性適合手術を受けたKABA.ちゃん、ダメ出しをする両親の言動に欠けていたモノ

性適合手術を受けたKABA.ちゃん、ダメ出しをする両親の言動に欠けていたモノ

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羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「私が変える」KABA.ちゃん
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系、9月25日)

 タレントのKABA.ちゃんが、タイで性別適合手術を受け、帰国後、戸籍の性別と名前の変更を行った。9月25日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)では、タイでの性別適合手術や、実家への帰省の様子に密着した。

 KABA.ちゃんの家庭は複雑である。番組では、KABA.ちゃんの両親は一度離婚して復縁したと放送していたが、『私の何がイケないの?』(TBS系)において、本人が「2回離婚して、3回結婚している」と説明していた。KABA.ちゃんは離婚の理由を『グータンヌーボ』(フジテレビ系)で、「母は酔うと簡単にオトコについていっちゃう」と説明し、そのほかのバラエティ番組でも、オトコと駆け落ちして、別れたら帰って来る生活をしていたと話していた。父親は仕事で家を空けることが多く、小さい子どもたちだけで生活していたそうだ。今の時代の基準でいうなら、完全に育児放棄だろう。

 『ザ・ノンフィクション』で、両親はKABA.ちゃんの好物の料理を作って出迎える。しかし、会話はかみ合わない。父親は「(性別適合手術をしたのは)何か魂胆があってしたことなのか」と理解のなさを露呈し、母親は「声は変えなくてもよかった」を2回繰り返して、「女性になった以上、女性としてテレビに出ないといけない」と、ダメ出しばかりである。

 確かにおネエタレント的(イケメンがいたらベタベタ触る、男性的な声でねっとり抑揚をつけたしゃべり方をする)な芸風はふさわしくなくなるので、この指摘がまったくの見当はずれだとは言えない。しかし、両親がKABA.ちゃんに“共感”しないことが私には気になった。例えば、KABA.ちゃんがこれまでどれだけ自分の性について悩んできたかをわかろうとせず、はるばるタイまで行って大きな手術を受け、無事に帰って来れたことに対しても、「よかったね」「大変だったね」と苦労をねぎらうことをしない。身内だからこそ、率直に言えるのだと彼らは言うかもしれないが、それを言う権利があるのは、身内として保障すべき衣食住と愛情を与えた親なのではないだろうか。

 ところで、KABA.ちゃんを見ると思い出すのが、江角マキコである。

 以前、KABA.ちゃんが『私の何がイケないの?』に出演した際、父親がオネエタレントとして活躍するKABA.ちゃんについて「鳥肌が立つくらい嫌い」と発言したシーンが紹介された。それに対しKABA.ちゃんは、スタジオで対面した父親に「本当の父親じゃないのでは?」と爆弾発言をしたのだ。しかし、それを聞いた司会の江角は「親は子どものことを無条件に受け止めてあげたいもの」「お父さんはKABA.ちゃんのためにわざわざ飛行機に乗って来てくれたんだから、それが全て」と泣きながら、父親を擁護するような発言をしていた。

 KABA.ちゃんが、「親は無条件に子どものことを受け止めるはずなのに、なぜうちはそうではないのか? ほかの男の子どもだから愛されなかったのでは?」と筋道立てて考えているのに対し、江角の主張は「親は子を愛している、だから分かり合えるに決まっている」の一点張りで、子ども側の話を聞こうとしないのだから、平行線だ。

 江角といえば、マネジャーに命じて、子どもが同じ学校に通う長嶋一茂の家に「バカ息子」と落書きをさせたと「週刊文春」(文藝春秋社)が報じた(江角はマネジャーが勝手にやったこととブログで釈明)。どういう経緯で落書き事件が起きたのか、第三者には知る由もないが、その余波を受けて、江角の子どもたちは転校を余儀なくされたという。

 また、江角は『中居正広のミになる図書館』(テレビ朝日系)で、「自然な生活」について語っていた。子どものために掃除機や電子レンジは使わない生活をしているそうだが、専門家は、掃除機や電子レンジを使った方が衛生的で栄養価も高いと指摘。「自然な生活」は結果として、子供のためにならなかったということになる。

 何が言いたいかというと、子育てに自信満々の江角だって間違いを犯すし、子どもに迷惑をかけているということだ。子どもを愛しているからといって、完璧な人間にはなれるわけではないし、そんなつもりがなくても、不可抗力的に子どもを傷つけることだってある。だとしたら、大事なことは“謝罪する”ことなのではないだろうか。KABA.ちゃんの母は、「心の中にいつも悪いことをしたという気持ちがある」と言っていたが、少なくとも番組中、謝罪のニュアンスのある言葉はなく、全体的にダメ出しが目立った。

 アメリカの神学者、ラインホルド・ニーバーは「変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ 変えることのできないものについて、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ」と言った。KABA.ちゃんは性別を変え、かつオトコだオンナだと棲み分けする芸能界を「私が変える」と宣言した。KABA.ちゃんならやれるのではないかと思う。しかし、変えられないものもある。KABA.ちゃんにとって、それは両親なのではないだろうか。幸いKABA.ちゃんには友達がいるし、性別を変えたことによって、KABA.ちゃんは男性と結婚することも可能になった。自分の意志で新しい家族を作ってほしいと思った。
(仁科友里)

※画像はKABA.ちゃん公式プロフィールより

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