中田敦彦×カヤック・みよし「ゲームは悪ではない」 - "人生の一芸論"対談

中田敦彦×カヤック・みよし「ゲームは悪ではない」 - "人生の一芸論"対談

画像提供:マイナビニュース

●中田絶賛の採用方式「非の打ち所がない」
面白法人カヤックはPlayStation 4(PS4)でのゲームプレイ実績や経験を元に人材を評価する「いちゲー採用」を今年からスタートさせた。その告知を兼ね、現在コメンテーターとしても活躍中のお笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦を招き、カヤック採用担当・みよしこういち氏との対談が都内某所で行われた。今回は、その模様を詳しくレポート。みよし氏の企画説明から、話題が広がっていった。

○そもそも「いちゲー採用」とは何なのか?

みよし:基本的に採用の流れは、エントリーシートを書いて会社に送り、合格したら面接やグループワークと呼ばれる数人でのディスカッションがあり、そこを通過すると役員面接などを経て内定するのが一般的です。カヤックでは、メイン企画として「いちゲー採用」を新たに導入しました。

中田:まず、募集サイトに「ゲームなんて時間の無駄だ」ってキャッチがありますが、この言葉、確かによく言われますよね。

みよし:「いちゲー採用」がPS4を主体にしているので、このキャッチは怖かったんです(笑)。とはいえ、ゲームでも頑張ったことには変わりない。ということで、ゲームでも応募できるようなことをしたいと思っていました。「いちゲー採用」のコースとしては、「プラチナトロフィー選考」「協力プレイ選考」「ゲーム履歴書選考」の3つ。まず「プラチナトロフィー選考」ですが、PS4ではゲームのプレイに応じてブロンズやシルバーなど色々なトロフィーがもらえます。プラチナトロフィーは、うちの社員の中でも1人しか持っていないほどで、獲得には運も、時間も、実力も必要になってきます。

中田: PlayStation(PS)ユーザー的には、かなり名誉なことなんですね。「プラチナトロフィー選考」は、PSフォーマットにある評価軸をそのまま使っちゃうんですね。

みよし:そうなんです。実はカヤックは書類選考でも10%しか通らないんです。でも、プラチナトロフィーがあれば、飛び級ができる。

中田:書類選考通過って聞くと薄いように感じますが、10%はかなりですよね。

みよし:次に「協力プレイ選考」では、6人ぐらいでグループワークを行います。基本的に、この選考のメインは"素"を見ることです。面接だと、言いたいことをその場で考えられちゃうじゃないですか。じゃあ、ゲームでやっちゃおう、と。

中田:協調性はあるのか? リーダーシップはあるのか? などを見るわけですね。

みよし:はい。選考に使用するゲームは、8月31日に発売予定のPS4用ソフト『New みんなのGOLF』と、PlayStation VR向けの無料ゲーム『THE PLAYROOM VR』。ゲームだと目標に向かって頑張るので、意外と"素"が見えるんです。実は昨日、「協力プレイ選考」をしたんですが、『みんGOL』の盛り上がりが凄かったです。

中田:盛り上がりそうですね(笑)。

みよし:そして「ゲーム履歴書選考」。通常の履歴書は、学生時代にどんなことを頑張ったとか、自身の強みをアピールします。ゲーム履歴書には、一番やり込んだゲームソフトは何ですか? とか、アナタが思いついた攻略法は何ですか? とかゲームに関することをアピールしてもらいます。

以前、学生さんから、ゲームの事をエントリーシートに書くのは遊びのようで書きづらいという声を聞いて、僕自身はそれをもったいないと感じていました。だったら、こちらがOKとしてしまえば、向こうから自然に話してくれるかなと。もちろん、最終的にはゲーム作りに持っていかなければならないので、ゲーム好きで、かつ本当にゲームを作りたいのかなど、2回ぐらい面接で見て、内定を出す流れになります。

中田:なるほど。いやあ、めちゃくちゃ面白い! 人間って、色々な能力ってあると思うんです。今まで何に費やしてきたかで、その人の能力パラメーターは、変わってくると思うんですけど、ゲームの価値が低く見積もられてしまうと、高い能力パラメーターを持った人を取りこぼしてしまいますよね。それを全部、取りこぼさずにキャッチしようという仕組み作りがあまりにも素晴らしい。

プラチナトロフィーがありますとか、履歴書が書きづらかったとか、従来の面接の正攻法にゲームを持ち込んだらうまくそうなった。加えて、ゲームの新作PRや、会社のPRにもなっているという…非の打ち所がないですね。

みよし:ありがとうございます。もう、このひと言で、今日もう終わりでいいんじゃないかと思うぐらい、完璧にまとめてくださいましたね(笑)。

○トラブルの中にこそチャンスがある

中田:実はまだ語りたいことがあるんです。最近、人と組んで仕事をする規模が、大きくなってきました。元々は相方採用、藤森(慎吾)君を選んだわけですが、去年あたりから音楽のことも始め、新規ビジネスとしてダンサーのメンバーや、スタイリスト、デザイナーなどを採用することになりました。となると、採用側の目線が必要になってきたので、大きな企業や優秀な企業は、どんな目線で選んでいるのかを聞いてみたかったんです。みよしさんは、ゲームのプレイを通して、どんなところを見ていますか? 通りやすい人、通りにくい人っているんですか? 言える範囲で結構です(笑)。

みよし:うーん…じゃあ、言える範囲で(笑)。僕らはグループワークでいくつか見ています。パーティプレイでは、1プレイヤーを複数人で回しプレイしてもらうのですが、当然うまい人や下手な人が出てきます。一番重要なのは、特にミスした時、どういう反応をするか、です。

中田:ミスした本人を?

みよし:いえ。全員です。ミスした本人はもちろん、まわりのメンバーも見ています。一応、勝利には向かってほしいけれど、全員で協力してプレイしてくださいという形です。特に競争心もあおりません。中にはゲームを始める前に「相手チームにアドバイスしてもいいですか?」という質問をする人もいました。

結局、僕らはたくさんアイデアを出していきたいと思っていて、カヤックの根本で、アイデアがいっぱいある人は深刻化しないという。困った時に、困ったと思ってしまったら思考停止です。アイデアがあれば、こんな方法があるな、あんな方法があるなと思えば、恐怖もなくなり、次にもいけるじゃないですか。失敗した時にみんなでカバーしようぜという気持ちを持っている人と、僕は働きたいですね。

中田:要するにトラブルが起きた時、いかにリカバーできるアイデアを出せるか、冷静でいられるか。トラブルは常に起きると想定することが、カヤックさんの根本的な考え方なんですね。その時に立ち向かえる姿勢、ポジティブな人を採用したいと。

……じゃあ、逆に、相手の失敗を攻撃する、味方の失敗をあざ笑い、ルールギリギリのところを攻め、調和を乱し、圧倒的な力で勝とうとする。しかし、結果を追求して、キチンと結果を残して、そいつ自身に何かを感じた、という時はどうします(笑)?

みよし:何かを感じたときは、絶対に採用します。基本的にうちの会社はヤバイことがしたいと思っているので(笑)。実際、合わないと思っていた人が、メチャクチャ活躍してくれる場合もあるので、何かで波長が合えば、一緒に働くのが楽しくなってきたりしますし。なので、一芸に秀でた人、というか1つ強みがある人は大歓迎です。

●お笑い芸人にとっての一芸「まっとうな努力」
○オリラジ中田が語るゲーム観

中田:ゲームって確かに色々な利用方法がありますよね。僕はソーシャルゲームをあまりプレイしていないんですが、ファミコン、スーファミ、セガサターン、プレイステーションなどで遊んだゲーム世代。常にゲームが身近にありました。これは妻とも話すんですが、ゲームは"悪"ではないと。新しいメディアのことをその前の世代ってすごく批判しますよね。今だったら"インターネットが悪い""ネットは悪の巣窟"とか。でも、僕らの世代はゲームへの偏見がなく、フラットにゲームの価値をわかっているので、ゲームを通して人となりを見るというのは非常に効率的。本当に「いちゲー採用」は面白い。イマドキっぽいし、古い企業が取れない人材が取れそうなので、僕は可能性しか感じないやり方だと思います。

みよし:僕も募集サイトのキャッチコピーなどを書くために色々調べたんですが、現在、ネットには、ゲームは無駄か、無駄じゃないかの論争が溢れています。太古の昔、本が世に出回った頃"本なんて読むやつはバカだ""本を読む暇があるのなら働け"などと書いてあったと言う人もいて、やっぱり同じことなんだなと思いました。ひょっとしたら10年後、20年後にはゲームはやっておいたほうがいいという話になっているかも知れませんね。

中田:人の価値や物の価値っていうのは、その内部にいる人は発掘しづらい。ゲームをやってきたという人の周りも、当然ゲーマーの確率が多くて、"ゲームばっかりやってるな俺達""ほんと駄目だな"とかいう話になるけど、ゲームをやったことのない環境や、それが活きる環境に身を置いたときに、圧倒的な力を発揮すると思うんですよね。

僕も音楽関係で面接をした際、本人に"ここがすごいね"って指摘しても、あまりピンときていないことが多かったんです。PRしてくれるところも凄いんですが、そこじゃないポイントを見つけて組み合わせてグループにするのが好きになりました。「いちゲー採用」でどんな人が集まるのかも非常に楽しみです。

みよし:ありがとうございます。

中田:ちなみに、少し脱線しますが、ゲームに関しては、他界したうちのおじいちゃんが好きで、RPGしかやらない人でした。当時のゲーム機をすべて揃えていて、使わなくなった写真現像のための暗室で、ずっとRPGだけをプレイしているっていう(笑)。

みよし:めちゃくちゃハイソですね!

中田:途中、受験などでゲームをやめちゃいましたが、それでもおじいちゃんはずっとプレイしていて、その影響で僕もRPG好きになりました。それこそ、おじいちゃんの形見は『ドラゴンクエスト4』だったり。一番思い入れがあるのは『ドラクエ4』で、『ファイナルファンタジー』シリーズに関しては、主人公ロックが出てくる『ファイナルファンタジー VI』あたり。仲間を集めて、ストーリーを進めるというのが頭にあるので、今もヘンな仲間を集めて、どこかに行くっていうことが好きですね。

○「いちゲー採用」の今後

みよし:通常、エントリーシートには、サークル活動を頑張りました、バイトを頑張りましたなどと書きますが、アナタはほかにも時間をかけたものがあるでしょ? と思うんです。就職活動に向けてやってきたことって、実はどうしても薄っぺらくなってしまう。

中田:合コンでよくある特技披露みたいに、ですね(笑)?

みよし:でも、今後ゲームを許容できる会社が増えてくると、サークル活動で1位になったことと、ゲームの大会で1位になったことは同じになると思っています。正直、ゲーム以外でも大学でやってきたことを自分の中で整理して書ければ、カッコいいことを書かなくてもいい。これを色々な会社でやってほしいんです。さらに僕らは次に向け、ゲームじゃないものを使ったり、これも書いていいんだなということも発信したりしていけたらなと思っています。

中田:受ける側の意識が変わってくるかもしれないですね。こんなことも書いていいらしい…みたいな。プラス、面接に適したゲームがさらに見つかるかもしれない。このゲームをやると面接のすべてがわかるみたいな(笑)。

みよし:それは…まずいですね(笑)。

中田:ちなみに「いちゲー採用」でカヤックさんに採用されそうな芸人としては、ゲームはわかりませんが、"一芸"秀でた芸人として見ると、"今、お笑い以外で評価されている芸人"には見込みがあると思っています。例えば、ピースの又吉(直樹)さんが作家として評価されたり、品川庄司の品川(祐)さんが映画で評価されたり、キングコング西野(亮廣)さんが絵本で評価されたり、渡辺直美がファッションブランドを作ったり。要するにお笑い芸人はお笑いだけやってればいいと言う時代が終わりを告げ、お笑い芸人が新規ビジネスをやり始めるのは、まっとうな努力だと思っています。エントリーシートに"僕は山手線にずっと乗っていて、2回乗らないと気がすまない"とか余計なことを1行目に書いていると、ドキっとしますよね。

みよし:たしかに、すごくドキッとします(笑)。

中田:でも、そこには複雑な理由があって、経済活動に繋がっているみたいな出口だったら、僕は採用されると思うんです。

みよし:その視点はすごいですね。

中田:要するに「いちゲー採用」でほしいのは、言われてないことをやってきた人、無駄だと思われたことをやってきた人。そういう求められていないけど、これまで爆発させてきたバイタリティがある人を採用したいという風なメッセージとして捕えていて、"他の事ができなくてゲームだけしてきた"だけじゃなく、ゲームが向いていた、ゲームで才能が開花した、だからゲームにのめり込んだ、みたいな人がいいですよね。
(担当ぱぴい)

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