フィギュア王者ネイサン・チェン、あらゆるオタクを掴みかねない「多幸感」と「愛おしさ」

フィギュア王者ネイサン・チェン、あらゆるオタクを掴みかねない「多幸感」と「愛おしさ」

ネイサンチェン公式インスタグラムより

 前回、ジャニオタ的視点から、フィギュアスケート世界王者のネイサン・チェンの魅力を勝手に語らせていただいた。

 スケオタの皆さまからは、さぞかし「ジャニオタ、こっち来んな!」「ジャニタレなんぞと一緒にすんな!」といった罵詈雑言が浴びせられるだろうと覚悟の上で執筆したものだが、驚いたのは、笑って受け入れ(あるいは受け流し)てくださる方が多かったこと。

 ジャニオタ界隈では「ファンは担当(自分の愛するジャニーズタレント)に似る」と昔からよく言われるが、フィギュア界隈でも同様に、温厚で人格者のネイサンには温厚な性質のファンがつくのだろうか。

 Twitter上では、親切にも「髪形にも触れてほしい」(※石川テレビのキャラクター・石川さんに似てる説も)とか、「ネイサンはセルフコレオ(自身で振り付け)もできることを書き加えてほしい」「美女スケーターの水着姿に『いいね!』を欠かさないところも入れてほしかった!」などの補足情報もいただいた。最後のご指摘は、以前から「水着姿の『いいね!』が多い? なんだかんだ19歳だから?」などと気になっていたのだが、やはりそうなのか……。しかし、そんな「普通男子」のところがむしろ良い。インスタグラムで投稿されたザギトワ選手とのツーショットが、心なしかデレているように見えるのも、中学生男子的で趣深いではないか。

 さらに追加したいジャニオタ的萌えポイントは、20代直前の貴重な時間を追いかけられること。ネイサンは現在19歳で、誕生日は5月5日(子どもの日! 誕生日まで健全)。つまり、10代のネイサンを見られるのは、残りわずかなのだ。

 ジャニオタには、タレントが「高校を卒業するとき」「10代じゃなくなるとき」に特別な感慨を抱く人が結構いる。しかしいま、ジャニーズはデビュー組もJr.も高齢化が進み、昨年デビューしたばかりのKing&Princeですら1人除いて全員が20代である。ジャニーズにおいては、「“10代のスター”が刻々と大人の階段を上る瞬間」を見られることが近年ほぼなくなっているため、それをフィギュアという別世界の、それも外国人選手に感じられる日が来るとは、僥倖としか言いようがない。

 ジャニオタはまた、「特別な人の、特別じゃない、ごく普通の姿」を見るのが大好物である。その点、ネイサンのインスタグラムに投稿されている裏ピースする写真などは思春期男子のようだし、昨夏の京都で扇子を張り切って超高速で扇いでいる眼鏡ネイサンなどは、中学生男子の修学旅行のようでいじらしく、グッとくる。大好物のラーメンだけじゃなく、たこ焼きや浅草メンチに「いいね!」しているところなども、日本を満喫していて、愛おしい。

 さらに、「世界フィギュアスケート国別対抗戦」のエキシビションでアメリカ代表チームがDA PUMPの「U.S.A.」を踊ったとき。ジャニオタのよく使う、大きな顔写真うちわ的なもので各自が顔を隠しながら、縦一列に並んでグルグルとEXILE的な動きを披露して登場したが、前の人とカブってしまい、ネイサンはほとんど見えなくなってしまっていた。演技で見せるダンスはリズミカルで指先までしなやかで美しいのに、ひとたびワイルド系の動きになると、不慣れで不器用な感じという新鮮さ。まるで計算し尽されたように完璧ではないか(確実に計算じゃないのがわかるから、萌える)。

 そこから一転、「U.S.A.」のノリノリ具合は軽快で、ソロパートは美しく、最後に見せたリンクに寝そべって作る人文字で漏れ出た「ウフフ」的な笑顔には、完全に射抜かれた人が多かったろう。「世界王者」という特別な人――しかも、大学に通うためにコーチと離れて一人で練習し、動画をコーチに送って指導を受け、一人で考え、コーチも帯同せずに一人来日したネイサンが、「仲間とのひとときを普通に楽しむ」姿は、いつまででも見ていられるような多幸感に溢れている。

 ジャニオタは(というか、あらゆるオタクがそうだろうけれど)、「体調が悪くとも、ケガをしていても、つらい様子は見せずに自分の役割を全うすべく頑張る姿」を見ること、そして勝手に心配することが大好きだ。その点、フィギュアと勉強の両立で超多忙なネイサンは、以前もインフルエンザを患っていたし、今回の「国別対抗戦」では体調を崩し、胸やのどを押さえたり、咳をしたり、喉の痛みに耐えるためか飴を舐めたりしたため、「喉に飴が詰まらないか」とファンに心配されていた。一部では「吐いていた」「頻繁に鼻をかんでいた」とも言われている。

 しかし、そんな体調でもチームを応援し、合間に勉強もし、エキシビションもちゃんと盛り上げた挙げ句、表彰式のときには明らかに体調が悪そうな虚ろな目と緩慢な動きをしている様子を見てしまったら、興味を持たずにいられるオタクなどいないのではないか。

ネイサンを知るほどに募る罪悪感
 ただ一つだけネイサンの罪を挙げるとしたら、「沼」要素が多すぎるために、ファンは知れば知るほどインスタグラムや動画、Twitter、過去の雑誌なども遡って情報を集めたくなってしまい、結果的に多くの時間が奪われていくこと。

 ネイサン自身はタイムマネジメントの本をたくさん読み、スケートと勉強を両立させる超多忙な日々を送っており、関西の番組で「1秒も無駄にしないでご飯を食べる時も移動中も時間があれば勉強に使います」と語っているくらいなのに、ネイサンのそうした言動を追いかけるために、ファンは膨大な時間を潰しているという矛盾……。

 「自分も頑張らなきゃ」と背筋が伸びる思いと、「結果、何もしていない」罪悪感に苛まれつつ、せめてこうした時間を超多忙なネイサンにお分けできたら……と思うばかりだ。
(南山ヒロミ)

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