全力で仕事を楽しむ「とにかく明るい安村」が殺したい過去の自分(てれびのスキマ 戸部田誠)

全力で仕事を楽しむ「とにかく明るい安村」が殺したい過去の自分(てれびのスキマ 戸部田誠)

とにかく明るい安村(C)日刊ゲンダイ

【今週グサッときた名言珍言】

「初めて見たとき、腹抱えて笑った。ほんで泣いたな」(千鳥・大悟/フジテレビ「千鳥のクセがスゴいネタGP」9月16日放送)

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「東京ってスゴい」と連呼しながら「北海道の田舎の控えめで大人しかった俺が♪ 東京に来て♪ 20年経ったら♪ 恥ずかしくもなくこんなことができる♪」と半裸状態で奇妙な踊りをしながら歌い上げる。とにかく明るい安村(39)の「東京ってスゴい」という歌ネタだ。それを「これぞロックやろ」と称賛しながら見ていた千鳥・大悟が放った言葉を今週は取り上げたい。

「東京」が自分たちを変えさせると語った上で「変わったことが悪いことでもないのよ。だから『東京は悪い』じゃなくて、『東京はスゴい』のよ」と続けた。

 安村のこのネタは当初「歌ネタ王決定戦」(MBS)で優勝するために作ったものだ。優勝賞金300万円を目指すも、準決勝で「めちゃくちゃスベって」(TVer「テレビドガッチ」20年8月25日)敗退。けれど、他のライブでやると楽屋の芸人たちから絶賛されたため、「有吉の壁」(日本テレビ)で披露すると大反響を巻き起こした。

 このネタで歌われている通り、安村は北海道で生まれ育ち、小4の頃、両親の離婚を経験している。高校時代は野球に熱中し、甲子園にも出場。相方に誘われて「アームストロング」を結成し、上京した。北海道にいた頃は、相方が「ガキ大将」のような立ち位置で、その下に「子分」の状態で3人くらいいた。うちの1人が安村だった。だから「誘われたからただついてきただけ」(とうこう・あい「QJWeb」21年9月20日)だったという。

 だが、東京でさまざまな人と出会う中で安村は変わっていった。「相方はずっと僕のことを弟子みたいな感じに思っていたんですけど、僕にも自我が芽生えてきて。そこから少しずつズレていって、解散することになった」(同前)。元相方に「解散して7年経つけど、まだ殺してやりたい」(フジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」21年9月11日)と言われるまで険悪になったと笑うが、もしかしたら「殺してやりたい」というのは、過去の自分に対してなのかもしれない。

「若いころは無駄に悩んだり、先のことをあれこれ考えたりしていたんですけど、今はいい意味で先のことをまったく考えていない」(「QJWeb」=前出)と、安村は言う。目の前の仕事を全力で楽しむだけだと。

 彼が再び注目された「有吉の壁」では有吉からの判定で「×」をもらうことが少なくない安村だが、その「×」も良い「×」と悪い「×」がある。「×」をもらっても引き下がらず、恥ずかしげもなく、なりふり構わず頑張って最終的にはウケるまでやり続ける。そこに安村の哀愁とスゴさがあるのだ。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)

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