「教育は生もの…」故・阿部進さんが本紙に語った“遺言”

「教育は生もの…」故・阿部進さんが本紙に語った“遺言”

教育について熱く語った阿部さん(6月7日撮影、右は03年取材時)/(C)日刊ゲンダイ

 10日未明、胃がんのため亡くなった教育評論家の阿部進さん(享年87)。“カバゴン”の愛称で親しまれた阿部さんは、小学校教員時代の1961年に発表した「現代子ども気質」、62年の「現代っ子採点」が話題となり、一躍注目を浴びた。「現代っ子」という言葉は阿部さんの造語。

 その後は教育評論家として活躍し、60年代後半から90年代にかけて多数のテレビ・ラジオ番組に出演。TBSラジオ系で放送された「全国こども電話相談室」では、故・永六輔らと共に人気回答者になった。

 日刊ゲンダイは、阿部さんが亡くなる約2カ月前の6月7日にインタビュー取材を行っていました。ここに哀悼の意を表し、本紙8月9日発売号(10日付)で紹介した「あの人は今こうしている」を掲載します。

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【あの人は今こうしている】

 名前を聞いてピンとこなくても、“カバゴン”といえばひざを打つ人も多いのでは。1960年代後半から90年代にかけて、ワイドショーや教育番組に引っ張りだこだった教育評論家・阿部進さんだ。最近は見ないが、どうしているのか?

■壮絶闘病中も前向きだった阿部さん

「ここ8年ほどは病気との闘いでね。今じゃ車椅子生活なんです。朝、目が覚めたら『今日も生きてた!』って、もうそれだけでうれしくてうれしくて。命あることに感謝しながら暮らしてますよ」

 横浜市金沢区の住宅地。自宅にお邪魔すると、阿部さんがリビングで迎えてくれた。

「30代、40代のころは100キロ近く体重があったもんだから、当時から糖尿病を抱えててね。で、ミネラル水と天然塩で作った塩水をガブガブ飲む療法と食事制限で60キロ台に落としたのはいいんだけど、2009年に胃がんが見つかり抗がん治療を始めてからが大変だった」

 まず10年末に帯状疱疹を発症。11年1月に転倒して右肩を骨折し、7月に人工関節手術。同年9月、心不全。帯状疱疹のウイルスが左目に入り角膜ヘルペスを起こしたため、10月、11月と2回手術をするも改善せず、12年2月に左目を失明。16年6月に転倒して股関節を骨折。人工骨頭置換手術を行い約5カ月入院……。

 また、2歳年下の奥さまも09年12月に新型インフルエンザのワクチンを接種したところ、副作用でギラン・バレー症候群(運動神経障害のため手足に力が入らなくなる難病)などを発症し、人工呼吸器を必要とする寝たきりだという。

「それやこれやで私たち夫婦が同居し、2人の妹と交代で両親の介護をしているんです」(長男の昌浩さん)

 とはいっても、阿部さん自身はいたって前向きだ。

「週に2回のデイサービスが楽しみでね。秋をメドに自立歩行しようとリハビリ中なんです。知らない業界や人生の歩みを聞いてると、いろんな情報が得られるから面白いですよ」

 一方、自宅で小学生に国語、算数、理科の実験を教える私塾を再開。小4の男子が週に1回通ってくる。

「僕の授業は、学校の先を行くんじゃなく、苦手な部分を補ってる。例えば国語は漢字の読みがメーン。小学校で習う約1000字を、自然、植物、道具というふうに分類し、右に音読み、左は訓読みを記したオリジナルドリルを作り、スラスラ読めるようにする。読解力が増すと、新聞や書籍も読むようになり自然と国語力がアップするんです」

 理科の実験は、水や洗剤、輪ゴム、ペットボトルなど身近にあるモノを使い、自宅でも再現できるのがミソだという。

「子供と話すと、言葉遣いや流行など今の環境がリアルに分かり、それをヒントに次の授業に生かしていく。教育は生ものだから、立ち止まってちゃいけないんですよ」

■「漫画害悪論」に手塚治虫と抗議

 さて、1930(昭和5)年6月11日、東京に生まれた阿部さんは、19歳の時に川崎市内の小学校の代用教員になり、65年に退職するまで教員を続けた。その間、61年に著した「現代子ども気質」、62年の「現代っ子採点法」が話題となり、現職教諭の教育評論家として注目を浴びた。

「百科事典にも載ってる“現代っ子”という言葉。実はあれ、私が『現代っ子採点法』で“現代に強い子供”という意味で使ったのが最初なんです。“今風の子供”の意味で一般的になったのはご愛嬌ですね」

 退職後は手塚治虫、寺山修司らと「現代子どもセンター」を設立。規制が強まりつつあった教育現場に次々と子供目線の提言を行い、高く評価された。

 TBSラジオ系で放送され、子供たちに大人気だった「全国こども電話相談室」のレギュラー回答者として、故・永六輔、無着成恭らと加わったのもこのころ。以降は、モノ言う教育評論家としてテレビ、ラジオ、講演会と全国を駆け回った。ちなみに、愛称の“カバゴン”はあるテレビ番組の公募でネーミングされたのだそうだ。

「漫画害悪論に手塚先生と抗議したり、PTAの猛反発を食らった永井豪原作のドラマ『ハレンチ学園』の次号を予告。その時々で少数派になりがちなことに、あえて『違うんじゃないか?』と異議申し立てをする。それが私のスタンスだった。今みたいに、みんなが漫画必要論を言ってるのを見ると、『漫画害悪論』を言う骨のある若い評論家に出てきて欲しいね。アハハハ」

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