋井と杉浦の仲が深まるシーンも描かれており、3作の中では一番ハートウォーミングで見やすい作品だ。

 これら作品での描かれ方を見ると、どこか頼りないが繊細で優しい10代後半〜20代前半の若者といえば岡山天音というイメージが定着しつつあるのがわかる。

 岡山は現在24歳。安藤サクラや門脇麦といった若手実力派俳優を有する芸能事務所・ユマニテに所属している。09年に『中学生日記』(Eテレ)で俳優デビューし、数々のドラマや映画に出演しているが、大きく注目されたのは、17年の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『ひよっこ』(NHK総合)だろう。

 本作は1960年代を舞台にした朝ドラで、岡山が演じたのはコンビの漫画家・つぼ田ちぼ助として、相棒の坪内祐ニ(浅香航大)と共に漫画家を目指す新田啓輔。なかなかデビューできずにいる情けない青年だが、素朴な姿に可愛げがあり、作中ではムードメーカー的な存在だった。

 主演の有村架純を筆頭に、『ひよっこ』は女性陣の活躍が目立つドラマで、登場する男性は、竹内涼真が演じた慶応ボーイの島谷を除くと、どこか頼りない人ばかり。そのため、本編では縁の下の力持ちに甘んじていたのだが、『ひよっこ』終了後には他作品に立て続けに出演し、独自の存在感を見せつつある。

 すでにブレークしている竹内は別格として、『ひよっこ』男性陣の泉澤祐希、浅香航大、古舘佑太郎、磯村勇斗、そして岡山の5人は今年もっとも期待できる若手だと言えよう。中でも岡山の強みは、かっこ悪くて情けない青年役を愛嬌のある形で演じられることにある。

 5月からはメ〜テレ(名古屋テレビ)制作の深夜ドラマ『ヴィレヴァン!』で、ヴィレッジヴァンガードで働く大学生役で主演を務めることが決まっている。まだ深夜枠の小さい作品が多いが、プライムタイムのドラマで主演を務める日も、そう遠くはないだろう。

 その時はぜひ、『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)のような泥臭い青春群像劇に出演してほしい。今の岡山ならば若者の心を掴むような情けない青年を演じられるはずだ。
(成馬零一)

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