“30億円を貢いだ男”の本は売れない? 逆転で出版が決まった第1弾【紀州のドン・ファンと元妻 最期の5カ月の真実】

“30億円を貢いだ男”の本は売れない? 逆転で出版が決まった第1弾【紀州のドン・ファンと元妻 最期の5カ月の真実】

担当編集者は闇営業問題もスクープした(謝罪会見の宮迫博之)/(C)日刊ゲンダイ

【紀州のドン・ファンと元妻 最期の5カ月の真実】#18

「これは出版できないって会議で言われました」

 野崎幸助さんの本「紀州のドン・ファン」は出版見送りが決まった。

「なぜ?」

「売れないだろうということみたいですね。たいして読んでもいないくせに。売れないことはないと思うんですが」

 担当編集者だったNクンが済まなそうな表情を浮かべた。Nクンは週刊現代でドン・ファン記事を担当し「美女4000人に30億円を貢いだ男」というキャッチコピーを作った。その後FRIDAY編集部に異動して私とタッグを組む。ドン・ファンネタは彼が担当することになったが、残念ながら生前のドン・ファンと会ったことがない。それが痛恨の失敗であると、今でも彼自身が悔やんでいる。

 ちなみにNクンは2019年流行語大賞に選ばれた吉本興業芸人の「闇営業」をスクープしている有能編集者だ。

「本当ですか。そんなバカな話はないですよ。ボクは絶対に売れると確信していますから、ちょっと待って下さい」

 当時ネット媒体の現代ビジネスの編集長だったSクンがボクの応援をしてくれることになった。彼はドン・ファンの記事を何本も手掛けていて読者の反響がいいことを知っていた。それから約2週間後に出版OKが出たのだからSクンには感謝するしかない。

 本は16年12月の年の瀬も押し迫った頃に出版された。ちょうどこの頃に大下さん(仮名)の娘さんのコンサートが恵比寿で催されて、私はコンサート後のパーティーにも出た。そこにはドン・ファンと当時の若い愛人も出席していた。背の高い女性で25歳ぐらいだったと記憶しているが、17年の正月も彼女は田辺に呼ばれて一緒に過ごしている。

■因縁の相手と初対面

「とてもとても結婚なんて考えられませんから」

 彼女は何度か私に電話をしてきて愚痴をこぼしたことがあった。

「それならあまり深入りをしないほうがいいですよ」

 私はそのように助言をしたが、ドン・ファンとの結婚で悩むのだから性格は素直な方だったのだ。

 パーティーには講談社のドン・ファン本の担当編集者や私と古くから仲の良かった編集者のKさんも顔を出した。ドン・ファンは18年5月24日の夜に亡くなったが、その夕方に都内の居酒屋で私と飲んでいた相手である。

 大きな円卓のテーブルには鼻の下にひげをたくわえた見慣れない中年の男性が座っていた。

「ほう、これがねえ。一体いくら支払ったんですか? 凄いですねえ」

 本を手にしながら、その男はドン・ファンに聞いた。

「フフフッ」

 小ずるいドン・ファンは笑ってごまかしている。どうやら相手の男は、社長が自費出版しているのだとハナから信じ切っているようだ。

「お〜い、オレにもコレを送ってくれよ」

 私はこのとき初めて、この男が昔アプリコで働き役員として名前を貸しているMであることを知る。彼が自己紹介をしたのではなく、大下さんから聞いたのだ。不遜を絵に描いたような横柄な態度。それでいてドン・ファンの横から離れず、バッタのようにペコペコとしているのだから完全なゴマすり野郎であった。ドン・ファンに借金があり、ドン・ファンの死後に「いごん」を出すのも彼だった。 =つづく

(吉田隆/記者、ジャーナリスト)

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