竹内涼真、"島谷ロス"起こした『ひよっこ』や『カホコ』で見せる安定感 - いろんなタイプのイケメン演じ分ける

竹内涼真、"島谷ロス"起こした『ひよっこ』や『カホコ』で見せる安定感 - いろんなタイプのイケメン演じ分ける

画像提供:マイナビニュース

NHKの朝ドラでヒロインをつとめることは、女優にとって登竜門であるが、ヒロインの相手役をつとめることは、男の俳優にとっても登竜門である。過去に、野村萬斎、向井理、松坂桃李、綾野剛、東出昌大、鈴木亮平、山崎賢人、坂口健太郎などが朝ドラをきっかけにブレイクした。

現在放送中の『ひよっこ』では、竹内涼真がヒロイン有村架純の恋の相手として抜擢され、さわやかな慶應生で、かつ、佐賀の製薬会社の御曹司・島谷純一郎役として、朝ドラのヒロインを支える男子役としての期待に存分に応えてくれる……と思ったら、恋が実ってわずか2週間で退場となってしまった。初登場は第10週で、退場は第17週。滞空時間、わずか7週間であった(26週分の7週だから、3分の1以下だ)。

とはいえ、過去、1回退場して、復活したパターンもある。『とと姉ちゃん』(16)の坂口健太郎のパターンのように、竹内涼真も今後どうなるかわからないが、今のところ、朝の楽しみがひとつ消えた。何の変哲もない白いポロシャツを細身のチノパンにインして素敵に見える男性は、日常では少ないので、朝、竹内涼真のその姿がもう観られないことが残念でならない。

○俳優・竹内ロスはない

とはいうものの、朝ドラで竹内が演じた役・島谷ロスはあっても、俳優・竹内ロスはない。水曜夜10時のドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ)のレギュラーで、引き続き活躍しているからだ。

『ひよっこ』と『カホコ』に重なって出演していた2週間は、演じる役柄の、あまりの違いが話題になった。『ひよっこ』では生真面目な上品なお坊ちゃんで、『カホコ』の麦野初はアルバイトしながら絵の勉強をしている大学生、言動はかなり荒っぽい。このふた役を、竹内涼真があまりに器用に全然違うふうに演じていることに感心する。ついでに言えば、番宣などで出ているバラエティー番組での竹内涼真も、『ひよっこ』と『カホコ』の役とは、見た目もだいぶ(時代が違うため)違っていた。24歳という若さ、芸歴4年と未だ短いにもかかわらず、ずいぶん器用にいろいろな顔を演じられる人だ。

さらに、まだあった。竹内涼真は、メナード 薬用ビューネのCMでは、4人もの人格を演じているのだ。薬用ビューネには、仕事に疲れて帰宅した女性に癒やしをくれる“ビューネくん”という妖精のようなイメージキャラクターがいて、竹内は4代目に当たる(1代目・藤木直人、2代目・押尾学、3代目・松田翔太)。拙著『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)で、朝ドラのヒロインの相手役は、”「慰めて抱きしめる」ビューネくん”的な人物が求められると書いたのだが、竹内涼真が『ひよっこ』で、ヒロインの相手役に抜擢された時、ビューネくんそのものが登場した! と小躍りしたものだった。

竹内演じる4代目のビューネくんはどれも、仕事で疲れた女性を肯定し、前向きにさせてくれる嬉しいキャラには変わりないが、そのアプローチが「うなずきビューネくん」「理系ビューネくん」「熱血ビューネくん」「大人ビューネくん」と4つある(誰が一番人気か投票する企画もあった)。ひたすら話を聞いてくれるビューネくん、状況を論理的に分析するビューネくん、熱く励ますビューネくん、先回りして甘やかしてくれるビューネくん(ドライヤーかけてくれるところが萌え。投票では、この子が一番人気)。竹内涼真は、ここでもみごとに4タイプのビューネくんを演じ分けている。

従来、キャリアの短い若い俳優は、最初は同じ印象で売っていくことが多いが、竹内はそれとは違い「いろんな役ができます」という戦略の元で活動しているようだ。といって、彼の事務所ホリプロの先輩・松山ケンイチのようなカメレオン俳優というほどの、細胞レベルで強烈に変化するふうでもなく、あくまで“癒やしのイケメン”というカテゴリーの中で、いろんなタイプを演じるという、逆に、そのほうが難しいんじゃないかというチャレンジをしている。つまり、「何をやっても“竹内涼真”」という俳優としてのマイナス点は払拭し、何をやっても“イケメン”という共通イメージは守る、という地味に前向きな戦略だ。若い俳優のサバイバル術もなかなかに大変である。

○消えることのない清涼感と安定感

こうして、「うなずきビューネくん」「理系ビューネくん」「熱血ビューネくん」「大人ビューネくん」「御曹司島谷くん」「芸術家肌麦野くん」と次々に、様々な女性を癒やすイケメンを演じ続ける竹内涼真。彼に共通することがあるとすれば、その安定感にほかならない。お坊ちゃん役でも、芸術家肌のあんちゃん役でも、ビューネくんでも、常に、すっとまっすぐに伸びた木のように、そこにもたれると安心できるような、清涼感と安心感は消えることがない。185センチの高身長がそう見せるのか。

その安定感の、最たる成功例は、映画『帝一の國』の大鷹弾役だろう。家が貧しいため、バイトをして高校に通いながらも、学業、スポーツ、人格すべてが優れ、主人公のライバルとなる。主人公が敵わない! と焦る人間力の大きさを、竹内涼真は、持っている。さすが、国民的ヒーロー・仮面ライダー(ドライブ)だっただけはある。

その包容力は、小さな男の子のみならず、大きな女の子(男子を子に持つ若ママなど)にも波及する。男子のヒーロー仮面ライダーが、男子を子に持つ母のアイドルになったのは、平成ライダー以降といっていいかと思う。“イケメンライダー”が女子に人気になったのは、『仮面ライダークウガ』(00年)のオダギリジョーからだ。竹内涼真は偶然にも、オダギリジョーと同じように、顎にホクロがあり、平成イケメンライダーの正当な後継者のようでもあるから、それはもう女性人気が期待できるというものだ。

顎にホクロがある俳優は意外といて、朝ドラ『あさが来た』でブレイクした波瑠もそうで、『ひよっこ』の有村架純、他に三浦春馬にもある。南野陽子にも。とってしまったけれど、古田新太にもある。利点は、ぱっと見、インパクトが出ることだ。

平成ライダー、ビューネくん、朝ドラヒロイン相手役、ホクロ……と人気ものの条件を多数クリアしている竹内涼真には、期待しない理由はひとつもない。

■著者プロフィール
木俣冬
文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
(木俣冬)

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