本好きのリビドー

本好きのリビドー

(提供:週刊実話)

◎悦楽の1冊
『黙示録―映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』 聞き手・構成春日太一 文藝春秋刊 1900円(本体価格)

★名監督、名優たちとの秘話を語る

 好きか嫌いかなど四の五の言わせぬ圧倒的な仕事量と影響力の大きさにおいて、90年代そのものを象徴する存在感のプロデューサーといえば音楽業界では言うまでもなく小室哲哉、そして映画業界ではやはりこの人、奥山和由に尽きるだろう。

 今となっては当たり前の異業種監督、生粋の映画界育ちでない人物がメガホンを取る光景も元をただせば奥山氏がビートたけし=北野武や竹中直人を続々と監督に起用することで先鞭をつけたもの。また実父が重役を務める松竹に身を置きながらも、歌舞伎の伝統ブランド力と『男はつらいよ』シリーズによる安定収入で、すっかり保守化した上層部には、斬新な発想や挑戦的な企画が逐一不許可とみるや会社や業界の枠を超えてファンドを設立し、製作資金の調達に腕づくで道を開く姿はまさに風雲児としての面目躍如。これまた現在、世間一般に普及した“クラウドファンディング”を当時すでに先取り、実践していたに等しい。

 プロデューサーという職を優れたスタッフやキャストといった才能への奉仕者、と定義する氏なればこそ、冷徹緻密に収益を計算する頭脳と同時にヒットするかしないかを度外視して、時には対象に全身でのめり込む作り手と一体な炎の情念も併せ持つ。ゆえに氏が学生時代から憧れ、心から認められたかった深作欣二監督との出会いと別れ、そして、ふとしたきっかけから共に新たな夢を追う約束を交わすロバート・デ・ニーロとの経緯を綴る章に至って切なさはいや増す。氏がやがてクーデターにより松竹を追われる結末を、読者の側は知っているから尚更だ。

 本書こそロバート・エヴァンズの『くたばれ!ハリウッド』日本版的に映像化できぬものか。氏が世に送った作品を超える可能性大。
(居島一平/ 芸人)

【昇天の1冊】

 京都で起きた歴史上の重大事件を誌面で解説しつつ、同時にスマホアプリの「京都謎解きwebサイト」にある歴史問題を解きながら、京都散策を楽しめるという面白い本が出た。『歴史人×京都まち歩き謎解き』(KKベストセラーズ/1800円+税)である。

 歴史雑誌の『歴史人』増刊号。本のほうは「京都歴史10大事件の謎」と題し、誰もが知る出来事・事件を解説している。

 織田信長が明智光秀に討たれた「本能寺の変」、幕末に新選組と浪士たちが死闘を演じた「池田屋事件」、坂本龍馬暗殺の現場となった「近江屋事件」などが、地図付きで解説されている。他にも平家が政権を握った「平治の乱」、幕末のクライマックス「鳥羽伏見の戦い」など、興味深い事件もずらり。

 一方の合同企画「京都まち歩き謎解き」は、本に付いている冊子「史跡巡り謎解きガイドツアー」とアプリを持ち、実際に事件や出来事が起きた場所へ行き、アプリから出題されるクイズに答えるというリアル体験式ゲームだ。そして、正解したらまた次の場所へ移動するという仕組み。

 散策に適したコース(歩く順番)や所要時間なども案内されているから、短い中で効率的に回るヒントもあり、実用的だ。

 週刊実話の読者にオススメなのは、新選組ゆかりの地だろうか。近藤勇や土方歳三が「池田屋」までどう進軍し、どう戦ったのか。本とアプリで現場をたどっていくと、気分はすっかり「誠」の戦士である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 川田利明
開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学 ワニブックス 1,300円(本体価格)

★本当は俺、すごく器用なんですよ

――川田選手がラーメン店『麺ジャラスK』をオープンしてから10年が経ちました。開業のきっかけはなんだったのでしょうか?
川田 そもそも引退後のセカンドライフについては全く考えていなかったんです。そんなものは引退してから考えればいいと思っていたから。でも、三沢(光晴)さんが’09年に突然、亡くなってね。三沢さんは高校の1年先輩で、ずっと背中を追いかけてきた存在だった。その背中が急に消えてしまったことで、冷静に「俺、プロレス以外に何ができるんだろう?」と考え始めたのがきっかけです。

――その結論がラーメン屋だった、というのがファンの人たちやレスラー仲間たちに驚きを与えたと思います。武骨で不器用な川田選手が、なぜ接客業を?
川田 不器用っていうのは、俺がプロレスラーとしての個性を打ち出すために作りあげた“キャラ”であって、本当は俺、すごく器用なんですよ(笑)。本を読んでいただければ分かるのですが、不思議な運命の巡り合わせで学生時代から料理を作らざるを得ない状況が何年も続いていたので、プロレス以外にできることは料理しか考えられなかった。まぁ、まだ正式にプロレスを引退したわけじゃないんですけど、ラーメン屋とプロレスラーの両立は難しいので、今はラーメン屋に専念しているといった感じです。

――いわゆる“サイドビジネス”ではないんですね。
川田 ラーメン屋はそんなに甘いものではありません。なんとか店を10年続けてこられたけど、所有していた3台のベンツは早々に売り払ったし、貯えもすべてつぎ込んでしまった。それでなんとか店を維持できている。それが現実ですよ。

――シビアですね。それでも「脱サラしてラーメン屋を開業したい」という方はものすごく多いですよね。
川田 そういう方たちに読んでもらいたくて、この本を出しました。タイトルにもあるように、開業から3年で8割のラーメン屋は潰れてしまいます。そういう現実を知らずに、テレビで紹介されているような行列のできる店になると勘違いしてしまう。でも、行列店になれるのは1000店オープンして1軒あるかないか…。実際はギャンブルだよね。
 この本には俺がラーメン屋を開店して実際に経験してきた失敗談がたくさん載っています。それを読んで「川田、バカだなぁ〜」と笑ってください。ただ、あなたがラーメン屋を開業したら同じ経験をすることになりますよ、と。この本で伝えたいのは「脱サラしても絶対にラーメン屋だけはやるな!」ってことです。
_(聞き手/程原ケン)

川田利明(かわだ・としあき)
1963年12月8日生まれ。栃木県下都賀郡大平町(現:栃木市)出身。高校ではレスリング部に所属し、国体優勝後の’82年3月に全日本プロレスに入団。’10年6月12日に、ラーメンと鶏の唐揚げを看板料理として、自身のニックネームにちなんだ『麺ジャラスK』を開店。

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