14年連載の『銀魂』、最終章をむかえ変化? 原作者・空知英秋の心境

14年連載の『銀魂』、最終章をむかえ変化? 原作者・空知英秋の心境

画像提供:マイナビニュース

●誌面より、単行本の気持ち良さを意識
週刊少年ジャンプにて2003年から連載開始以降、絶大な人気を誇り、累計発行部数5,100万部を超えアニメ化も好調な漫画『銀魂』。パラレルワールドの江戸を舞台に、”天人”と呼ばれる宇宙人が登場し、攘夷戦争で白夜叉と恐れられた銀時が主人公として活躍する。とにかく「なんでもあり」で、関係者も「こんな漫画はなかなかない」という同作が、最終章に入った今、満を持して実写映画化、7月14日より全国で公開される。

現在原作では地球の危機を迎え、過去に登場したキャラクターが総出演で物語が展開している。14年にもわたる長期連載がクライマックスを迎えようとしている時、作者は一体何を考えているのか。そして、漫画家・空知英秋の特殊さとは。マイナビニュースでは『銀魂』に関わる男性たちへの連続インタビュー企画「男達の銀魂道」を実施し、空知英秋と8代目担当の真鍋廉(集英社)に話を聞いた

○終わるからこそ解き放たれる

――最終章の構想はいつ頃からあったんですか?

空知:漠然と、最初から構想はありました。でも、細かいところは何も決まっていませんでした。なんとなくみんなが出てきて盛り上がりを作りたいなというのはありましたけど、打ち切りになったらできないから、そこまでは詰めてなかったです。いっぱいキャラクターがいる漫画なので、全員拾ってあげたかったし、銀さんだけが盛り上がる、というのは違う。みんなを主役にしたかった。

最終章では、表現の仕方もだんだん変わってきましたね。これまで、読み切り型の描き方が染み付いていたんで、演出も小さいコマでやっていたんですけど、せっかく最後なので、たっぷりページを使って、見せるところは大ゴマで見せたいなと。時間の流れが昔の銀魂と全然違うと思います。すごく長い。

それは、単行本を意識した感覚なんですよね。最終章になってからは、週刊は捨てて「もう、アンケートの順位はとらなくていいや」くらいの気持ちで、単行本で見た時の気持ち良さを目指しています。アンケートから解放されたいというか、「もう終わるんだしいいだろ!」と(笑)。

8代目担当・真鍋:担当としては、アンケートの順位が上がったらめちゃくちゃ嬉しいですよ!

空知:終わるからこそ、解き放たれるというか。「どうせ終わるからいいもんね〜」みたいな。

真鍋:そこは開き直らないでください(笑)。

――もう、打ち切りとかにはならないですもんね。

真鍋:いや最終章で打ち切られたら「今までのは何だったんだ」って……。

空知:でも、あんまりひどいと、わからないんじゃない?(笑)

真鍋:毎回最下位だったらあるかもしれないですけど、そんなことはありえないので!

――ちゃんと最後まで描ききれるというのは、すごく素敵なことなのかなと思います。

空知:残念ながら終了してしまう漫画もある中で、好きなところまで描ける機会をもらえるのもありがたい話だし、最後を描くの、結構好きなんですよ。途中だるいんですけどね(笑)。お話の最後の切なさをやりたくて描いているところもあるので。

――終わりを描く楽しさというのは、1話完結回にもつながりますか?

空知:終わりが描きたいから、短編を描きたいというところはありますね。始まりと終わりを描くのが好きなんです。

●ギリギリすぎてタクシーで「風の音を聞かせろ」
○原稿が遅いのは、ギリギリまで粘るから

――現担当の真鍋さんは『銀魂』の連載が開始された時、どんな感想を持たれていたんですか?

真鍋:僕は当時中学生でしたが、書店に銀魂の単行本を買いに行った記憶があります。

空知:絶対、買ってねーだろ!(笑)

真鍋:いや買ってました!

空知:そんな都合のいい話あるか! 「その2人がまさに今、出会った」みたいな。そんなわけないじゃん!

真鍋:いや本当に、ジャンプも読んでいて、読者の立場からすると「変な漫画が始まったな」「なんて形容していいかわからん」みたいな気持ちでした。変だけど、なんだか面白い。そういう感想は抱いてたんです。『銀魂』って漫画界を見渡しても特殊な存在の、良い意味で変な漫画だなと思います。

――真鍋さんから見て、空知先生のすごいと思うところはどんなところですか?

真鍋:お話の振り幅がギャグからシリアスまで本当に広いので、引き出しの多さにはとにかく驚かされます。それと、漫画そのものに限界まで食らいつく執念みたいなものに凄みを感じます。 空知先生は原稿が遅いというイメージがあると思いますが、単純に遅いというよりは、ぎりぎりまで考え抜いて妥協しないというのが理由なんです。もう正直、毎週締め切りがあるようでないみたいな感じはあって、僕も半泣きになりながら「空知さんちょっと、本当にそろそろお願いなんで、空知さん」って……。

空知:めっちゃリアルだった、今。ガン無視なんですけど(笑)。

真鍋:編集部からは「何やってるんだ」って。何ならビデオ通話がかかってきたり。 本当に仕事場を出て「タクシーに乗ってます」って言っても信じてもらえなくて、「窓を開けて風の音を聞かせろ」みたいな。

空知:(笑)

真鍋:印刷所からも「真鍋さん、出ました?」と連絡が来て、「今、出ます!」と言って、そこからなかなか出られないみたいな。でも、それも空知先生がただただ遅いというより……。

空知:今更フォローできるの!?

真鍋:やっぱり、そこまで粘って描いているんです。もちろん色々な人にすみませんと頭を下げないといけないですが、読者に少しでも楽しんでもらおうという空知先生の執念ですよね。いや、締切は締切なんですけど……。次週の進行が苦しくなるにも関わらず、少しでも良いものに仕上げようとしているのは、覚悟がないとできないことなんじゃないかなと思っています。毎週が綱渡りで、もうちぎれた綱をつなぎ合わせてるくらいのライブ感ですが……。

空知:その通りだと思います。迷惑かけて、申し訳ないなと思ってます。ただ、正直麻痺してるんですよね。俺も苦しんでるから、全員苦しめ! みたいな気持ちはありますね(笑)。

○すぐに漫画を描く

――これだけ長期の連載だと、終わった後はゆっくりしたいとか、あれをやりたい、と考えていることもあるんでしょうか?

空知:ちょっとは遊ぶでしょうけど、基本はやっぱり漫画が好きでやってるので、すぐに漫画を描くと思います。苦しいだけですけど、そこしか社会との接点がないので。漫画を描いていないと、しかばねなんですよ。生きるしかばね。何の役にも立っていないし、漫画自体も役に立ってないので、だったらせめて楽しませないと。それくらいしかないので。

……いや、こんなこと言ったらすぐやらなきゃいけなくなる。わかりません!

真鍋:えっ!?

空知:週刊が結構きついかなあって。

真鍋:生々しすぎますけど!

※「男達の銀魂道」、次回は福田雄一監督にお話を伺います。

(C)空知英秋/集英社 (C)2017映画「銀魂」製作委員会
(佐々木なつみ)

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