草なぎ剛「僕自身で良い」トランスジェンダーの主人公を演じた思い “元気になれるメッセージ”も<「ミッドナイトスワン」インタビュー>

草なぎ剛「僕自身で良い」トランスジェンダーの主人公を演じた思い “元気になれるメッセージ”も<「ミッドナイトスワン」インタビュー>

モデルプレスのインタビューに応じた草なぎ剛(C)モデルプレス

【モデルプレス=2020/09/25】映画『ミッドナイトスワン』(9月25日公開)で主演を務めた俳優の草なぎ剛(くさなぎ・つよし/46)が、モデルプレスらのインタビューに応じた。これまで様々な役を演じてきた草なぎが今回挑んだのはトランスジェンダーの凪沙(なぎさ)役。どのように役に向き合ったか、表現者として今伝えたいことを聞いた。

◆映画『ミッドナイトスワン』

同作は、Netflix「全裸監督」が話題となっている内田英治監督による完全オリジナル脚本作品。心身の葛藤を抱え生きてきた凪沙と、親から愛を注がれることなく生きてきた少女・一果(いちか)の姿を通して“切なくも美しい現代の愛の形”を描くラブストーリー。

凪沙は故郷の広島を離れ東京、新宿を舞台に生きている。あるきっかけで親戚から預かった一人の少女と暮らす事になってしまった。母から愛を注がれずに生きてきた少女、一果と出会ったことにより孤独の中で生きてきた凪沙の心に今までにない感情が芽生える。一人生きてきた少女との出会い、自らの“性”の葛藤、実感した事の無かった“母性”の自覚を描く軌跡の物語。

◆草なぎ剛、“母性”の演技は「理屈を考えてもできることじゃない」

「この本に出会えたときから新しい世界が僕の中で広がっていて、読んだときに涙が溢れてきて、新しい感情だなと思えました」と作品との出会いを振り返った草なぎ。演じる上で一番難しかったのは“母性”。「僕の中で色んな役作りがあるとすれば“母になる“という役作りは今までやったことがなかったですし、理屈を考えてもできることじゃないのでそこはやりながら。樹咲ちゃんの目を見ると愛おしくなっていきました」と、オーディションで抜擢され今作で女優デビューを果たした服部樹咲と対峙していくにつれて、自然と芽生えていったと明かした。

「自分の母親の母性ってどういうものだったのかなとか。今までももちろん家族を大切に感じていたけど、より身近にある家族とか人に対して感謝しないと、と思った」と母性というテーマを演じる上で、自身の母親に思いを馳せという。

◆草なぎ剛、オーディションで抜擢された服部樹咲との共演

凪沙と一果、理解しあえるはずもない二人を繋ぐのが、バレエ。ストーリーは凪沙が働く新宿のショーパブで、白鳥に扮した衣装でバレエダンスを踊るシーンから始まる。やがてバレリーナとしての一果の才能を知った凪沙は一果のために生きようと思うように―――

「バレエはやったことがなかったので単純に足がすごく痛くて、冒頭のシーンは一人間違っちゃうと撮り直しになっちゃうから緊張しましたね。でも撮影の合間にも裏で皆が揃うタイミングで練習したりして楽しかったです。一果が踊ると一瞬でその場の空気が変わってしまうようなエネルギーがあったんです。凪沙が一果にどんどん感情移入していくのはバレエがきっかけだし、バレエがあることによって母性が目覚めてきたというのはあったかもしれない」

バレエ経験を前提としたオーディションで数百人の中から一果役を射止めた服部について「樹咲ちゃんは初めての演技だったので監督に演技指導をすごくしてもらって大変そうだったんですけど、僕はあんまり監督と演技については話さなかったのでこのままいけば良いんだなと思って、監督が上手い形で挑戦してくれて自然に樹咲ちゃんと距離が縮めていけたんじゃないかなと思います」と語る。

年齢を重ねて現場での後輩に対する意識も変わってきたようで、「周りを見ても監督も僕より下の人が増えてきたし、しっかりしなきゃいけないのかなとは思います。僕も上の方に引っ張ってもらって作品に出られているので、相手によって違うんですけれど、今回はどういう風にしたら彼女(服部)が良くなるのかな、とか。当たり前なんですけど自分だけ良くなっても作品って良くならないんです。大きな心で周りを見るというか、プラスになることがあったら教えてあげたいという気持ちは出てきたかもしれない」と自身を分析した。

◆草なぎ剛、トランスジェンダー役は「僕自身で良い」

トランスジェンダーを始めLGBTQの印象について「若いときからそういった方々と一緒にお仕事をさせてもらっていたのもあって特別なことだとは思ってなかったです。『男女抜きにして、話そうぜ』というか、人間として向き合うことが大事かなと」と話す草なぎは、凪沙を演じるにあたっても「役作りとしては僕としては何もやってなくて」と至って自然体。

「すごくメイクさんと衣裳さんが上手で、衣裳合わせのときから『なんかいけんじゃないかな』と思わせてくれました。後半では少し絞ったので、夜ラーメン食べなかったりとか、まあ普段から食べないんですけど(笑)、お酒飲まなかったりとかしましたけど、2日くらいだけですよ。あとはメイクと照明の力です」

長い髪の毛とコートをたなびかせながらハイヒールブーツで新宿の街を颯爽と闊歩するシーンが印象的。喋り方や所作に苦労しなかったか聞くと、「わりかし自然に。こういうものって多分やりすぎたらちょっとクサくなるかなと思って。事前に監督から資料を渡されて実際にトランスジェンダーの方に何人か会ったりもしたんですけど、色んな方がいて。そりゃそうですよね。だから僕自身で良いんだなと、変に女っぽくしなくて良いなと」とフラットに草なぎ自身が考える凪沙像を作っていけたのは、当事者に会った上で導き出した結論故。確かに、ステレオタイプな演技は一切見当たらないのに、確実にスクリーンに映るのは凪沙であって“草なぎ剛”ではなかった。

それでもヒールには苦労したようで「足が痛いので撮影以外はずっと草履はいてやせ我慢してやっていました。でもヒールを履くならあの歩き方が一番歩きやすくなるというか、そういう風にできているのかもしれないですね」と笑った。

5年ほど前から内田監督がトランスジェンダーの疑似親子の物語をつくりたいと構想し、やっと実現に至った今作。LGBTQを取り上げる作品はここ数年国内でも増えてきたが、「偏見もあるし、日本はその点まだ遅れているみたいなのでもっと自由に認め合えるような社会になると幸せですよね」と作品を通して伝えたい思いを語る。

試写を終え、草なぎはしばらく席を立てないほどの感動を味わったという。

「今までも自分の作品を観て『良かったな』と思うことはあったんですけど、今回は特に余韻に浸りたい気持ちになって映画館だったら2分くらい浸っていたかったですね。監督に『巡り会えて良かったです』と伝えました」

◆草なぎ剛、コロナ禍で感じたエンタメの役割

ステイホーム期間中は愛犬・クルミちゃんが赤ちゃんを出産。この日も「今日も散歩してきました」と目を細めた草なぎは「わりかしクルミちゃんと一緒にいて、子どもを産んでくれて子育てに必死だったので余計なことを考えなかったりして。あとはテレビとかYouTube、Amazonプライム、Netflixとか観たり…外に出て行きたい気持ちはあるけどクルミちゃんとエンタメのパワーで今も乗り切っている感じですね」とコロナ禍でエンターテインメントの役割も改めて実感。

「もちろん人の命が一番大事で最初に守らないといけないので、エンタメとかはその次になっていくんだけど、心が明るくないとつまらないし、生きていく中でエンターテインメントの世界ってとても需要があるものだなと改めて感じました。今まで普通にできていたことができなかったり、この経験を積んだから次のステップに良い方向に進めるんじゃないかなと思います。作品を通して人って元気になるなと改めて感じたりもしているので、沢山の人に楽しんでもらって、この作品を観てこの時期だからこそ話し合ってもらえたら」と呼びかけた。

最後に閉塞的な気持ちになりがちなこの状況下にファンに向けて“元気になれるメッセージ”をもらった。

「僕らは皆ともに生きていると思うので一人じゃ生きられないし、必ず何かを乗り越えた後には良いことが待っているのでこのピンチを乗り越えた後には必ずチャンスがあると、諦めないで欲しいです」

(modelpress編集部)

◆映画『ミッドナイトスワン』

出演:草g剛 服部樹咲(新人) 田中俊介 吉村界人 真田怜臣 上野鈴華
   佐藤江梨子 平山祐介 根岸季衣 水川あさみ 田口トモロヲ 真飛 聖

監督・脚本:内田英治(「全裸監督」『下衆の愛』)

音楽:渋谷慶一郎

<ストーリー>

故郷を離れ、新宿のショーパブのステージに立ち、ひたむきに生きるトランスジェンダー凪沙。ある日、養育費を目当てに、育児放棄にあっていた少女・一果を預かることに。常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。理解しあえるはずもない二人が出会った時、かつてなかった感情が芽生え始める。

◆草なぎ剛(くさなぎ・つよし)プロフィール

1974年7月9日生まれ。1991年CDデビュー。主な出演作は、『黄泉がえり』(03/塩田明彦監督)、『日本沈没』(06/樋口真嗣監督)、『あなたへ』(12/降旗康男監督)、またテレビドラマは「僕と彼女と彼女の生きる道」(04/CX)、「任侠ヘルパー」(09/CX)など、多数作品に出演を果たす。2017年9月にはオフィシャルファンサイト「新しい地図」を立上げ、その後自身主演の『光へ、航る』(太田光監督)を収めたオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』(18)は2週間限定公開の中、28万人以上を動員し、大ヒット。また、音楽劇「道」(18/演出:デヴィッド・ルヴォー)、「家族のはなし」(作/演出:淀川フーヨーハイ、あべの金欠)、「アルトゥロ・ウィの興隆」(作:ベルトルト・ブレヒト/演出:白井晃)など、舞台作品にも出演。その他出演作に、西加奈子原作の『まく子』(19/鶴岡慧子監督)、『台風家族』(19/市井昌秀監督)がある。


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