「ANZEN漫才」あらぽんさん 100円のコッペパンで腹を膨らませた【役者・芸人「貧乏物語」】

「ANZEN漫才」あらぽんさん 100円のコッペパンで腹を膨らませた【役者・芸人「貧乏物語」】

「ANZEN漫才」のあらぽんさん(右)/(C)浅井企画

【役者・芸人「貧乏物語」】

 歌ネタやモノマネネタなど多岐にわたる芸風で人気のお笑いコンビ「ANZEN漫才」のあらぽんさん(34)。保育園から一緒の相方のみやぞんさんとバンドの前説、土手での漫才、草むしりのバイトと苦労をともにしてきた……。

  ◇  ◇  ◇

 みやぞんとは保育園から知り合いで、最初はお笑いの真似事をやっていて、中学3年の時に僕が一度「お笑いやろう」と誘ったんです。別々の高校に通っていた頃は2人でショートコントを作る程度で、まだお互い本気ではなかった。

 高3の時、就職どうするという話になった時にみやぞんが「とくに決まってない」と言うので、僕がもう一度「お笑いやろうか」と誘い、本気で始めました。

 でも、僕らはお笑いの事務所に入らず、バンドの前説から芸人スタート。なぜかバンドやってる人に知り合いが多くて、卒業の半年後、「ライブの時にネタやりなよ」と誘われ、初めて人前でネタをやりました。バンドのライブで、しかも、お笑いの養成所も行かなかったから、お笑いの知識もまったくなかったのにですよ。

 ネタがオチに向かうにつれて、バンドの音合わせが仕上がってきて音量がでかくなる。ドラムのドドドン! とかギターのチューニングのギュイーンで、肝心のオチがお客に聞こえない(笑い)。

 そもそも好きなバンドを見るために来ているお客だから、漫才を全然聞いてないですし。そういう場が僕らのお笑いの始まりでした。

 その後、「うちのライブでもやってよ」といろんなミュージシャンから声がかかり、3〜4年間ライブハウスでバンドとバンドの間のセットチェンジや音合わせの時間にネタをやってました。

 勉強だからギャラはもらえなかったし、もらえてもご飯代。しかも、バンドの入れ替えに30分かかる日は30分ノンストップの漫才を作っていました。ネタの構成力もまったくないのに。

 3〜4年そんな下積みをして初めてお笑いの事務所に所属した時に、ネタ見せが3分と言われて衝撃でした(笑い)。他の若手は最初に3分のネタ作りから始めるのに僕らは30分の漫才から始めたから、30分のネタを3分に縮めるのにすごい苦労して。2人だけでずっとやってきたので、お笑いに無知で、何も知らなかったんです……。

 事務所に入った翌月に思い切ったことをやろうと考え、単独ライブをやりました。地元の足立区で1回目は60人くらい入る場所でしたが、その後はお客さんを集客できないのに、300人や400人キャパのでかいホールを借りて、毎年やってました。

 僕は中華屋でアルバイトしてましたけど、単独ライブのおかげでお金はなかった。ライブは全部、実費でやるし、グッズを作っても全然売れなくて毎回在庫を抱え、事務所の芸人に手伝ってもらったので、人件費もかかりましたから。

 チケットは足立区で路上ライブをやって売ってました。メイン通りは怒られちゃうので、公園とか路地裏で通りすがりの人に「ちょっと漫才見てもらえませんか」と呼び止めて、少人数の人たちを相手にやってましたよ。

 全然ウケなかったですね。「頑張って、頑張って」と、見てくれてる人に言われるくらい未熟でしたし、チケットも1日で1枚売れればいい方でした。土手でも草野球帰りの人たちを呼び止めて、漫才やったことがありましたね。

 僕らANZEN漫才はすぐ売れたと思われがちですけど、バンドの前説時代が3〜4年、その後も何年も売れてないんですよ。実は下積みが長かったんです。

■節約のため電車に乗らず 中型バイクに2人乗り

 一番キツかったのは事務所が少し認めてくれてオーディションがたくさん入った頃。週に4〜5日はオーディションだから、バイトができなくなったんです。一つの番組に芸人が何十組とオーディションを受けてる時代だったから、全然受からなくて、テレビには出られず、お金は入ってこない。

 節約は電車に乗らないこと。僕の中型バイクにみやぞんと2人乗りしてオーディションに行ってました。

 それから食事のタイミング。1日に3つのオーディションがある日は空き時間に大盛りとかちょうどタイムサービスの店を探して入るようにしてました。それとコンビニの100円のコッペパンは腹が膨れるのでよく食べてましたね。ジャム&マーガリン(笑い)。

 知り合いから「だれも住んでない家を売りに出したいから、草むしりして」とバイトを頼まれて行ってみたら300坪くらいの敷地! しかも、草刈り機がないと無理なレベルに草ボーボーに生い茂って。2人で必死にやりました。

 仕事が入ってからは好きなものを食べられるようになったのが大きいですね(笑い)。後輩を連れてメシにも行けますから。あの頃に戻りたいとは思いませんけど、でも、あの数年間は「夢を追いかける感」があって充実してたなと今は思っています。

 (聞き手=松野大介)

∇本名・荒木祐 1985年10月、東京都生まれ。保育園時代からの友達のみやぞんと2009年に「ANZEN漫才」を結成。テレビなどで活躍。

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