2017年ドラマ総括 TBSの復活と昼ドラ「やすらぎの郷」の革命

2017年ドラマ総括 TBSの復活と昼ドラ「やすらぎの郷」の革命

各局から様々なドラマが生み出された(C)日刊ゲンダイ

コラム【TV見るべきものは!!】

 この1年、何本もの“見るべきドラマ”を生み出してきたのはTBSだ。緊張感のあるセリフの応酬が見事だった「カルテット」(出演・松たか子ほか)、共感しづらいヒロインのダブル不倫を描いた「あなたのことはそれほど」(波瑠)などの意欲作を連打した。

 特に今期は、ドラマの王道感に満ちた「陸王」(役所広司)、マニアックな笑いの「監獄のお姫さま」(小泉今日子ほか)と話題作が並んだ。よく練られた脚本、興味深い登場人物、さらに物語にふさわしいキャストに支えられており、その作り方は基本的に正統派である。

 また「陸王」の伊與田英徳や福澤克雄、「カルテット」の土井裕泰、「あなそれ」「監獄のお姫さま」の金子文紀ら力のある作り手たちによる“署名性のあるドラマ”であることも特色だ。「ドラマのTBS、復活」と言える1年だった。

 今年のドラマ界で、大きな収穫の一つが「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)の出現だろう。現在のテレビを支える“大票田”でありながら、高齢者層はずっとないがしろにされてきた。このドラマは、自身も高齢者である脚本家・倉本聰が仕掛けた、高齢者による、高齢者のためのドラマという一種の反乱、真昼の革命だ。

 第1の見どころは、浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫といった大女優たちが見せる、ノスタルジーに満ちた虚実皮膜の人間模様だった。次に、長い間この国と芸能界を見続けてきた倉本が、物語の中に仕込んだ鋭い社会批評である。それは介護問題からテレビ局の視聴率至上主義、さらに禁煙ファシズムの風潮にまで及んでおり、それらがスリリングにして痛快だった。舞台は現代だが、描かれた世界観はまさに昭和である。

「やすらぎの郷」と同時期に放送されたのが、NHK朝ドラ「ひよっこ」だ。ヒロインは、高校卒業後に東京で働き始める谷田部みね子(有村架純)。架空の人物であるみね子は何者でもないかもしれないが、家族や故郷、そして友達を大切に思いながら懸命に、そして明るく生きていた。いわば等身大のヒロインであり、だからこそ見る側は応援したくなった。

 暮らしも社会も緩やかだった昭和30年代。経済大国へとこの国が変貌していく40年代。その境目、東京オリンピックが開催された昭和39年から物語を始めたことで、私たちが何を得て、何を失ってきたのかを感じさせてくれたのだ。

 他に印象に残ったドラマとして、日本テレビ系ではアラサー女子の恋と仕事に関する“勘違い”が笑えた「東京タラレバ娘」(吉高由里子)。“隣の美人妻”と“秒殺アクション”をダブルで堪能した「奥様は、取り扱い注意」(綾瀬はるか)がある。またフジテレビ系には「嘘の戦争」(草なぎ剛)、今期の「刑事ゆがみ」(浅野忠信)という異色の秀作があった。

 そして忘れてはならないのはテレビ東京系「ドラマ24」枠だ。今年も「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら」(遠藤憲一ほか)、「下北沢ダイハード」(古田新太)といった、深夜ならではの刺激的かつ実験的なドラマが楽しめた。

 というわけで、今年の「TV見るべきものは!! ドラマ大賞」である。豊作のTBS作品も捨てがたいが、今回は「やすらぎの郷」に決定した。テレビ界に一つの風穴をあけたこと、新たな可能性を示したこと、何より82歳の現役脚本家・倉本聰の挑戦に敬意を表したい。第2位には「陸王」。そして第3位は「カルテット」だ。

 2018年もぜひ、続きが見たくなるドラマ、クセになるようなドラマが一本でも多く現れてほしいと願っている。

(碓井広義/上智大学教授=メディア文化論)

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