【徹底検証】映画『えんとつ町のプペル』を偏見ゼロでレビュー! 評価できる3つのポイント

【徹底検証】映画『えんとつ町のプペル』を偏見ゼロでレビュー! 評価できる3つのポイント

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堀江貴文や安倍昭恵夫人、中田敦彦ら一流著名人が絶賛する一方、ネット上では《オンラインサロンメンバーの信者向け映画》、《姑息な感動を狙った駄作》といった声も飛び交う映画『えんとつ町のプペル』。しかし、話題になるのは映画の総指揮を務めたキングコング・西野亮廣への評価ばかりで、映画自体のクオリティーはほとんど語られていない。



そこで本稿では、「えんとつ町のプペル」を善意も悪意もなしに正面からレビュー。一切の偏見を持たずに作品と向き合った時、どんな感想が出てくるのか…その内容をありのままに綴っていきたい。


「えんとつ町のプペル」は面白いのか?

映画を観た後の第一印象は、「えんとつ町のプペル」の面白さはそこそこ≠セということ。しっかりエンターテインメントしているし、伏線も丁寧だ。作品のメッセージも胡散臭さはなく、よくある子ども向けの冒険活劇を展開していく。しかし、どの要素も特別目を引くというわけではない。猛烈に叩きたくなる部分もなければ、絶賛するのもどこか違う…。1つのアニメ映画として観た場合、「佳作」という印象が強い。


しかし、それはあくまで大筋をなぞっただけの感想だ。実は「えんとつ町のプペル」は、非常にマニアックなバックボーンを持った作品だと、声を大にして主張したい。例えるなら、アングラ出身のミュージシャンが、当たり前のようにNHKの朝ドラやバラエティーに出ている瞬間を目撃した時の感覚に近い。「クセのない作品」を「クセだらけのマニアックな要素」で作り上げたということ──それ自体が称賛に値すると感じた。


「えんとつ町のプペル」のマニアックな要素は、以下の3つに分けられる。


・製作が吉本興業であること

・国産3DCGアニメであること

・アニメ制作会社がSTUDIO 4℃であること


それでは、上から1つずつ解説していくことにしよう。


ポイントその1「製作が吉本興業であること」

吉本興業は、言わずとしれた大手芸能プロダクションだが、近年では映画産業にも手を広げている。有名なところで言えば、『ダウンタウン』松本人志監督の『大日本人』や『しんぼる』は吉本興業製作の映画だ。過去にはよしもと芸人100組が自ら監督となり、短編映画を製作する『YOSHIMOTO DIRECTOR’S 100 〜100人が映画撮りました〜』という企画もあり、芸能プロダクションとしては異例の「タレント自身を監督にする」試みを行ってきた。


しかし、その多くが「コントの延長線上としての映画」感が拭えず、セールス的にも大成功というほどの結果には繋がっていない。あくまでお笑いファンに向けて作られた映像作品ばかりだと言える。


だが今作において西野は、自身の芸人としてのセンスは完全に封じ、子ども向けの作品を作り抜いた。芸人主導の映画で陥りがちな、押しつけがましい笑いや人間の泥臭い悲哀などは完全に省き、エンタメ作品として完成させる…。商業映画としては当たり前のように思えるかもしれないが、「吉本興業製作の芸人主導の映画」における重要なタームポイントであることは見逃してはならないだろう。


ポイントその2『国産3DCGアニメであること』

「えんとつ町のプペル」は一見すると手書きアニメーションのように見えるが、実はフル3DCGアニメの作品。3Dを手書きアニメのように見せる「セルルック」という技法を使い、ポップな画面と生き生きとした立体的なアニメーションを同居させている。しかし、日本の映画市場で「国産フル3DCGアニメ」というスタイルが成功しにくいことはご存知だろうか?


海外ではディズニーやピクサーをはじめ、アニメ映画のほとんどが3DCG主体で作られている。だが国内産の3DCGアニメでは、2001年の『ファイナルファンタジー』が140億円近くの赤字を出して大失敗。ほぼ国内初と言えるフル3DCG映画が記録的なコケ方をした影響で、「3DCGアニメは売れない」というジンクスが生まれてしまった。それからおよそ20年近くの歳月が流れたが、国内産3DCGアニメのヒット作と言えるのは唯一、興行収入83.8億円を記録した山崎貴監督の『STAND BY ME ドラえもん』のみ。それ以外の多くの3DCG作品は、目立った売上を出せずに終わっている。


そんな中、「えんとつ町のプペル」が現時点で興行収入15億に近いヒットを記録しているのは、エポックメイキングな出来事と言わざるをえない。同作のヒットが前例となり、国内のアニメ市場に手書き以外の選択肢が増えることも期待できそうだ。


ポイントその3『アニメ制作会社がSTUDIO 4℃であること』

制作を担当した『STUDIO 4℃』というアニメ会社は、とにかく尖りまくった映像を作ることで有名だ。スチームパンクと現代日本の風景を織り交ぜたような、独特で緻密な世界観を打ち出した作品を20年以上作り続けており、湯浅政明監督の『マインド・ゲーム』やマイケル・アリアス監督の『鉄コン筋クリート』などヒット作も数多い。


アニメマニアであれば誰もが知るスタジオだが、独特すぎる作風やTVアニメシリーズをほとんど手掛けないという方針も相まって、決してメジャーとは言えない。しかし「えんとつ町のプペル」では、そんな「STUDIO 4℃」の世界観がこれでもかとフィーチャーされている。映画の影のメインとも言える「えんとつ町」の風景をはじめ、キャラクターのデフォルメ感から小物の描写に至るまで、全てが「STUDIO 4℃」のこだわりを感じるデザインばかり。


それだけであればいつもの「STUDIO 4℃」とも言えるが、同作では町の中に飾られる店の看板が、全てクラウドファンディングで支援を行った人々の名前になっている。もちろん作品世界を壊さないよう、うまく架空の店名にアレンジされているのだが、それでも事情を知っている人間であれば町の風景のディテールに思わず目を凝らしてしまうだろう。


アニメマニアがいくら「STUDIO 4℃」の作風や画面の緻密さを語ったところで、興味のない一般人は振り向かない。ところが「えんとつ町のプペル」では思わぬ方法によって、ディテールを楽しむ導線を示している。これは本当に見事なアイデアだと感じた。


たしかに「佳作」だが重要なのは…

「えんとつ町のプペル」はよくも悪くも、ストーリーや設定自体が目立つ作品ではない。しかしむしろ、映画が作られたバックグラウンドにこそ魅力が隠されている。映画のヒットをきっかけとしてマニアックな要素がメジャーシーンに開かれ、アニメ業界の未来が変わる──そんな期待も湧いてきてしまう。


お笑い好きやアニメマニアは、同作を取り巻く状況に不信感を抱いているかもしれない。しかしそんな人にこそ、一度は映画館に足を運んでみてほしい。斜に構えずスクリーンと向き合えば、きっと見えてくるものがあるはずだ。


文=富岳良

写真=富岳良(まいじつエンタ)

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