映画『無限の住人』8人の証言者たち - 「皆さまのもの」になるまで (11) 木村拓哉、天性の立ち回り「普通の人じゃ無理」 (5人目:殺陣 辻井啓伺氏)

映画『無限の住人』8人の証言者たち - 「皆さまのもの」になるまで (11) 木村拓哉、天性の立ち回り「普通の人じゃ無理」 (5人目:殺陣 辻井啓伺氏)

画像提供:マイナビニュース

「"無限"とは"時間"や"時空"ではなく、"想い"なのだと感じています。限りの無い"想い"。それは"永遠"と呼んでもいいものだと思います」

俳優・木村拓哉にとって『武士の一分』(06年)以来、約10年ぶりの時代劇主演となる映画『無限の住人』。沙村広明氏の人気漫画が初の実写化、さらに木村と三池崇史監督の初タッグということもあり、メディアは大々的に取り上げた。SMAP解散騒動で日本中に激震が走った2016年1月、木村は不死身の侍・万次をようやく演じ終える。2015年10月5日、映画化が発表されたあの日から、どれだけの人がこの作品を話題にしてきたのだろうか。冒頭にあるのは、「無限とは?」に対する木村の答えだ。

公開初日を迎えた2017年4月29日、舞台あいさつの壇上で「客席の皆さまのものになりました」と引き締まった表情で呼びかけた木村。今回の連載は「∞」になぞらえ、8名のスタッフの証言をもとに、『無限の住人』が「皆さまのもの」になるまでの「無限の想い」をまとめた取材記録である。

5人目は、本作の生命線ともいえる殺陣師・辻井啓伺氏。連載第11回は、「立ち回りではない立ち回り」について。辻井氏の度肝を抜いた木村の"天性"とは。

○「引き出し」から作り上げる立ち回り

――激しい殺陣が注目を集めています。どのような流れで動きをつけていったのでしょうか。

台本をもとに作られた絵コンテに沿って、動きをつけていきます。もちろん原作も読みますよ。昔は現場でカット割りをしていたんですが、最近はCGをどこに入れるかも含めて想定しないといけないこともあるので、予算の兼ね合いもあって事前に打ち合わせをします。

今回の立ち回りは、ほとんど現場で作りました。僕らアクションチームで前もってやったりはするんですが、結局リハーサルできたのは木村(拓哉)さんと満島(真之介)くんの戦いぐらいですね。でも、今回はみなさん、覚えが早かった。万次が300人と戦うラストは現場で作っていきました。

――木村さんは「殺陣に見せたくなかった」とおっしゃっていました。

そうそう。現場のアイデアで立ち回りはどんどん変わっていきます。僕らは、「払って斬って」というリズムで作ったりするんですけど、「かわす間があったら斬る」みたいなアイデアがあれば、そのリズムも崩れます。木村さんは剣道経験者なので、その場その場でどんどん変わっていく。一連のおおまかな流れは僕が作りますが、お願いするのは「最後はカメラの方を向いて終わってください」程度です。

――役者さんの経験値によって左右されるんですね。

得意・不得意もありますし、癖もあります。僕らは形から入りますが、そこには心情的な部分も必要になります。立ち回りは、お芝居の意見の1つ。監督にとってそれが違っていたら、また違う意見を出す。そういういろいろな引き出しを持っておいて、現場で出しています。

――殺陣師として「ここだけは譲れない」みたいなことはないんですか?

もちろんあります(笑)。その時は、納得してもらえるように話し合っています。

○「1回目でやり遂げてしまう」

――今回の撮影を通して、木村さんの秀でた部分も感じたのでは?

常に客観的に自分を見られるところ。後ろ姿でも、「こう撮ってほしい」みたいな動きをされます。後ろ姿でも撮られることを意識できるのは、本当にすごいです。顔を映さなくても、セリフが聞こえてくるような気がするんですよね。

僕が驚いたのは、テストでモニターを見ていた時。何十人もブワーと斬りまくってバシッと構えたんですよ。それが1回目からフレームの中にビシっと収まった。引きすぎでも、寄りすぎでもない。こんなの、普通の人じゃ無理ですよ。たぶん、カメラのピントマンも楽だったと思いますよ。いつもビシっと収まる。しかも、それを1回目でやり遂げてしまう人。

――そういうシーンがあると、現場のテンションも上がりそうですね。

ええ。これ、カット割らなくていいよね、となる。それまで、ああしようこうしようと考えているんですけど、1カット目から何十人も斬ってピタッと収まると、その1カットで見せるしかないよねとなります。今まで頭の中で必死に考えていたカットも、いらなくなるわけです(笑)。木村拓哉がフレームの中でビシっと構えるカットがあれば、他はいらない! OK!

もちろんこれまでの経験もあると思いますが、きっと天性のもの。1対1の場合は隠しすぎてもダメ出し、離れすぎてもダメ。僕ら立ち回りのプロはいつも後ろ姿に力を入れますが、そういうのもできちゃうから。相手も楽だと思います。

■プロフィール

辻井啓伺(つじい・けいじ)
1963年1月12日生まれ。大阪府出身。1981年、ジャパンアクションクラブに入団。その後、ワイルドスタントチーム設立メンバー、スーパーアクションメガシステム設立メンバーを経て、2001年にスタントチーム「ゴクウ」設立。これまでの主なスタントコーディネート作品は、『十三人の刺客』(10)、『一命』(11)、『許されざる者』(13)、『クローズZERO』シリーズ(07・09・14)、『精霊の守り人』(16・17/NHK)など。

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会
(水崎泰臣)

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