山口紗弥加の原点、『若者のすべて』33テイクと中江功"鬼"監督 - 『ようこそ、わが家へ』20年ぶり再会で知る「演じるな」の重み

山口紗弥加の原点、『若者のすべて』33テイクと中江功"鬼"監督 - 『ようこそ、わが家へ』20年ぶり再会で知る「演じるな」の重み

画像提供:マイナビニュース

2014年からドラマオファーが殺到中の女優・山口紗弥加(37)。今年は自身初の大河ドラマとなる『おんな城主 直虎』で夫・小野玄蕃(井上芳雄)亡き後、小野政次(高橋一生)を支える義妹・なつを演じる。その一方で、『女囚セブン』(テレビ朝日系・毎週金曜23:15〜 ※一部地域を除く)では政治資金規正法違反及び詐欺罪で収監されたミステリアスな政治秘書・楠瀬司に。アクの強い悪女から淑女まで、彼女が演じる姿はカメレオンそのものだ。

一体彼女はどんな女性なのか? そして、そのみなぎる演技力の源泉とは? 先月17日、テレビ朝日にて行われた『女囚セブン』制作会見後の山口を直撃。今回のインタビューでは、3回にわたってその魅力を伝える。

締めくくりとなる第3回は、女優デビュー作となったドラマ『若者のすべて』(94年・フジテレビ系)の秘話。萩原聖人、木村拓哉、武田真治、鈴木杏樹、深津絵里、遠山景織子、大沢たかお、篠原涼子といった名優たちに囲まれ、その後の女優人生が拓ける。そして、その"鬼"であり、"恩師"でもある中江功監督と2015年の『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)で再会し――。 (第1回 "山口紗弥加あるある"に挑む! カメレオン女優の「最高」、嫌う「内輪ウケ」 / 第2回 山口紗弥加、超憑依型女優の日常 - 本人役でどうなる?)

○この人は鬼だと思った

――私が小学生の頃、毎週友だちと盛り上がっていたドラマが『若者のすべて』(フジテレビ系・94年)でした。中江功監督とは15年の『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)で再会されますが、『若者のすべて』出演時のことは覚えていますか?

私の初出演ドラマです。あの作品は忘れられません。演技経験ゼロのド素人なのに、父母を事故で亡くしたショックから自閉症になった女の子で、難役でした。監督からは、ジョニー・デップの『妹の恋人』(93年)を観るように言われて、ただひたすら、何回も何回も観返したのを覚えています。

印象的なのはドラマでの初めての登校シーン。長い間、兄(萩原聖人)と、兄の友人(武田真治)など限られた人としか接してなくて、コミュニケーションも十分に取れないような状態でいきなり大勢の人たちの前に出てパニックになる、というシーンだったんですが……根が真面目なもので、一生懸命だったんです。一生懸命、「パニック」を演じようとしていたんです。結果、本番33テイク。どこがダメって言われないんですよ。「もう1回」「もう1回」「もう1回」「もう1回」の繰り返し。これを33回ですよ?

本当にパニック状態になってしまって、「うばあわあわあー」みたいな、訳のわからない言葉を叫んだところで、「OK。それですよ。それが欲しかったんだよ」と。この人は鬼だと思った。こんな世界で生きていくなんて絶対に無理だと思いました。

――そこから教わったことは「演じようとするな」?

そうですよね。その時は「14歳の子供になんてひどいことをするんだ!」って、正直恨みましたけど(笑)、今思えば、なんて贅沢な経験をさせて頂いたんだろうって。有り難いことですよね。

――もう、やりたくないとはならなかった。

負けず嫌いなんですよね。子供は皆そうだと言いますが、根拠のない自信だけは持っていて、絶対にいつか鼻を明かしてやる! 中江さんに勝つ!って、当時は本気で思ってました(笑)。

○「5ミリ上」20年後も変わらない演出

――『ようこそ、わが家へ』での再会は、特別な思いがあったんじゃないですか?

うれしくて仕方なかったです。役者を追い込むって時間と労力が掛かることなんですよ。良いテイクが出るまで、みなさんを待たせているわけです。共演者の方々も、スタッフの方々も、精神的、肉体的に相当な忍耐力が求められる。だから、『ようこそ、わが家へ』を撮影している時は”愛”しか感じなかったというか、幸せで幸せで。演出は当時と変わらなかったです。

目線1つとっても「あと5ミリ上」とか、「顔の筋肉動かさないで」とか、「声がまだ高いんだよなーそういう声じゃないんだよなー」とか、とにかく細かい。そうやって、同じシーンを角度を変えて何度も撮っていきます。持久戦です。集中と解放、20年ぶりの千本ノックはさすがにキツイなと思いましたが(笑)、繋がったものを観た時に、この緊張感や臨場感がどうやって作り出されているのかを実感しました。

中江監督は、恐ろしいです。自分が意図していない、見たこともないような表情が抜かれていたりするんですよ。演技ではなく、その場で私が感じたことが、そのまま、えぐり出されてる。私はあの場所でこんなことをしていたんだって後になって知るんです。監督の「時間をかけて執拗に撮る」というこだわりは、あの濃密な画に現れています。ギリギリのところまで追い詰められてやっと見えてくる何か、人間の力強いエネルギーみたいなものも含め様々な要素が凝縮されて、そこには事実があるんです。

――どちらが正解、間違いでもないと思うんですが、『女囚セブン』とは真逆の撮影だったわけですね。

そうですね。『女囚セブン』は瞬発力の勝負。あれこれ考え試している時間は与えられず、誰がどんな隠し球を出してくるか分からないというのは恐ろしくもありますが、それすら楽しみたいと思っていて。『女囚セブン』って、ファンタジーなんじゃないかって。この際、この世界観で思いっきり遊んでやる! 失うものなど何もない! ……そんな感じです(笑)。

『バイプレイヤーズ』のように、元々が虚実綯(な)い交ぜの作品もありますが、『女囚セブン』は、結果、そうなっているという何だか不思議な現象が起きていて、生っぽさがありますよね。勢いのままに撮っているので予測できない面白さがあると思います。週末の夜、ビールでも飲みながら、おつまみには『女囚セブン』をいかがでしょうか(笑)?

■プロフィール
山口紗弥加(やまぐち・さやか)
1980年2月14日生まれ。福岡県出身。1994年のフジテレビ系『若者のすべて』で女優デビュー。以降も毎年コンスタントに出演を重ね、2014年頃からドラマのオファーが殺到。近年の出演ドラマは、『サイレント・プア』(14年・NHK)、『家族狩り』(14年・TBS系)、『ビンタ!』(14年・日本テレビ系)、『ようこそ、わが家へ』(15年・フジテレビ系)、『ヤメゴク』(15年・TBS系)、『リスクの神様』(15年・フジテレビ系)、『コウノドリ』(TBS系・15年)、『サイレーン』(15年・フジテレビ系)、『ラヴソング』(16年・フジテレビ系)、『受験のシンデレラ』(16年・NHK BSプレミアム)、『運命に、似た恋』(16年・NHK)、『IQ246』(TBS系)、『おんな城主 直虎』(17年・NHK)、『バイプレイヤーズ』(17年)など。
(水崎泰臣)

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