新幹線内でもネタ合わせ M-1準優勝「和牛」の苦労と覚醒

新幹線内でもネタ合わせ M-1準優勝「和牛」の苦労と覚醒

2年連続準優勝の「和牛」(C)日刊ゲンダイ

コラム【2018 新春「笑」芸人解体新書】

「M―1グランプリ」で毎年のように優勝候補と騒がれているのが、水田信二(37=写真左)と川西賢志郎(33=同右)のコンビ「和牛」である。漫才のうまさには定評があり、プロの芸人たちからも絶賛の声が相次いでいる。

 しかし、彼らがここまでの地位を確立するまでには並々ならぬ苦労があった。2006年にコンビを結成した彼らは、大阪を拠点に活動していた。大阪のお笑いコンテスト番組でもある程度のところまで勝ち残るだけの力はあったのだが、決め手に欠けていた。

 殻を破るきっかけになったのは、水田の理屈っぽいところを前面に押し出したネタを作ったことだ。

 漫才の冒頭で、ツッコミ担当の川西が「頑張っていきましょう言うてやってますけども」と決まり文句を口にすると、ボケ担当の水田がすかさず「あ、待って待って」と話を遮り、「『頑張っていきましょう』って言った?」と詰め寄る。その前に「頑張っていきましょう」という言葉を発していないのに「『頑張っていきましょう』言うて」と言うのはおかしい、と疑問を投げかけるのだ。

 川西は必死で抵抗するが、仏頂面の水田はどこまでも追撃の手を緩めない。水田の生来の生真面目さと理屈っぽさが生かされた革新的な漫才だった。この形のネタが評価され、14年には全国ネットの漫才コンテスト番組である「THE MANZAI」で初めて決勝に進んだ。そこからは快進撃が続き、15〜17年には3年連続で「M―1」決勝進出を果たした。

 中でも、昨年は特に力が入っていた。初めて全国ツアーを行い、一年かけてみっちりとネタを練り上げていった。移動中の新幹線でも隣の席に座り、ネタ合わせを続けていたというエピソードからも、尋常ではない彼らの意気込みが伝わってくる。

 昨年末の「M―1」決勝で和牛が披露した2本のネタは、技術的にも申し分なく、前半の内容がすべて後半の展開への伏線になっているという構成力も光っていた。

 しかし、最終決戦で1票差でとろサーモンに敗れて、2年連続の準優勝に終わってしまった。悲運の“M―1戦士”は今年こそリベンジを果たせるのだろうか。
(ラリー遠田/お笑い評論家)

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