テレビ屋の声 - 第15回 テレ朝『池上彰のニュースそうだったのか!!』保坂広司GP、ニュース解説番組をバラエティ班が作る強み

テレビ屋の声 - 第15回 テレ朝『池上彰のニュースそうだったのか!!』保坂広司GP、ニュース解説番組をバラエティ班が作る強み

画像提供:マイナビニュース

●池上彰とは「変な意味で馴れ馴れしい」
注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。

今回の"テレビ屋"は、テレビ朝日『池上彰のニュースそうだったのか!!』のゼネラルプロデューサー(GP)・演出を担当する保坂広司氏。ジャーナリストの池上彰氏をメインに据えた番組は各局で放送されているが、NHK退局後に先んじて起用したテレビ朝日の強みは、報道セクションではなく、バラエティ班が制作していることだという――。

――当連載に前回登場したフジテレビの武内英樹さんが、『池上彰のニュースそうだったのか!!』が大好きだそうで、「タブーとされているような宗教的・民族的なテーマも取り上げて、結構ギリギリのところまで攻めてる感じが良いなと思っているので、そこに踏み込んでいくバランス感覚のスタンスを聞いてみたい」とおっしゃっていました。

僕の知ってる限りだと、他局さんの池上さんの番組は報道のチームが作ってるんですよね。一方、僕らはバラエティ班なので、視聴者の皆さんが面白いだろうと思うことをエンタテインメントとして作ってるんです。もちろん報道の人にチェックなりご協力いただいてますけど、タブーというのは普通の番組と一緒で、見てる人が不快になるかどうか、言い過ぎなのかどうかという部分を重視している感じです。

――取り上げるネタはどのような基準で選定してるんですか?

とにかく視聴者の皆さんが知りたいこと、池上さんが伝えたいこと、教えたいことですね。例えば、森友学園問題はワイドショーが散々やっているけど、みんな興味があることだと思うので、ワイドショーとは違う池上さんならではの切り口ができるんじゃないかと考えるんです。

また、注目を集めるニュースっていうのは暗いものが多いんです。それを家族みんなでご飯を食べている時間帯にやるのはどうなんだろうというのがあるので、殺人事件が話題になっている時に、悲壮感を避けて見せるには、罪を犯した人が逮捕されたらどうなるんだとか、北朝鮮がミサイルを発射したら、そもそも北朝鮮はなぜそのような国になってしまったのか、ミサイルとは何なのか、など、ニュースから実はみんなが深く理解できていない部分を抽出するんです。その上で、面白いところを目いっぱい伸ばすというバラエティの手法で作っていくので、見てくれる人が楽しみながらちょっと得した気分になれるというのを意識しています。そういう考えに基づいて取り上げるネタを決めて、池上さんと一緒に台本を作成していきます。

――あらためて、池上さんの魅力や支持される理由はどういったところにあると思いますか?

偉ぶっていないところですね。僕は、芸能人に対してはある程度構える部分があるんですけど、池上さんにはそういうことがないんです。もともとNHKの記者さんだったというのもありますけど、同じ制作者としてしゃべっているのかもしれないですね。だから、僕らのチームが、池上さんに変な意味で馴れ馴れしいと思います(笑)。偉い人が、僕らが池上さんとしゃべっているのを見たら、「お前ら失礼だな!」って思うんじゃないかな(笑)

――同志というか、信頼関係があるんですね。

池上さんはいつも全国や世界を飛び回てるんで、番組収録の時も出先から大きな荷物を持ってスタジオに来て、終わるとまたどこかへ行ってしまうんです。でも、僕はその荷物を持たないですからね(笑)。そんな気さくさ、親しみやすさが、画面を通してにじみ出てるのではないでしょうか。

●他局がマネをしてきたから…
――池上さんがNHK退局後、最初にメインに据えた番組を作ったのはテレビ朝日さんだったと思います。それ以降、他の民放各局で池上さんの番組がどんどん放送されるようになりましたが、それらの番組への印象はいかがですか?

正直、うちのマネをしているはずだなと思って見てます(笑)。その時に僕らはどうすべきかとなったときに、2つの考え方があると思うんです。1つは、僕らがオリジナルだから、オリジナルを守ろうという発想。もう1つは、他がマネしてきたから変えていこうということです。そこで、僕らは後者の選択をしました。

――具体的にその変えていった部分とはどんなところでしょうか?

池上さんが解説する部分をバラエティにはどうしてもできないし、する必要もないので、VTRをバラエティ要素に寄せるということをしてます。他にも、セットの色味を少し変えるとか、パネラーのタレントさんに真面目な話の中で笑わせてくれる人を起用したりとか、そういう部分ですかね。ちょっとしたことなんですけど、そのちょっとしたことこそが、実は重要だったりするんです。

――まさに、バラエティ班ならではの施策ですね。

でも、難しいんですよね。あんまりバラエティバラエティすると、池上さんの良さが失われてしまうので。池上さんがオヤジギャグを言いながら解説するという部分は、誰がどう作っても変えられないんです。だから、そのフィールドや前後を含めた世界観をどうするか。たまに奇抜なことをする番組もありますけど、だいたい失敗してると思います。だって、視聴者の皆さんが求めているのは、池上さんが何をしゃべるのかということですからね。

その上で、テレビを作る以上は、新聞をバリバリ読んでるサラリーマンに向けてだけではなく、小さな子供からおじいちゃん・おばあちゃんたちにも見てほしいので、例えばアイドルの子がパネラーとして出ることにいろんな意見もありますが、同世代の人が何をしゃべるのかということがちょっとでも取っ掛かりになればという思いがあるんです。そんな中で、もがきながら作ってます(笑)

●『NHKスペシャル』はうらやましい
―――ところで、この連載には以前、『しくじり先生』の北野貴章ディレクターにもご登場いただきまして、その際、「保坂広司さんのことをすごく好きだったので、『保坂さんの下がいいです』とお願いして、『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』に入りました」と言っていました。

だから、今回のインタビューを受ける前に、北野と話したんですよ。「おまえの後だから嫌だ」って(笑)。でも、当時から番組作りへの熱意はものすごくありましたね。ただ、今調子に乗ってるから、ダメなんです(笑)

――最近テレビの規制が増えてきたということがよく言われますが、それを感じることはありますか?

もちろんありますよ。ありますけど、それはあくまで愚痴であって、テレビだけじゃなくて世の中全部変わってるんで、「昔は良かったのに」っていうセリフはよく聞きますけど、だからって今がダメだとは思わないですね。時代ですから仕方ないんですよ。それに、皆同じルールでやってるんで、その中でやりようはあるんだと思います。

――そんな保坂さんにとって、影響を受けたテレビ番組を1本挙げるとすれば何ですか?

もちろんバラエティは大好きなんですけど、『NHKスペシャル』ですかね。この世界にいて一番いいことって、普通では行けないところに行けるとこだと思うんです。観光でお金払っても入れないけどテレビの取材だからOKだとか、こんな人にインタビューさせてくれるっていうこと。それを豊富な時間と予算を使ってできる『Nスペ』はうらやましいです。僕も1年とかかけて、作ってみたいです(笑)

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…

僕自身アイドル好きっていうこともあるんですけど、『AKBINGO!』(日本テレビ系)の毛利忍さんとか、アイドル番組を作っている人の気持ちが知りたいですね。ファンという絶対的な顧客がいるけど、作り手としてはテレビである以上、みんなに見てもらいたい。でも、ファンに喜んでもらえるようにアイドルを魅力的に見せなければいけないけど、一般の人を置いてけぼりにしてしまうかもしれない…そのあたりの葛藤が知りたいです。あと、アイドル番組でMCをやってる土田晃之とかバナナマンとかサンドウィッチマンとかに「自分は前に出たくないの?」って聞くと、「あの子たちのためにやってるんです」って言うんですよ。みんな芸人なのに、不思議だなぁっていつも思うので、そのあたりも聞いてほしいですね。
(中島優)

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