『ザ・ノンフィクション』整形オーディションで整形しないという決断「シンデレラになりたくて…2019」

『ザ・ノンフィクション』整形オーディションで整形しないという決断「シンデレラになりたくて…2019」

『ザ・ノンフィクション』(公式サイト)より

NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。6月23日放送のテーマは「シンデレラになりたくて…2019(後編)」。先週に引き続き整形オーディションに懸ける二人の女性を追う。

あらすじ:整形シンデレラに懸ける二人の女性が下した異なる決断

 出場者は無料で美容整形が受けられ、さらにグランプリ受賞者には賞金300万円が贈られる湘南美容クリニック主催の『整形シンデレラオーディション』。第4回の応募者の一人、麻莉亜はひき逃げ事故に遭い、顔と足に負った傷痕を整形で目立たなくするために応募する。発達障害を抱えるりおは、自分を変えたいという思いで応募するが、合宿を通じ、整形を選ばなくても自分は変われるのではないかと手術を辞退しオーディションを終える。

「変化」を求めたりおは、手術なしでも変わったことに気づいた

 『整形シンデレラ』の応募者のうち、無料で美容整形手術を受けられるのはわずか10人。最終審査では、合宿を通じ20人が10人に絞られたが、番組途中のナレーションでは「(『Rakuten GirlsAward』 の)ランウェイを歩くことができるのは手術を受けた8人中5人」 とあった。つまり、りお以外にももう一人、手術を受けられる権利を獲得したものの、最終的に辞退した人がいたのだろう。

 このコンテストに出る以上、無料で手術ができる代わりに「美容整形手術を受けたことを公表する」ハードルもある。ここ数年で、美容整形の関連配信をメインにしたユーチューバーも増えているが、だからといって、誰もが整形を明かせるかは別問題だろう。りおが辞退を医師に告げたときに、医師は「手術は一番モヤモヤした気持ちで突入しちゃうのが一番ダメなんですよ」 と、手術しないで幸せな人生を送れるならそれでいいと、りおの決断を肯定していた。

 発達障害を抱えるりおは、中学生から不登校になり通信制の高校を中退、現在はニートで、コスプレの趣味以外ではパソコンの前に座る生活を送っている。今は家から一歩も外に出なくても、ネットを通じ最新の情報を入手できるし、人と交流することだってできる。

 できるのだが一方で、実際に生の人に会って話したりコミュニケーションを取る機会がないと、人はなかなか成長しづらいというのはよくわかる。私自身、ネットという居場所にホッとしている一人として、リアルがよくてネットがダメという気はないし、精神的にギリギリの状況にある人にとって、ネットがセーフティーネットになっている事実もわかる。しかしネットにはリアルに比べ、何かの場数が踏めず、それが「幼さ」とつながっているということもわかるのだ。

 生の人間とのコミュニケーションは面倒や鬱陶しいこと、イヤになるようなことも多い。中学で不登校になったりおにも、そういった苦労はあっただろうと推測する。一緒に暮らす父親との仲は良好なようだが、おそらく他人と話しをする機会はあまり多くなかったはずだ。

 そんな中、『整形シンデレラオーディション』での合宿、医師とのカウンセリング、そしてこの番組の取材を通じ、人と話しを重ねたことは、りおにとって自分を見つめ直す絶好の機会だったのではないだろうか。そしてその機会を通じて成長し、整形以外にも変わるためにできることがある、という結論に至ったのだろう。

 「実際に人と話す」というのは、万能薬だとつくづく思う。もちろん、安心して話せる環境であることが大前提だが。

 「顔」は美において残酷なほど重要な要素だが、一方で立っているときや歩いているときの佇まいも、美しさの大切な要素の一つだろう。今回の番組を見ていて、麻莉亜の「立っている姿や歩く姿」は頭一つ抜きん出て美しかった。

 麻莉亜は小学校から高校まで新体操をしていたのだ。インターハイ出場経験もあり現在はコーチもしている 。もともとのスタイルもいいのだが、佇まいもしなやかで美しかった。綺麗な身のこなしを競技生活の中で叩き込まれ、何度も何度も体に染み込ませていったのであろう年月を感じさせた。

 前週登場した、モデルを目指す叶華もアイドルをしている七海も「見られる自分」への意識は普通の女子よりあるだろうし、所作にも人一倍気を配っているだろうが、麻莉亜には年季の違いを感じた。コンプレックスがあると、つい目、鼻、口などその部位に意識が行きがちだが、他人の目にまず入るのは、もっと「引き」の、面積の大きいものだ。その人を表す一番大きな面積を持つ「姿勢」は、しみじみと大事だと思う。

 ところで、前後編と番組を見ていて一つ心配だったのが、「せっかく無料で手術ができるのだし」といった思いから、整形が必要以上にエスカレートしないかという点だ。企画がそもそも『整形シンデレラ』である以上、歯の矯正のみといったマイナーチェンジだけの志願者はおそらく選ばれないだろう(歯だけなら、そもそも矯正歯科のモニターという手もある)。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は『ワケあって…坂口杏里』。まだ28歳なのに「ワケあって」という言葉がこんなに似合う人を私は知らない。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

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