チケット即完売! 「日本でロングランは難しい」定説を覆す、『髑髏城の七人』の作戦

チケット即完売! 「日本でロングランは難しい」定説を覆す、『髑髏城の七人』の作戦

画像提供:マイナビニュース

●作品じゃなく、俳優にファンがつく日本
現在、豊洲の新劇場・IHIステージアラウンド東京で上演されている『髑髏城の七人』。“花・鳥・風・月"と4つのシーズンに分け、それぞれ異なるキャスト、脚本・演出で1年3カ月にわたる長期公演が行なわれている。1年以上の公演でありながら、チケットはすぐに完売。当日券を求める人が列をなす事態となっている。

『髑髏城の七人』は、劇団☆新感線の代表作で、1990年の初演以来、7年ごとに再演されている。なぜ『髑髏城の七人』がここまで求められるのか、演出家のいのうえひでのりに話を聞いた。

○『髑髏城の七人』しかなかった

――今回、1年3カ月という長丁場に、『髑髏城の七人』を選んだ理由を教えてください。

最初話があった時にまず、1年以上同じ作品をやるのは、日本では難しいなと思ったんですよ。だから何本かやらなければいけないという話になり、同じ作品で何本かやるなら、うち(劇団☆新感線)のレパートリーには『髑髏城の七人』しかなかった。やってみて正解でしたよ。この作品しかないです。

話の骨格がしっかりしているので、応用が効く。七人のキャラクターの設定をちょっとずついじっても、骨格がぶれないので、面白く4シーズンで見せられます。

――4シーズンに分けて、出演者や演出を変えるというのも、驚きでした。

海外と違って、ロングランできるような演目がなかなか日本にない、というのが大きいですよね。例えば『エリザベート』のようにチケットが取れない作品でも、1年以上の公演は難しいと思うんですよ。やっぱり日本は、作品より俳優さんにお客さんがついてるので、ロングランで、しかも豊洲の辺鄙な土地に人を集めようと思うと、改めて「『髑髏城の七人』を4シーズンやる」という作戦しかなかったと思います。

――『髑髏城の七人』があってよかった、というお気持ちですか。

本当に、『髑髏城の七人』しかなかったですね。阿修羅(『阿修羅城の瞳』)じゃ難しかったと思います。このシアターの醍醐味として、場面転換がいろいろできて、しっかりと作りこんだセットで見せられるという点でも『髑髏城の七人』しかなかったなあと、"Season花"が開いてみて、改めて思いました。なんだかんだ言っても、ずっと再演している作品って、これだけなんですよね。キャストを変えて、新たに創造できる、間口の広さがこのホンにはあるんだと思います。

●BL要素、刀剣ブームもハマった!?
○『髑髏城の七人』は日本人が好きな話

――改めて、『髑髏城の七人』のどこがこんなに求められるんだと思いますか?

日本人が好きな話なんじゃないでしょうか。3人にするか、5人にするか悩んだこともありましたが、7人という点も良かった。何者でもない連中が集まって、巨大な敵に向かうというのも、もともと日本人が好きなパターンだと思うんです。そこにうまいことはまったというのは、お客さんの反応からも感じます。

あとは淡いBL要素があるとか、今はちょっとした刀剣ブームがあるとか(笑)。僕らは昔からやっているので、狙っているわけじゃないけど、もともとそういう要素がいっぱいある作品なんで、今の時代はそこにハマるんだ、みたいな驚きはありました。

――そういった感想も、キャッチアップされているんですね。

狙ってやっているわけじゃないんですが、こんな風に受けるんだと思って。じゃあちょっと狙っていこうかな、みたいな気持ちも芽生えますが(笑)。

――最近、殺陣をやる舞台もかなり多いですよね。

僕らが始めた頃に観ていた人たちが「こういうことやっていいんだ」と思われた点もあるかもしれないですね。ゲームのクリエイターや漫画家さんの中にも、新感線を観ていらっしゃる方がいるみたいで。そういう広がりが今、実を結んでいるのかもしれません。2.5次元ミュージカルで、昔の新感線がやっていたような衣装を見ると、僕たちはもうやらんぞ、と思ったりしますね(笑)。

昔は誰もやっていなかったし、お金もなかったから、「時代物でもブーツでいいじゃん」みたいなところがありました。髪の毛も「髷のヅラが買えないから長髪でやろう」みたいな。逆にそれが、今の時代では定番になっている。僕らは逆に、今はカツラも借りられるようになりました(笑)。

○時代が求める阿部サダヲ

――"Season花"の小栗旬さん、"Season鳥"の森山未來さん&早乙女太一さんと、2011年の通称"ワカドクロ"キャストが、再出演されていますが、何か意図はあるのでしょうか?

ワカドクロで知り合った俳優さんたちが、脂が乗っている時期に来ていると思うんです。(小栗)旬も出会った時から時間が経って、気力・体力、いろんなものが充実して、改めて"Season花"で挑戦できたし、当時19歳だった(早乙女)太一が25歳で、一番脂が乗った時に、もう1回できる。そういう出会いが、実を結んでるところもあります。

――逆に"Season鳥"主演・捨之介役の阿部サダヲさんは、かなり今までのイメージと違いますね。

捨之介にはどうしても「着流しの傾奇者」というパブリックなイメージがあったので、「阿部ちゃんで!?」と思ったんですけど、全然変える捨之介だったらありだな、と。そこがきっかけになって、"Season鳥"は設定も変えていこうと思いました。

――阿部サダヲさん、ちょうど2019年のNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の主役となることも発表されて。

やっぱり、時代のシンクロニシティじゃないですかね。うまいですよ、阿部ちゃん。古田(新太)と一緒で、会場の空気を感じながらお芝居ができる。これは、天性のものですね。華もあるのに、腕もある。安心して任せられる主役俳優さんだと思います。

――ちなみに、今注目している役者さんはいますか?

神木隆之介くんは、面白そうですね。映画『るろうに剣心』を見たらかなり動いてたし、やってくれたらいいなとは思いますけど、なかなか映像でハマってる人は舞台に来てくれないこともあるからなあ。

――舞台と映像を行き来する役者さんも、最近は増えているのかなという印象もありますが、舞台の良さはどこにあると思いますか。

舞台をやらなきゃいけない、と思っているところもあると思うんですよ。お客さんの前に緊張した状態で、自分の体を晒す経験ですからね。映像の演技も大変なんですけど、全てを晒すわけではないじゃないですか。編集もあるので、1素材になるという点が大きいと思います。逆に舞台は、ステージに出ちゃうと、本人が見せ方のディレクションも含めてやるから、自分のパフォーマンスの支配率が高くなる。そこが楽しいところでもありますね。

○『髑髏城の七人』情報

作・中島かずき、演出・いのうひでのりにより、1990年の初演以来、7年ごとに再演されている劇団☆新感線の代表作。これまでに古田新太、市川染五郎、小栗旬が主演を務めている。天正18年、織田信長の死後「関東髑髏党」に支配されている関東を舞台に、浪人・捨之介が偶然知り合った仲間たちと共に、因縁深い関東髑髏党の首領・天魔王と戦う。

IHIステージアラウンド東京で行われる"Season鳥"は阿部サダヲ主演にて、6月27日〜9月1日に上演。さらに向井理主演"Season風"(9月15日〜11月3日)、主演未発表の"Season月"(11月下旬〜)公演を控える。
(佐々木なつみ)

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