舞川あいく、故郷・台湾を撮る思い「いじめられたこともあった」 - フォトグラファーのルーツは"人の喜ぶ顔"

舞川あいく、故郷・台湾を撮る思い「いじめられたこともあった」 - フォトグラファーのルーツは"人の喜ぶ顔"

画像提供:マイナビニュース

●ロケで悔し泣きしたワケ
『CanCam』の元専属モデル・舞川あいく(29)は、フォトグラファーとしての顔も持つ。マネージャーから写真を評価されたことがきっかけで一念発起し、写真家・山岸伸氏に師事。通算5回目を迎える写真展『瞬間の色〜恋〜』(オリンパスギャラリー東京:17年12月15日〜20日/オリンパスギャラリー大阪:18年1月26日〜2月1日)は、台湾人を両親に持つ舞川の"心の故郷"を写したものだ。

日本生まれ日本育ち。かつては台湾人であることにコンプレックスを感じていたという舞川だが時代の変化と共に個性として受け入れられるようになり、今あらためて台湾の魅力を、写真を通して伝えようとしている。小学生の頃、写真をプレゼントした時の友だちの笑顔。今も人々の喜ぶ顔を求めてシャッターを切り続ける舞川のルーツを探った。

○本当に大好きな場所だからこそ伝えたい

――5回目の写真展になります。毎回どのようにテーマを決めているんですか?

毎回1つずつ、マネージャーさんと話し合って決めています。私の故郷は台湾なんですが、ずっと前から撮りたいと思っていて。そろそろ良いタイミングかなという話になったんです。

――写真やブログから、一番撮りたかったテーマだったのではと何となく感じました。「タイミング」というのは?

私の両親は台湾人ですが、日本で生まれて日本で育ちました。おじいちゃんとおばあちゃんは台湾に住んでいます。私にとっての故郷は台湾で、毎年両親と一緒に帰ったり、友人が台湾に行きたいと言ったら案内したり。故郷よりも近い存在というか、本当にホッとする場所です。大好きな場所なので、その魅力を日本のみんなにも伝えたいと思っていたので、今回夢が叶いました。

親戚のみんなが案内してくれたり、おじいちゃんやおばあちゃんが迎え入れてくれたり……とにかくリラックスできる場所。東京にいると「仕事しなきゃ!」みたいになるんですけど、台湾にいると心が緩くなって「自分のルーツ」を実感できるというか、初心に戻れる。私にとってはすごく大事なことで、本当に大好きな場所だからこそ、写真展でその魅力を伝えたいと思いました。

――台湾に帰った時はどのように過ごされているんですか? 親戚一同集まったり?

そうですね。お母さんとお父さんのきょうだいがそれぞれ7人と8人の大家族(笑)。みんな優しくて、すぐに案内したがるんです。空港に迎えに来てくれたり、会食の時間をわざわざ作ってくれたり。だから、それだけでスケジュールが埋まっちゃうんです(笑)。

――台湾といえば、東日本大震災の義援金額が世界一だったことも話題になりました。そういう優しさのイメージがありましたが、実際にそうなんですね。

向こうに行くと、本当に日本人のことが大好きなんだということがすごく伝わります。看板の横に日本語でフリガナが振ってあったりとか、メニューのほとんどが日本語でも書いてあったり。飲食店でも、こちらが日本人と分かると日本語で話し掛けてくれる。海外なんだけど、海外に行った気があまりしなくて、道も教えてくれるのでそんなに困ることはないと思います。

○台湾人であることのコンプレックス

――周りの人に真っ先にオススメするスポットは?

『千と千尋の神隠し』のモデルにもなったといわれる九フン、周りでも行きたがる友だちも多いです。建物内にはカフェもあって私もお父さんやお母さんと一緒に通っています。お昼もステキなんですが、夜は提灯がついて、もっとノスタルジックな雰囲気で感動しますよ。昔にタイムスリップしたような感覚に浸ることができます。食べ歩きもオススメです。見ても食べても楽しい!

最初は私も周りの人にオススメを教えてもらって、そこから台湾についていろいろなことを知りたいと思いはじめて、気づけばその魅力を伝えたいと思うようになりました。

――こうして仕事を通して故郷の魅力を伝えられるのは幸せなことですよね。

そうですね。最初は自分が台湾人ということにすごくコンプレックスがあったんですけど、今はそれが個性と思えるようになってきて、日本と台湾の架け橋になれるようなことがしたいとずっと思って本(『おいしい台湾』宝島社)も出しました。

――ブログには「台湾で写真を撮りながら楽しいこともあったけれど辛かったことも、悔しくて泣いたことも」とありました。どのような出来事があったんですか?

台湾語がパーフェクトではないので、向こうに行って撮影するとうまくいかないこともあって。大好きな子どもを撮る時にはご両親に許可をいただかないといけないんですが、なかなか通じない歯がゆさも……。すごく悔しかったんですが、いま振り返ると台湾語を勉強するチャンスなのかなと前向きに考えています。

●台湾の国民性を捉えた一枚

○背伸びをしなくて、緩くいられる

――先ほどコンプレックスがあったとおっしゃっていましたが、何かがきっかけで考えが変わったんですか?

小さい頃、「みんなと一緒」ということにすごく安心感があるじゃないですか? だから、「あいく」という名前もすごく嫌で。国籍の違いでいじめられたこともあったんですが、時代が変わって「人と違うこともすばらしい」という風潮になっているので、逆にプラスに捉えてもいいのかなって。自分にしかできないようなことをやりたいと思うようになりました。

今回は一人旅だったんですけど、お父さんが休めるタイミングがあれば連れて行って、昔お母さんとデートしていた場所にも行きました。30年ぶりだったそうで、「当時は38度くらいの気温で、熱中症になったから帰った」みたいに、思い出してました(笑)。道を間違えたら、親子らしいケンカになったり。そこも含めて、あらためて自分のルーツを確認できました。

――そうやって故郷をカメラを通して見ると、あらためて気づくこともありそうですね。

写真展に備えて何度も足を運んだんですが、やっぱりその都度新しい発見があります。すごく心地が良くて、「台湾のことが好きだなぁ」って。短期間ではなかなかコミュニケーションが取れないんですが、徐々に自分も積極的になっていって。飲食店で隣の人から「余りものだけど食べる?」みたいに声を掛けられたこともありました(笑)。

――日本だったら警戒しますよね(笑)。

そうなんです(笑)。みんな悪気はなくて、気さくでフレンドリー。私も日本の友だちから「人懐っこい」「距離が近い」とよく言われます。自分自身、良いものは良い、悪いものは悪いみたいにハッキリした性格なんです。台湾ではそういう感覚がみんな同じなので、とても居心地が良くて。日本では「かわいい」と思ってなくても言わなきゃいけないような空気を感じたこともあったので、台湾の背伸びをしなくて、緩くいられる環境はすごく好きです。
○撮られることの苦手意識と「自分の崩し方」

――いちばん印象的だったのが、街中の子どもたちが水で遊んでいる写真でした。通りすがりの人に水がかかるとトラブルにもなりそうですが、写真の登場人物たちはみんな微笑ましく見つめていますね。

台北で撮った写真です。目の前の男の子たちがすごく楽しそうに水遊びしていて。私自身もすごく元気をもらったし、いいなと思って撮った一枚です。サングラスかけてて、ヤンチャな男の子たちでした(笑)。台湾の人たちはすごく意見がハッキリしているからといって対抗するわけでもなくて、互いを認めて尊重し合ってる、そんな空気があります。

――これまで「人」を撮ってきて、何か気づいたことはありますか?

あまり人とのコミュニケーションを取らないで撮ってきたというか。私、すごく人見知りで、実はあまりカメラを向けられるのも好きじゃないんです。カメラ目線も苦手なんですが、モデルという職業柄やっていて。本当は恥ずかしがり屋で人前でしゃべることも緊張します。でも、写真展をやるとなると、そんなことは言ってられない。そういう「自分の崩し方」を学んできて、5回目になって子どもの写真もちょっとずつ撮れるようになってきたかなと思います。

――むしろ、有名人は写真に撮られ慣れているので、その違いはありますよね。

そうですね。これまでの写真展での撮影はきちんとアポを取っていたので、「写真展用の写真」という心の準備をしてきてくださいます。台湾ロケでは、逆にライブ感を楽しんでいました(笑)。

○私の写真にはどのような特徴があるんだろう?

――フォトグラファーとして2012年から活動していますが、もともと写真が好きだったんですか?

小学生の頃、使い捨てカメラで休み時間に友だちを撮ったりして、それを現像してプレゼントするとすごく喜んでくれるんですよね。「ありがとう」と感謝されるのがすごく嬉しくて。でも、自分を撮ったり、誰かに撮ってもらったりすることは一度もなかったです。

モデルの仕事でも、自分より他の人のロケーションとか細かいところばかりが気になってしまいます。ただただ写真が好きで、趣味が仕事になって人に評価されるようになってから、すごく緊張するようになりました(笑)。

マネージャーさんをはじめ周りの方が写真を評価してくださったから仕事につながったんですけど、それまではそんなつもりで写真を撮っていませんでした。転機は、『CanCam』でオリンパスを使って写真を撮る企画。使い捨てからオリンパスになった瞬間でした(笑)。

――そうやって仕事がつながっていったわけですね。

何よりもうれしかったのが、ファッションだけじゃない自分の表現の場所が増えたこと。写真を撮り続けて5年経ちましたが、「私の写真にはどのような特徴があるんだろう?」と最近思いはじめて。私にしか撮れない写真とは何なのか。人を撮るのが好きなんですが、「自分」をもう少し追求していきたいと思います。

■プロフィール舞川あいく1988年8月17日生まれ。東京都出身。O型。2009年から2014年までファッション誌『CanCam』の専属モデルを務める。2012年からはフォトグラファーとして活動し、写真家・山岸伸氏に師事。これまで、アスリートたちを撮った「瞬間の色〜輝〜」(14)をはじめ、写真展を4回開催している。
(水崎泰臣)

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