「麒麟がくる」がやって来た! 岐阜県に早くも大河特需が

「麒麟がくる」がやって来た! 岐阜県に早くも大河特需が

岐阜県の「大河ドラマ館」(C)日刊ゲンダイ

(文・君野那波)

 2020年大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公である明智光秀、その主君である斎藤道三、盟友である織田信長。それぞれのゆかりの地が点在する岐阜県で1月11日、「大河ドラマ館」がオープンした。不祥事の影響でドラマ開始が延期になり、関係者をやきもきさせていたが、当初の予定通りの日に、ドラマより先行オープンとなった。

 ドラマ館は、信長の居城岐阜城のある岐阜市、光秀生誕の地とされ明智城跡がある可児市、同じく生誕の地とされ光秀の母の墓もある恵那市、の3カ所にできた。明智光秀の出自については諸説あり、山崎の戦いののち逃げ延びて晩年を岐阜の地で過ごしたという説もあり、岐阜県内の山県市や揖斐川町などが光秀ゆかりの地があると手を挙げている。

 岐阜市の大河ドラマ館は、岐阜城がそびえる金華山の麓の市歴史博物館内にあり、光秀、道三、信長の衣装レプリカ、合戦シーンのジオラマとともに、NHKが用意したPR映像・制作秘話も映像のきれいなシアターで見ることができる。可児市のドラマ館は広大なバラ園で有名な「花フェスタ記念公園」に作られた。可児市にはかつて明智荘(あけちのしょう)と呼ばれる地があり、ドラマ館では光秀が若い頃の舞台となる明智荘のジオラマや光秀役の長谷川博己が着る衣装のレプリカが展示されている。恵那市のドラマ館は観光施設「大正村」からほど近いところにあり、周辺にも史跡が点在している。衣装レプリカや等身大パネルのほかに、光秀が生きた時代の山城を巡る攻防についての展示がある。

■オープン初日に2900人が来場

 オープン当日は地元だけでなく東京など遠方から歴史ファンが訪れ、想定を越える計2900人が来場した。オープンから数日たって、愛知県や関西からツアーバスが立ち寄り、戦国を扱った大河が恋しい中高年客が熱心に展示を見ている姿が見られた。しかし、大河ドラマのお墨付きがあるからといって、やや距離がある場所に3つも大河ドラマ館を設置して人が来てくれるのかという心配もなくもない。明智光秀は「逆臣」「謀反人」というイメージが先行し、実際の資料も少ない中、思惑通りにドラマに人の心を取り込めるかどうかは今のところ未知数だ。

 戦国武将ゆかりの地のPRは信長、秀吉、家康を抱える、お隣の愛知県や名古屋市がうまい。09年に始まった名古屋の「戦国おもてなし武将隊」の成功を受け、同様の武将隊は全国各地に広がり、今は80を越えているという。特別史跡で本丸御殿を復元し、周辺の観光施設を充実させた名古屋城には岐阜の小さな城跡が束になってもかなわない。ただ、歴史資源は岐阜に多く存在しているし、希望はある。

 斎藤道三、織田信長の居城であった岐阜城は1956年に復興されたものではあるが、大河ドラマ放送に合わせて城内の展示をリニューアルした。ここ数年金華山麓の発掘調査が進み、宣教師ルイス・フロイスの著書に記述があった信長の館跡や岐阜城の天守土台の石垣が見つかるなど、歴史の歯車が動きつつある。城自体は近代的ではあるが、城からの眺めは、琵琶湖を望む安土城には負けるものの、信長の天下人への野望を十分感じることができる。

■山城ブームも追い風

 ここ最近の城ブームで、岐阜にある山城も注目されている。日本一高い場所にあり、雰囲気のある城下町を抱え、霧に包まれる姿が幻想的な岩村城跡(恵那市)、巨岩の上に建てられた苗木城跡(中津川市)、信長の家臣森氏の居城であった美濃金山城跡(可児市)が岐阜三大山城として岐阜県に「岐阜の宝もの」と認定された。恵那市岩村町の城下町は実は18年の朝ドラ「半分、青い。」のロケ地で、観光客も増え、県内どこでも五平餅が売れたらしい。美濃金山城跡では甲冑を着て山城を散策する「イクササイズ」が話題になっているという。

 それに加え、岐阜には天下分け目の合戦の地、関ヶ原がある。ネームバリューは抜群なのに長い間放置されてきた関ヶ原の古戦場はたびたび来る大河ドラマの波、歴史ブームを追い風にここ近年は自らイベントを仕掛け、全国から歴史ファンを集めてきた。

 関ヶ原はJRの駅を降りてすぐに散策できるアクセスの良さが売りである。老若男女、それぞれの体力に合わせてぶらぶら史跡を散策して楽しむことができる。しばらく置いていかれていた田舎町であるがゆえ、小さな川が流れ、平らな土地が続き、陣が置かれた丘が点在する風景が、かつてここで合戦があり、武将が陣を置き、馬を走らせていたという当時の様子を容易に想像させるのだ。実際に、笹尾山の石田三成の陣跡に登って、古戦場を見渡すと、感激する歴史ファンも多いという。

 まあ、岐阜の人はだいたい控えめで、魅力ある観光地の上位に選ばれなくてもがっかりしたり、へそを曲げたりしない。「また何かあったら来てもらえばいい」くらいで、おおらかさ、人のあたたかさがある。ただ、昨年のような不祥事が起きなければ、とは願っているかもしれない。

▽君野那波(テレビ批評家・ライター) 1967年福岡県生まれ。大学在学中に新聞発行に関わるも、マスコミには就職せず東京で日本語教師に。結婚後、テレビの中やネット上に巻き起こることを静かに眺めながら、たま〜につぶやき、子育てや主婦業に勤しむ。趣味は動物園・水族館。岐阜県在住。

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