本好きのリビドー

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(提供:週刊実話)

◎悦楽の1冊
『勝新図鑑[復刻版]―絵になる男・勝新太郎のすべて』 川勝正幸・編 Pヴァイン 3700円(本体価格)

★勝新の決定的お宝図鑑が復刊

「談志・勝新・猪木・長嶋は治外法権にしろ」。その昔、某誌オピニオン欄で高田文夫氏が放った名言は今もなお生きていると、つくづく痛感する。

 所詮老いの繰り言と片付けられるのを承知で言えば、SNS全盛時代の昨今で“インフルエンサー”と持てはやされる面々など、冒頭に並んだいずれの名前と比べても随分小粒どころかナノミクロン単位に見えてしまうのは致し方ない。四者とも共通するのはもはや皆が皆、その名前だけでひとつのジャンルだという点ではないか。ただの落語家、ただのプロレスラー、ただのプロ野球選手としての存在の枠そのものからはみ出してしまったような無限の影響力と浸透度を思えば。

 勝新太郎もまた、ただの俳優、いな役者か、その程度で気軽にくくり切ることなど不可能な宇宙を包摂した、動く不穏な祝祭とでも形容するほかない怪物だった。本書は名著『ポップ中毒者の手記』シリーズを遺し、7年前に亡くなった伝説の編集者、ライターにより、勝新太郎に捧げられた渾身のオマージュ集と称すべき“虎の巻”。15年ぶりの復刻だ。

 海外にも圧倒的な知名度と人気を誇る(ファンの1人はキューバのカストロ!)『座頭市』は申すに及ばず『悪名』『兵隊やくざ』の三大キャラクター各絵巻はもちろん、勝プロ創設後(記者会見で資本金の額を聞かれて『資本金って何だ?』と返したのも最高)の映像的冒険の数々もふんだんにグラビア付きで徹底解説。

 個人的には、勝新が終始異常なべらんめえ口調でまくし立てつつ、怪しいとにらんだ女は片っ端から日ごろ鍛え上げた逸物で責め抜き自白に導く八方破れの同心・かみそり半蔵が主人公の『御用牙』三部作もフィーチャーしてほしかったが贅沢は言うまい。肉厚!
_(居島一平/ 芸人)

【昇天の1冊】

 日本中が熱狂したラグビーワールドカップ。ジャパンは敗退してしまったが、大会は11月2日の決勝まで続き、まだまだ楽しめそうだ。

『ラガーにゃん』(光文社/税込880円)はワールドカップの前に「1初級編」「2ワールドカップ編」の2冊が発売された。ユルいキャラクターの猫たちが登場する漫画版ラグビー入門書で、ニワカには分かりづらいルールを基本技術を交えて解説し、話題になっている。

 あの格闘技にも似た激しいスポーツを白猫・黒猫に分かれた2チームがプレー。小柄な猫たちとボールはほとんどサイズが一緒だから、よたよたとボールを運んだり、じゃれついたりと珍プレーの連続。そのたびに審判の笛が鳴り、「ノックオン」「ノットリリースザボール」「スローフォワード」「オフサイド」と、テレビ観戦で聞いた反則用語が飛び交う。正直なところ、テレビで見ているだけでは、ラグビーは何が起きたのか分かりづらい。「モール」「ラック」と呼ばれる密集に、巨大な体躯の男たちが入れ乱れているためだ。

 だが、この本を読めば、それだけでラグビーの見方が劇的に変わる。実は理に適った合理的なルールのもとで行われるスポーツということも理解できるだろう。

 解説を担当しているのは、元日本代表主将の廣瀬俊朗氏。

 ラグビーが人の心を熱くさせる競技であることを知ったという読者諸兄。これを機に、さらに一歩進んで“通”にならなければ、もったいないぞ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 小島美羽
時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし
原書房 1,400円(本体価格)

★他人ごとでなく孤独死に危機感を持ってほしい

――遺品整理現場のミニチュアが話題になっていますね。そもそも、特殊清掃を始めたきっかけはなんだったのですか?
小島 17歳の時に父が突然亡くなり、失意の中、19〜20歳の頃に特殊清掃という仕事を知りました。調べてみると、遺品整理を頼んだ遺族が悪徳業者などに家を傷つけられたり、思い出の物を盗まれたりしていることを知り、許せませんでした。それならば、同じ家族を亡くした者が作業した方が、遺族の気持ちに寄り添えるのではないかと考えました。父の死に対し抱いていた後悔の念も、この思いを後押ししてくれました。

――写真を撮るのではなく、ミニチュアを作ろうとしたのはなぜですか?
小島 写真だとあまりにも“リアル”すぎて、目を逸らせたり、気持ち悪くなってしまう人も出てくるでしょう。何より遺族が晒し者にされている気分になってしまうかもしれません。でも、平和な日本でも孤独死が現実に起こっていること、他人事ではないと知ってもらいたいと考えた時に思いついたのが“ミニチュア”でした。
 制作スキルは完全に自己流です。YouTubeの制作動画も参考にしています。納得がいくまで作り直すので、制作費は一作品数万円掛かりますが、私が器用だったらもう少し安価にできたかもしれません。

――今までにどんな現場を制作したのですか?
小島 孤独死、ゴミ屋敷、自殺とそれぞれ伝えたいテーマのものを9点ほど作りました。特に冬場、お風呂でヒートショックで亡くなる方の現場は印象に残っていて、湯船には人の皮膚が必ず付着しています(ミニチュアにも黒く変色した皮膚を再現してあります)。目を覆うような現場も多いですが、だからこそ危機感を持ってもらうため、このミニチュア達に特徴を凝縮して再現しています。

――そんな過酷な仕事を5年間続けているそうですね。辞めたいと思ったことは?
小島 何度もありますよ。しかしそれは、特殊清掃がつらいからではなく、自分が成長できずにいる時です。とはいえ人の裏の顔を見る仕事なので、かなり体力と精神力は削られます。

――孤独死は社会問題にもなっています。本書を通してどんなことを伝えたいですか?
小島 どんなに有名でも、どんなに偉い人でも“死”はやってきます。死なない特別な人はいません。だからこそ、人ごとではなく自分のことのように孤独死に対して危機感を持っていただきたい。そして、悔いが残らないように毎日をすごしてほしいと思います。
_(聞き手/程原ケン)

小島美羽(こじま・みわ)
1992年8月17日、埼玉県生まれ。’14年より遺品整理クリーンサービスに所属し、遺品整理やごみ屋敷の清掃、孤独死の特殊清掃に従事する。孤独死の現場を再現したミニチュアを’16年から独学で制作開始し、国内外のメディアやSNSで話題となる。

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