安室奈美恵の引退宣言で思い出す 母・恵美子さんの“遺言”

安室奈美恵の引退宣言で思い出す 母・恵美子さんの“遺言”

2000年には九州・沖縄サミットで熱唱(C)日刊ゲンダイ

 芸能人の仕事に頂点はない。役者・歌手としてどんなにヒット作を作ろうと、まだ上を目指し、年齢に関係なく仕事を続ける方が大半。ただし、山口百恵さんのように「女性としての幸せ」と仕事よりも家庭を選択。新たな頂を目指し引退する人もいる。

 世間を仰天させた安室奈美恵(40)の引退は前例のないケースだった。アーティストとして人気も実力も衰えのない安室。「なぜ」と惜しむ一方で、安室らしい「美学」という声も聞く。

 振り返れば、彼女らしい決断とも思う。小学4年で「沖縄アクターズスクール」に通い、中学卒業後、芸能界に入るのも安室自身の決断。筆者と親交の深かった母親の恵美子さんはかつてこう話していた。

「奈美恵はなんでも自分で決める子。私にはだいたい事後報告でした」

 SAMとの結婚もしかり。人気絶頂期の出産・育児休暇を不安視したのは母親も変わらなかったが、「私も中学を出て、集団就職で上京。二十歳の時にできちゃった婚でしたから、反対などできません。それより奈美恵と私の人生が重なるのが不思議でした」。

 周囲の心配をよそに復帰後の安室はパフォーマンスに磨きがかかり、人気はさらに上昇。ダンスミュージックの第一人者としてライバルの追随を許さなかった。すでに頂点を極めた感もあるが、ファンを魅了する安室の歌い踊るスタイルはアスリートでもある。やがて肉体的な限界はくる。仮に50歳になっても肉体を保ちながら同じパフォーマンスは次第に負担になる。といって、スタイルを変えドレスでしっとりと歌を聴かせる安室の姿は想像つかない。タレントや女優に転身も、ブレずに続けてきた安室スタイルの意味がなくなり、美学に反する。

 結果、出した結論が引退。それはスポーツ選手に似ている。プロ野球で活躍した城島健司氏は、「捕手として野球を続けられないのなら、捕手として終わらせたい」というのが引退理由と聞いた。安室とかぶる。

 安室の場合、私生活も引退にリンクしているように思う。仕事とは対照的に私生活は「母の死・離婚」と順風ではなかった。

「人生は良い事も続かないけど、悪い事も続かない。すべてがうまくいく人生なんてないよ」という母親の口癖を思い出す。

 歌手としてはすでに最高峰に登頂したが、女性としての幸せは登山道の変更などもありまだ7合目程度。引退で今度は誰にも邪魔されずマイペースで登れる山。その先に再婚も考えられる。

 母親の再婚は、42歳だった。安室が引退する1年後に迎える年齢である。
(二田一比古/ジャーナリスト)

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