殴られ踏みつけられ…凄むビートたけしを激撮した写真誌のカメラマンたち【芸能記者稼業 血風録】

殴られ踏みつけられ…凄むビートたけしを激撮した写真誌のカメラマンたち【芸能記者稼業 血風録】

逮捕後初の記者会見でのビートたけし(中央)/(C)日刊ゲンダイ

【芸能記者稼業 血風録】#9

「相手が怒鳴ってきたらその瞬間の顔。殴ってきたら拳が向かってきた瞬間。その一瞬を撮れば決定的な写真になる」

 写真誌時代に教えられた言葉だが、多少オーバーにしても、瞬間を経験する機会の多いカメラマンは自然に体が反応し、シャッターを押していた。

「目の前で車にひかれた人を見たらどうする」と質問をすれば、カメラマンは「シャッターを押してから助ける」という。

 森進一が「おふくろさん」の歌詞の一部を勝手に変えて歌唱したことで、作詞家の川内康範氏とトラブルになった。青森から上京した川内氏をメディアは直撃。執拗な取材に激怒した川内氏。持っていた杖を振り回し大立ち回り。身をかわしながら杖を振り下ろした瞬間を撮ったカメラマンがいた。

 また歌手の千昌夫が借金問題などで追い回されていた頃、「俺はマスコミのおもちゃじゃない!」とカメラに向かってくる激怒した千の顔をアップで撮った。そんな直撃写真は枚挙にいとまがないが、身をもって体験した直撃がある。

 ビートたけしが「フライデー殴り込み事件」を起こし謹慎生活を送っていた頃だった。ある夜、六本木の高級クラブで飲んでいる情報が入ってきた。現場に直行。店内は難しく、出てくるところを直撃することにした。

 揉めることを想定し、カメラマンを2人にした。揉めた際の押さえとして離れた場所から望遠で狙った。カメラマンを伴い直撃。案の定、たけしは怒りの声を上げて顔を近づけてきた。

 一緒にいたテレビ局員がたけしを制止。大事には至らなかったが、後ろのカメラマンは一連の流れを撮っていたことを目で合図してきた。前にいるカメラマンも一部始終を収めている。直撃としては完璧だった。最終的に私の背中越しから撮ったたけしの怒った顔を掲載した。

 社会事件でも現場が過熱することが多かった昭和。テレビでもおなじみの光景が凶悪犯の護送場面だ。犯人の顔を撮ろうと直撃するカメラマンと下を向いて顔を隠す犯人。両者の間にガードする警察官が入り現場は大混乱となる。

 潜り込んで下から顔を撮ろうとするカメラマンを警官が制止する。カメラを警官に当て、ひるんだところを撮るツワモノもいたが、「公務執行妨害」で逮捕された。行き過ぎた取材と記者も一緒に厳重注意を受けたこともあった。

■殴られ、踏みつけられながらもシャッターチャンスを狙う週刊誌のカメラマンたち

 1989年、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤が逮捕された。多くのメディアが宮崎の顔を狙った。警官・報道陣で揉みくちゃの中、唯一、顔写真を撮った週刊誌があった。あの中で「どうやって撮った」と話題になったが、そのカメラマンは警官のガードを受けるととっさに道路に寝転がり踏みつけられながら真下からカメラを向け、うつむく犯人の顔をほぼ真正面から対峙する形で撮ったのだった。そのアップの顔は雑誌の表紙となるスクープだった。 =つづく

(二田一比古/ジャーナリスト)

関連記事(外部サイト)