映画「ユリゴコロ」監督が太鼓判 「吉高由里子は愛憎が似合う」

映画「ユリゴコロ」監督が太鼓判 「吉高由里子は愛憎が似合う」

“監督泣かせ”の作品を映像化(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

 23日から公開となる映画「ユリゴコロ」(東映・日活)は、不思議な引力がある。原作は「映像化は不可能」といわれた沼田まほかる氏の同名ミステリー小説。ダークで心がザワザワするストーリーだ。脚本・監督を務めた熊澤尚人氏(50)は、クランクインの前に掲げたビジョンと、主演女優・吉高由里子(29)だけが持つ魅力を引き出すことで見応えのある映像作品に仕上げた。

 本作は、人の死でしか心を満たすことができない女性・美紗子の物語。原作は2012年に大藪春彦賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた。複数のチームが映画化に名乗りを上げ、激しい争奪戦が繰り広げられたが、企画が動き出した途中で頓挫したケースもあったという。伏線やトリックが複雑で、映像化すると物語として成立しない危険性もはらんでいる。“監督泣かせ”の作品だった。

「イヤミス」(読んで嫌な気持ちになったり、後味の悪さを楽しむミステリー)といわれるジャンルだけにエグいシーンも多い。だが、熊澤監督は「エグさこそが『ユリゴコロ』の持ち味。先の展開が知りたい、続きが読みたくなる原作の世界観をリスペクトして脚本を手がけた」と話す。

■殺人者だけど、サイコキラーではない

「ただし、殺人者を肯定する作品にはしたくなかった。やっぱり殺人は許せない犯罪だからです。極端な話をすれば映画はフィクションであり、殺人者を肯定する作りもできるけれど『人を殺す行為は決して許されるものではない』という考えをプロデューサーらと共有し、最初からこれを明確なビジョンとして掲げられたからこそ映像化できた。基本的な道徳、倫理ですが、社会と映画の関係や作り手としての立ち位置を明快にすることが大事だったんです」

 人を殺すことに心のよりどころを求める美紗子を演じたのは、5年ぶりの映画主演となった吉高だ。

「殺人者だけど、サイコキラーではない美紗子役は彼女以外に考えられませんでしたね。目の芝居、表情、たたずまい……吉高由里子の全部で、美紗子の魔性や陰を表現してくれました」

「主人公に共感できない」と話す吉高とは5、6時間、酒を飲みながらとことん話し合った。

「たとえ共感できない役でも、掘り下げることが大事なんです。バラエティー番組に出ている吉高さんはポワーンとしたファニーな感じですが、本当はとても頭の回転が速い。面白い発言ができるのは、発想力が豊かでカンも鋭い証拠。現場でもこちらの意図に一発で簡単に寄せてくるんです」

 熊澤監督は一度、デビューして間もない10代の頃の吉高に会ったことがあるという。当時から光るものを感じ、「負を背負っている役をやらせたら“絶品”だと思っていた。今回やっと声がかけられました。吉高さんは愛憎や闇が似合う女優。本人は失礼だって怒るかもしれないけれど(苦笑い)」。

〈ユリコのユリゴコロ〉は語呂がいいが、キャスティングの理由はそこじゃない。

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