吉本NSC名物講師に聞いた “芸人の卵”に教える唯一のルールとは

吉本NSC名物講師・本多正識氏が自著を出版 自らの体験や芸人に教えるルールを語る

記事まとめ

  • 吉本NSC名物講師・本多正識氏がいじめでつらい思いをしている人たちに向けた本を出版
  • 本書にはキングコングの西野亮廣、南海キャンディーズの山里亮太らとの対談もある
  • 本多氏が芸人に教える唯一のルールは「人を"さらし者にして笑う"ことはやめよう」

吉本NSC名物講師に聞いた “芸人の卵”に教える唯一のルールとは

吉本NSC名物講師に聞いた “芸人の卵”に教える唯一のルールとは

吉本芸人養成所講師の本多正識氏(C)日刊ゲンダイ

お笑い芸人の養成所、吉本NSCの名物講師で漫才作家の本多正識氏(60)がいじめでつらい思いを抱えている人たちに向けたメッセージ本「笑おうね 生きようね/ いじめられ体験乗り越えて」(小学館)を出版した。自身の学校でのいじめ、重度のぜんそく、虐待の経験をもとに、今伝えたいことを聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 お笑いといじめは両極にあるように見えるが。

「教え子でもある芸人たちと話していると、いじめに遭った経験のある子たちがけっこう多いんです。私自身もいじめと虐待を経験しているので、いじめで命を絶つようなことは絶対にして欲しくないと常々考えていましたので、このような本を出すことになりました」

 本書にはキングコングの西野、南海キャンディーズの山ちゃん、ウーマンラッシュアワーの村本ら人気芸人との対談も。

「私だけじゃネームバリューに欠けるので“炎上芸人”3人を集めました(笑い)。彼らは教え子でNSCの同期生。三者三様のいじめの経験を語ってくれました。村本君はいじめを笑いに変える術に気づいたとか、山ちゃんはいじめもいじめたことも両方経験していたり。西野君は芸人になってからのいじめられ体験。常々彼は嫌われることを恐れない。9割の人たちが嫌いで1対9なら弱いけど、“1万対9万”になったら、けっして少数派ではなくなるという持論があって、私も大いに賛同します」

■「人を“さらし者し笑う”ことはやめよう」

 NSCではどんな授業をしているのか。

「私の授業は初回に、NSCに来ていることを幸せに思う、きちんと挨拶をするなど本多版の『芸人としての心構え20』という基本を伝えて、あとはネタ見せです。セオリーにとらわれずに好きなことをやりなさいと言っています。だから一番粗削りで下手くそな時を見ているとも言えますね。個性の芽を摘みたくないんです。一見、意味のわからないネタでも、彼らには彼らの理屈がある。野性爆弾や天竺鼠はその最たるものでしたね。ナイナイは最初ボケとツッコミが逆だったんで私が『逆やろ』と言って代えたこともありました」

 ただ、ひとつだけルールがある。

「人を“さらし者にして笑う”ことは、人としてやめておこう、ということだけは指導します。お客さんが一生に1回しか見ないかもしれない生の舞台。そのとき面白かったと言ってもらいたいですから。スーパーマラドーナがツッコむ時に『殺すぞ』を使っていたのですが、関西人でもあまりに表現がキツいので『しばくぞ』に変えてと言いました」

 スーパーマラドーナといえば、「M―1」審判員の上沼恵美子に悪態をついた問題もあった。

「十二分に反省しているので、これからの活動を見守ってやってほしいと思います。彼らの世代は上沼さんの凄さをライブで知らないので、ああいう発言にもつながったのでしょう。天才女流漫才といわれていた『海原千里・万里』時代から、上沼恵美子として活動されるようになった今も、漫才には多大なリスペクトをされている。一時期、上沼さんのラジオ番組の構成をさせていただきましたが、その切れ味鋭いツッコミ、切り返しを目の当たりにして、自分の担当した番組で思わず吹いてしまったのは上沼さんだけ。リアクションは大抵読めるのですが、私の予想などはるかに超えた笑いを取れる腕のある方で、本当に驚かされました」

 テレビ番組の“悪ノリ”企画が増えていることへの懸念もあるという。

「クロちゃんを夜中、としまえんで檻に入れて騒ぎになった企画も、人をさらして笑いものにする、まさに“いじめの構造”です。笑わせ方が根本的に間違っている。また、SNSがいじめを助長していますが、匿名が大きな要因だと思います」

 いじめ撲滅について思うことは。

「個性をそれぞれが認め合うこと。みんなが多くの奇跡が重なってこの世に生を受けていることを自覚すること。そして“命を絶つ”以外の選択肢がいくつもあるんだということを知ってほしいですね」

▽ほんだ・まさのり 1958年、大阪府生まれ。漫才作家。オール阪神・巨人の漫才台本をはじめ、テレビ、ラジオ、新喜劇などの台本を執筆。また吉本NSCの名物講師で、1万人以上の芸人志望生を指導。

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