“3人の美少年”莟玉・染五郎・隼人 次世代スターは飛躍の秋

“3人の美少年”莟玉・染五郎・隼人 次世代スターは飛躍の秋

市川染五郎(C)日刊ゲンダイ

「中村梅丸」は、歌舞伎ファン以外には、ほとんど知られていないだろう。中村梅玉の部屋子である。1996年生まれで、23歳。若い女形として、歌舞伎座では梅玉の出る月に脇役で出るくらいだった。海老蔵や菊之助の息子のように、初お披露目、初舞台のたびに話題となる御曹司ではない。

 それでも少しずついい役がつくようになり、数年前から正月の浅草歌舞伎にも出て、昨年夏はマンガが原作の新作歌舞伎「NARUTO」でヒロインの大役を得て、ファンも増やした。

 その梅丸が、今月の歌舞伎座で、梅玉の養子となり、「莟玉」と名乗ると披露された。梅丸としてようやく浸透してきたところでの改名はもったいないとも思ったが、これから飛躍しそうなので、このタイミングのほうがいいのかもしれない。

 莟玉は美形なので、これまでは女形が多かったが、今後は立役もやりたいとの意向で、襲名披露では「菊畑」の「虎蔵実は源牛若丸」をつとめた。前半は虎蔵で、後半、実は牛若丸だと分かる。その違いを表現しなければならない役だが、自身が梅丸から莟玉へと変わる姿と重なる趣向になっている。

 昨年の「NARUTO」で主役をつとめた中村隼人が、10、11月は新橋演舞場でスーパー歌舞伎「オグリ」で、市川猿之助とダブルキャストで主役を交互出演している。猿之助主演の日と両方見たが、若く凜々しい正義のヒーローは、隼人のほうが適役だ。だからこそ、猿之助もダブルキャストに抜擢したのだろう。

 猿之助は「オグリ」で演出も担っている。もともとプロデューサー志向も強く、「ワンピース」では尾上右近を抜擢してスターにしたが、隼人も猿之助によって、次代のスターとして浮上してきた。猿之助はまだ若いが、名伯楽である。次は誰を見いだすのか。

 御曹司の中の御曹司である市川染五郎は、父・松本幸四郎と歌舞伎座で「連獅子」を共演。どちらが親か分からないほど、立派だ。姿勢がいいし、動きの切れもいい。染五郎は美少年だがひ弱ではない。たくましい獅子を感じさせるのだ。「勧進帳」の弁慶に憧れているようなので、早めに、20歳前後にやったほうがいい。

 というわけで、今月は3人の美少年が、歌舞伎座と新橋演舞場で奮闘している。元美少年たちはというと、市川海老蔵は、シアターコクーンを借りての自主公演で「実盛物語」を自らの新演出で出す。尾上菊之助は木村拓哉主演のドラマで敵役を演じているが、12月は新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」の主演が控えている。

(作家・中川右介)

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