「うまぴょい伝説」は単なる電波ソングじゃない 音楽作家が解説する「唯一無二の特徴」とは

「うまぴょい伝説」は単なる電波ソングじゃない 音楽作家が解説する「唯一無二の特徴」とは

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【連載】MUTEKI DEAD SNAKEのBUCHIAGARU!! music

競馬を題材にしたスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」が、ネット上で大ブームを巻き起こしている。

ゲームとしての出来の良さ、個性豊かなキャラの魅力...。「ウマ娘」の魅力を挙げていけばキリがないが、忘れてはいけないのが、作中で流れる「うまぴょい伝説」という楽曲のインパクトだろう。

一度聴いたら頭から離れない「うまぴょい伝説」、サウンド的にはどんな特徴があるのだろう。音楽作家のMUTEKI DEAD SNAKE(ムテキデッドスネーク)氏が解説する。

カオスなメロディに負けない歌詞のパワー

現在大ヒット中のスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」のイメージソング「うまぴょい伝説」。いわゆる「電波ソング」というジャンルの曲で、ゲーム内で披露される楽曲の中でもひときわ存在感を放っています。

アプリにハマっている知人にこちらの楽曲を紹介され、あまりの素晴らしさに思わず自分もアプリをダウンロードして、おかげさまで今では毎日ウマ娘の育成に勤しむようになってしまいました。

◆唯一無二の言葉選びにBUCHIAGARU!!

こちらの楽曲を聴いていてはじめに衝撃を受けたのは歌詞の言葉選びです。ゲームのコンセプト上、馬やレースに関する言葉が使用されるのはわかるのですが、それをふまえた上でも、サビの1行目「きみの愛馬が!」というフレーズを聴いた時はめちゃくちゃ笑ってしまいました...笑

「きみの愛馬が!」でサビがはじまる楽曲、多分後にも先にもこの曲以外出てくることがないと思うんですよね。それ以外の歌詞も、「ウマ娘が走っている」、「レースをする」、「なんか楽しい!!」みたいな、それ以外何も言っていない。

余計なことを一切言わない、いや、むしろ余計なことだけで構成されていると言っても過言ではないサイコーな言葉だけが並べられており、とにかくテンションが上がります!

1番のAメロの最後に出てくる「あかちん塗っても(なおらないっ)(はーっ?)」というフレーズ、この時代に赤チンを持ってくるセンスは本当にすごいなと思いますし、カオスなAメロをまとめあげるには、これくらいパンチのある言葉を持ってこないと確かに成立しないよなと思います。

1番Bメロの「きょうの勝利の女神は あたしだけにチュゥする」という印象的なフレーズでも、「キス」ではなく「チュゥ」という言葉を選んでいるんですよね。これはウマ娘というコンテンツに対するイメージをしっかり自分の中で固めていないと選べない言葉だと思いますし、もしあの箇所が「キス」だったら悪い意味で違和感を抱いてしまっていたかもしれません。

紹介した箇所のみならず、楽曲全編通して、この曲以外ではもう聴くことがないであろう唯一無二のフレーズが目白押しで、楽曲に対する気合の入りようにとても感動しましたし、電波ソングの一つの完成系を見た気がしました、うまぴょい!

レースのドキドキを「転調」で表現?

◆イレギュラーな曲展開にBUCHIAGARU!!

こちらの楽曲、すごいのは歌詞だけじゃないんです!

イントロのファンファーレから本編が始まると、圧倒的なインパクトと勢いがあるイントロがはじまるのですが、イントロの中でも早速転調が行われ、Bメロでも細かく何度も転調を繰り返し、サビでもまた転調し、目まぐるしく転調を繰り返していくのですが、それがウマ娘のレースで抜いたり抜かれたりする、予想ができないハラハラドキドキの展開を想起させて、聴いていてずっとワクワクします。

また、J-POPにおいてAメロは一般的に8小節で一つのパターンを作成してAメロとするか、同じものを繰り返すか少し変えて繰り返すかで倍の16小節にする、といったことが多いのですが、「うまぴょい伝説」のAメロのラップのような掛け合い部分は12小節になっています。

たしかに8小節だけではもっと聴きたくなる気がしますし、16小節ではちょっと間延びしちゃうかなと感じますし、12小節というのは絶妙な長さだなと思います。また、普段なかなかこのような小節数の楽曲を聴くことは少ないと思われるので、いい意味での違和感もあります。

これはBメロにも同様に言えていて、J-POPのBメロは4小節〜8小節の長さであることが多いですが、こちら12小節という長さになっており、いつ終わるんだろう、どうやってサビに繋がるんだろう・・・!と聴いていて曲の世界にどんどん引き込まれていきます。

リスナーの期待を裏切らないサビの盛り上がり

そして、サビまでこれだけ盛りだくさんの内容にしちゃったら、膨らんだリスナーの期待をちゃんと回収できるの!?と僕は不安になってしまったのですが、そんな野暮な心配はサビが始まった瞬間に消え去りました。

先程も述べた「きみの愛馬が!」からはじまるサビ、これまでの嵐のような展開とは逆に、非常にキャッチーなメロディにシンプルかつインパクトのある言葉が乗っており、ふとした瞬間に口ずさんじゃうんですよね!

この曲の作詞・作曲・編曲を一人で手掛けられた本田晃弘さんは、この曲の中で、数々のヒットアニメソングを世に送り出している作詞家の畑亜貴さんと作曲家の神崎暁さんをたった一人で再現しているような印象を受けました。

この楽曲に関して生みの苦しみは相当あったと記事で読みましたし、作家として素直にリスペクトしかありません。

この「うまぴょい伝説」という楽曲の素晴らしさが、間違いなくウマ娘がここまでヒットした理由の一つになっていると思いますし、これくらいインパクトがある曲を作っていかなきゃいけないなと思わされました。

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