ファン急増のシネマ・コンサートは「現代のオペラ」、人気コンダクターを直撃取材

シネマ・コンサートが人気に 今夏はジョージ・ルーカス監督『スター・ウォーズ』上演

記事まとめ

  • この夏、『スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018』が日本各地で開催された
  • シネマ・コンサートは、映画全編上映に合わせて音楽パートをフルオーケストラが生演奏
  • 今回は、東京フィルハーモニー交響楽団が演奏し、ニコラス・バック氏が指揮をとった

ファン急増のシネマ・コンサートは「現代のオペラ」、人気コンダクターを直撃取材

ファン急増のシネマ・コンサートは「現代のオペラ」、人気コンダクターを直撃取材

シネマ・コンサート界の人気コンダクター、ニコラス・バック (C)ORICON NewS inc.

この夏、日本各地で開催され、いずれも大盛況だった『スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018』。最近、さまざまな作品で実施されている“シネマ・コンサート”の『スター・ウォーズ』版だ。

 シネマ・コンサートは、音声やセリフ、効果音はそのままに、音楽パートをフルオーケストラが、大スクリーンでの映画全編上映に合わせて生演奏する、新たなライブ・エンタテインメント。大スクリーンでの映画上映と生演奏による音楽の両方を同時に楽しめるところが魅力だ。

 今回、ジョージ・ルーカスが全世界を驚愕させた旧三部作となる『新たなる希望』(1978年)、『帝国の逆襲』(80年)、『ジェダイの帰還』(83年)の3作品を上演。演奏は、国内屈指の名門、東京フィルハーモニー交響楽団が務めた。

 指揮をとったのは、オーストラリア出身のニコラス・バック(36)。ニコラスは、昨年、(日本で)「スター・ウォーズ」シリーズ初となる『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 in コンサート』でも指揮をとった。シネマ・コンサート界の人気コンダクターである彼に、シネマ・コンサートの魅力を聞いた。

■ジョン・ウィリアムズ音楽の「オタクです」

 ニコラスは、作曲家、指揮者、編曲家、そしてヴァイオリニスト、ピアニストとしても活躍する多才な音楽家。ロイヤル・メルボルン・フィルハーモニックオーケストラにて自身のオリジナル曲をいくつか発表しており、映画・テレビ・ミュージカル・バレエ音楽の作曲なども行っている。

 シネマ・コンサートのコンダクターとしても引っ張りだこで、『サイコ』『ピクサーinコンサート』『スター・トレック:ライブインコンサート』『バック・トゥ・ザ・フューチャーinコンサート』『インディー・ジョーンズinコンサート』『E.T.inコンサート』『美女と野獣 ライブ・オーケストラ』『ハリー・ポッターinコンサート』、そして「スター・ウォーズ」シリーズと、超メジャータイトルが並ぶ。

――シネマ・コンサートのコンダクターとして心がけていることは?

【ニコラス】シネマ・コンサートでは、スクリーンの映像とオーケストラの音楽がほんのわずかでもズレてしまったら、すべてが台無しです。何よりも一体感が大事。それを実現するために、映画をよく見て、その映画のことを知ることを心がけています。『ギターヒーロー』というビデオゲーム(画面に流れてくる楽譜に合わせてコントローラーを操作して曲を奏でるゲーム)があったけど、僕はいろんな映画作品をプレイする“コンダクターヒーロー”みたいなものだね。

――今回は「スター・ウォーズ」旧三部作、3作品をマスターしなければならなかったんですね。

【ニコラス】3作品はたしかに大変でしたね(笑)。でも、僕は子どもの頃から、エピソード5(『帝国の逆襲』)のサウンドトラックカセットを持っていて、よく聴いていました。僕はジョン・ウィリアムズ音楽のオタクと言ってもいい。自然に身についている感じがありました。

――『スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018』では、20世紀FOX映画のファンファーレの生演奏ではじまり、続いてメインテーマが流れた瞬間、鳥肌が立ちました。

【ニコラス】『スター・ウォーズ』のメインテーマは、20世紀FOXのファンファーレの直後に流れることを意識して、同じ「B♭メジャー(変ロ長調)」で作られているんですよね。そういうところもジョン・ウィリアムズの天才的なところだと思います。

――ニコラスさんにとって、ジョン・ウィリアムズはどんな存在ですか?

【ニコラス】音楽の天才。ジョン・ウィリアムズ神社があったらお参りに行きたいし、神棚に祀(まつ)って毎日手を合わせたい、それくらい尊敬しています。映画音楽を聴くという文化を作った人であり、クラシック音楽に並ぶジャンルに押し上げた人物。僕の甥っ子と姪っ子は、モーツアルトは聴かないけど、ジョン・ウィリアムズは聴くんです。

――映画をライブ感覚で“体感”できる新しいエンターテインメントとして、シネマ・コンサートのファンが増えているそうです。どんなところが魅力だと思いますか?

【ニコラス】今から100年前、最も人気のあるエンターテインメントは演劇と生演奏で構成されたオペラでした。今、最も人気のあるエンターテインメントは映画でしょう。しかし、映画には生演奏がついてない。映画と生演奏で構成されるシネマ・コンサートは、よりオペラに近いイメージ。生演奏の迫力は臨場感を増幅させ、視覚と聴覚の相互作用で映画の中のせりふやシーンがより鮮やかに響いてくる。そういう発見があり得るのも一つの魅力ですね。

 特にジョン・ウィリアムズは生オーケストラにこだわってきた作曲家。生身の人間が気持ちを込めた演奏こそ、生身の人間の心を揺り動かすことができるということを信じ、実践してきた人なので、生演奏を聴きながら映画を楽しむというのは、理想的なことなのではないでしょうか。映画にとって音楽がどれほど重要で不可欠なものか、ということもわかっていただけると思います。

――クラシックのコンサートは敷居が高いイメージがありますが、シネマ・コンサートは名作映画を大スクリーンで見られるというだけで行ってみようかな、というモチベーションになりそうです。

【ニコラス】世界中のオーケストラが集客に苦労する中、『スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018』のチケットは完売が続出しました。映画をきっかけにオーケストラの生演奏の良さを知ってもらい、音楽ファンも増やすことができたらいいですね。

■小学生の子どもたちも引きつける生演奏の魅力

 『スター・ウォーズ in コンサート JAPAN TOUR 2018』では、子ども料金(3歳以上小学生以下、大人の約半額)を設けたことで、親子連れも多く来場。上映前の会場のロビーでは、ミニアンサンブルの演奏が楽しめるロビーコンサートを行っていたのだが、スマートフォンで動画撮影に夢中な大人が目立ったのに対し、最前列で熱心に演奏者を見つめる子どもたちの姿が印象的だった。音楽には、子どもを引きつける力がある。

 スター・ウォーズの世界に入り込めるフォトスポットも人気で、終演後も長蛇の列ができていたし、コスプレをしている人もチラホラ。ちなみに、取材をしたのは、9月1日の東京国際フォーラム昼公演(『新たなる希望』を鑑賞)だったのだが、『新たなる希望』を大スクリーンで全編を観るのは初めての経験だった。フルオーケストラの生演奏も素晴らしかったし、シネマ・コンサート自体のファンが増えているというのもわかる気がした。

■芸術の秋もシネマ・コンサートが目白押し

『ディズニー・オン・クラシック 〜まほうの夜の音楽会 2018』
 アラン・メンケンこん身の傑作『ヘラクレス』の音楽をフィーチャーし、ディズニーの名曲の数々が楽しめる。9月〜12月、全国51公演。

『ディズニー・オン・クラシック 〜ジルベスター・コンサート 2018/2019』
 “ジルベスター”とは、ドイツ語で「大みそか」の意味。ヨーロッパをはじめ世界各国や日本国内でも、オーケストラ演奏によるカウントダウンイベント、“ジルベスター・コンサート”が開催されているが、そのディズニー版ともいえる音楽イベント。

『Pixar in Concert』
 ピクサー・イン・コンサートは、1986年に誕生したピクサー・アニメーション・スタジオ歴代の作品をステージ後方に設置した大スクリーンで上映。各々の作品の音楽をフルオーケストラが生演奏する音楽とアニメーションの祭典。世界各都市で開催される人気コンテンツで日本では2014年、16年に開催。今秋、東京・大阪・名古屋で再び開催される。今回は世界初となるライブ・ドローイングも披露。

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